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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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こんなこともあろうかと

「雪男、お前ってファーストキスいつした?」
「いきなり何」
寮の部屋で、ベットに寝転がったまま質問した。
雪男は椅子に座って薬学の本を読んでいたのだが、唐突な質問に眉を顰める。
「いや、お前したことあるのかと思って」
「したことあるよ」
「え、まじで」
「うん」
これは予想外だった。弟よりは早かったと思ってたのに。
雪男はまた視線を本に戻した。兄弟でする会話としては恥ずかしいが、これははっきりさせておきたい。
「相手だれ?」
「僕のことばっかりじゃないか、兄さんはどうなの」
「俺もしたことあるぞ」
いうと、雪男の持っていた本がどさりと床に落ちた。
手でも滑ったのだろうか。燐の方からでは雪男の背中しか見えないからよくはわからなかったが。
なんだか変なオーラが出てる。焦っているという雰囲気だ。

「・・・起きてたの?」

雪男の質問の意図がわからなかった。
「起きてたってなにが」
応えると、あからさまにほっとした息を吐いている。最近弟のことがよくわからない。
そして、なにかに気づいたのか雪男が唐突に後ろを振り返る。目がばっちり合った。
「兄さん」
「なに」

「じゃあ
 兄さん
 誰と
 キス、したの?」

細切れに言うのがなんだか怖い。
でも、嘘をついたらもっと怖そうだ。

「し、志摩と」

部屋の温度が凍りついた。雪男の顔が真っ黒だ。
いや、実際に黒くなったわけではないのだが、目も顔も笑っていない。
氷の微笑だ。
「どこで」
雪男が椅子から立ち上がった。
思わず壁の方に逃げてしまう。布団の上なので逃げ場がないが、少しでもましなほうへ逃れたかった。
「教室、でしました」
「へぇ、兄さんから迫ったの?」
雪男がベットの前にいる。床にヤンキー座りしてる姿なんてはじめて見た。
丁度真ん中にいるもんだから右にも左にも逃げれない。
でも、志摩からしてきたなんて言ったら志摩の身が危うい気がする。それはなんとしても避けたかった。
「志摩君のこと庇ってるの?」
「いや、そうじゃないけど」
近くにあった枕をとって雪男の視線を遮った。
またため息が聞こえたので、枕の影から目だけ出してみる。

「まぁ、こういうことになるかなー、とは思ってたけどね」
「なんだよ、人を尻軽みたいに言いやがって」
「警戒するって神経がないのは今にはじまったことじゃないしね」
「諦めた言い方すんな」

「まあ、こんなこともあろうかとファーストキスは僕が奪っといたから」

きらりと光る眼鏡。
燐は雪男に返す言葉を一瞬考えた。
先ほどの雪男の言葉が頭をよぎる。

起きてたの

つまり寝ているうちにかっさらったのか俺のファーストキス。
人の知らないうちに。マナー違反だ、いや、こいつに贈る言葉は
マナー違反なんて言葉じゃ物足りない。
うん、これしかない。

「この盗人眼鏡!」
「盗人エロ魔人よりいいでしょ」

クラスメイトの顔が浮かんだ。目の前の顔と見比べてみる。
どっちもどっちだ。
 

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安寧と膠着は第三者の手で動き出す

志摩さんと燐のキス有り。
苦手な方注意!!
関係的に雪男→燐←志摩





「なぁ奥村君ファーストキスっていつしたん?」
燐は勢いよく椅子から転げ落ちた。
教室に他のクラスメイトの姿はない。
勝呂と子猫丸はジュースを買いに購買に行っているらしく、京都組がトリオでいない状況はなんだか珍しかった。
こけた燐は近づいてきた志摩に手を取って起こしてもらった。

「いきなりなんだよ」

何の脈絡もない質問だ。前後の会話は「今日ひとりなのか?」「そうやでー二人は購買いっとるんよ」だけだ。
何故自分の経験話に繋がるのか。
燐はいつもはしえみの座っている席に座った。
空いたスペースに「おおきに」と志摩が座る。
いつもは勝呂や子猫丸がいるので、志摩と二人でこういうふうに隣り合って座るのは初めてかもしれない。

「前から気になっとってなあ。奥村君顔いいんやし、優しいからモテたんやないん?」
「俺はモテたことなんかないぞ」

昔はいつも一人だったから。学校だってサボってばっかりだったし、クラスメイトとの会話も
した記憶がない。いつも周囲と距離を置いていた。
当然、女の子とそんなことになったこともない。ヘタしたら会話もあんまりしたことない。
思い返せば随分と寂しい中学時代を過ごしたものだ。
「えーそうなん?勿体無い」
「俺はこれから!これからなんだよ」
そういっておかないとプライドが持たない。
悪魔として覚醒してしまったので、今後そういう展開になっても関係を躊躇するかもしれないけど。
悪魔にだって恋する権利くらある、はず。
「じゃ、ホンマにしたことないん?」
「え」
「いや、そっちの意味じゃなく、キスの方」
「ねぇよ!」
「そんなムキにならんでもええやん奥村君」
ニヤニヤしながら聞いてくる志摩にむかついた。
子猫丸に聞いたが、志摩は女の子好きを隠さず、エロ魔人とまで呼ばれていたらしい。
さぞかし中学時代は薔薇色だっただろう。うらやましい。
でも、自分はファーストキスは誰とすることになるだろうか。
できれば好きな女の子と夜景の見える綺麗な丘の上でしたいな。
奥村燐は悪魔だが、中身にはとても純粋な夢が詰まっていた。
妄想して、ふと気づく。
その時ちゃんとできるだろうかという不安。経験がないということはつまり失敗もあるわけだ。

「奥村君、考えすぎやな。キスなんか簡単やでー」
思考を呼んだのか。志摩は手をひらひらと振って笑いながら言う。
「は?」
志摩のほうを向いた。顔を手で覆わて、志摩の顔が思いっきり近くにきて。

唇が塞がった。

志摩の目は閉じていたが、燐は完全に硬直していたので目の前にある志摩の顔をまじまじと見てしまった。
気づかなかったけど、髪の色変わってるなとか。おでこの方に傷あったのか、とか。
唇が塞がれていたので若干息苦しくなった。息を吸おうと反応して唇が薄く開く。
志摩はそれを狙っていたようで、舌が入ってきた。
これには燐も驚いた。予想外だ。

「ん、むー!!」

舌を噛もうと思ったけど、「でもやっていいのか?」という変な遠慮が出てなかなか踏み切れない。
せめて口を閉じようとしたけれど、顔に添えた手で顎を固定されているのでそれもできない。
(AVとかでキスするとき顔に手を添える理由がわかった気がする・・・)
志摩の手練手管に感心する極めて冷静な思いと、混乱しすぎてどうしたらいいかわからない心。
身体なんてガッチガチに緊張している。
燐の動揺がわかったのか、志摩は薄く目を開けて燐のことを見ると、今までの攻めが嘘のように引いていった。
お互いの唇が離れる。ようやく吸えた空気がうまかった。
「こんなもんやなー」
「お前手馴れんなぁ」
唇を袖で拭った。
「まだまだやでー」
普通に会話できたのが信じれなかったが、たぶん、男でクラスメイトにファーストキスを奪われたのだという事実を
この時理解できてなかったのだと思う。

「でも、ファーストキスやったって意外やったわ。てっきり先生ともうそういうことしてるかと思っとったけど」

先生って誰?と質問する前に子猫丸達が教室に入ってきた。
「おかえりなさい二人とも。いいのありました?」
「おう、探してた牛乳あったわ」
「坊それ好きですもんね」
いつものように三人でたむろする姿を見て、やっと気づいた。
そういえば、さっきのっておかしくないか。
でも、戻ってきた普通にさっきまでの非日常の質問を出すのも憚られた。
結局、そのまま何事もなかったように休み時間が終わり、塾の授業が始まった。

燐はふと唇に指を這わせてみた。
感触は覚えてるけど、なんだかあんまり現実感はない。でも、これだけはわかった。


(ファーストキスって別になんも味なかったな)

 

好意は悪意とリンクする

若干グロテスク表現アリ。
苦手な方は注意。

 



「にいさ、ん…?」
雪男は、血の海に沈む兄の姿を呆然と見ていた。
ここは自分達の部屋だ。
今日は任務でちょっと遅くなったけど、帰ったら晩御飯を一緒に食べる約束だった。
兄さんの大好きなすき焼きでも食べる、つもりで。
雪男は部屋に広がる死臭に吐きそうになる、兄が死臭の中倒れている。
回りには、今しがた取り出された生々しい内臓が湯気を立てて散らばっている。
肝臓、腎臓、小腸、大腸、それに、心臓。
木の床に染み込む血の色。血に染まった兄の服、身体。
「そんな…」
雪男はその場に膝を着いた。
床の血だまりがべしゃりと散っていく。
割れた窓ガラスから冷たい風が入ってきた。
この頬をなぞる冷たい風だけが現実だと感じた。


「あにうえ」
「なんだ」
「奥村燐の好物は肉だそうです」
「だから何だ」
「だから部屋に生肉を置いておきました」
「…スーパーで買った肉か」
「そこらへんに落ちてた肉です」
メフィストは『局地的肉牛失踪事件被害報告書』を閉じて、頭をかかえた。
アマイモンの興味が奥村燐に向かうよう仕向けたのはメフィストだ。
しかし、ここまで偏った興味を寄せるとは思わなかったのだ。
「お前、奥村燐のことが好きなのか」
「好き、というより」
アマイモンは頭のとんがりを動かして悩んだ。
奥村燐のことが好き?好き、というより。
「育成してる気分です。今のままじゃ手が出せないので、美味しく育った所を頂きたいのです。
そういう純粋な思いをこめて肉を置きました」

思いが重い。

好きならなにしてもいいと本気で思っている。
なんだかロリコンの理屈みたいな言い方で誤解を招きそうだ。

「まあ、わからんでもないが」
メフィストも奥村燐を育てている一人だ。自分の目的の為に。それに、奥村燐は面白い。
あんな無鉄砲な兄弟は初めてだからだ。悪魔には生まれた時から階級があるため、
上に逆らうことがイコール死に繋がる。それを本能で理解しているため、
勝算がなければ行動を起こさない。
人間とのハーフだからだろうか。勝ち目のない戦いに挑む時のあの挑戦的な瞳は…
「おいアマイモン」
「なんですかあにうえ」
「お前のせいだぞ」
いや、自分はそんな目で見ていないはず。なんだかアマイモンに洗脳された気分だった。
「大丈夫です。拾った肉は部位ごとにバラして部屋に置いておきました。食べやすいはずです」

会話がかみ合っていないが、突っ込まない。アマイモンに常識はないのだ。
メフィストはアマイモンが作ったその光景を想像してみた。
ちぎれた牛の頭がベットの枕に寝そべっていて、床に綺麗にハツ、モツ、ホルモン、レバー、
カルビにタンが整然と並んでいて、部屋一面に広がる血の海と死臭。

うん、大丈夫だ。自分はこれより狂っていない。

「アマイモン、今すぐ片してこい」
「えー」
「騒ぎになるだろう!」
「わかりました」
アマイモンは渋々、部屋を出ていった。無限の鍵を使ったのですぐ済むだろう。
携帯の着信があった。
「おい、どうした」
「あにうえ、奥村燐と鉢合わせたので腹を殴って気絶させておきました。いいですよ…」
ね、という前に扉が開く音とガラスが割れる音がした。
「なんの音だ」
「奥村燐の弟が入ってきたので窓を割って逃げた音です」
「奥村雪男に見られたのか」
「いえ、それは大丈夫だと思いますが…」
「が?」

「奥村雪男が部屋を見て呆然とした挙げ句に膝を着いて
なにかに打ちひしがれているようです。なにかあったんですかね?」

メフィストは考えた。
床には片付けられなかったハツ、モツ、ホルモン、レバー、カルビにタンが整然と並んでいて
その血の海にアマイモンに気絶させられて倒れる奥村燐の姿。
無残な殺害現場の出来上がりだ。
「アマイモン」
「なんでしょう、あにうえ?」

「お前のせいだ」

メフィストはまだ使いどころのある雪男をここで壊すつもりはない。
フォローが大変だ。電話を切って、席を立った。
勿論、ポケットにカメラを入れていくのは忘れない。
フォローはするが、面白いことは見逃さない。
これがメフィスト=フェレスのやり方である。

 

「イテテ、雪男どうした蹲って。腹でも痛いのか?」
「兄さん生きてたの!?」


そんな悪魔兄弟に振り回される二人だった。
 

クロとハネムーン症候群

(りん、さむい)
クロが燐の顔をつついて訴えてきた。
日中は暖かくても、夜ともなればやはり肌寒い。
寝ぼけてかすれる目を開けて、ん、と腕を上げてスペースを作ってやった。
すかさずクロが潜り込んでくる。
眠気で力尽きた燐の腕がぱたりと布団の上に落ちた。
(いいまくら)
燐の腕に顎を乗せて、クロもまた眠りの中に落ちていった。

「腕がいてぇ」
朝起きた燐はまだ布団で丸くなるクロを恨めしそうな顔で見つめた。
クロが体重をかけてくるので腕は痺れるし、寝返りもうてない。
おかげで雪男が起きる時間、つまり燐にとってすごく朝早くに起きてしまった。
「クロのおかげで自主的に起きてくれる様になって、僕としては大助かりだ」
「なんだよ」
「兄さんが寝汚すぎるのが悪いんだろ」
ネイガウスに襲われそうな所を助けた時も、部屋から運び出したのに一向に目を覚まさなかった。
そこを突かれたら燐としても立つ瀬がない。
痺れる腕をマッサージしながら、寝ているクロをそっと撫でた。
柔らかい身体とふかふかの毛並み、ちょっとお腹をくすぐれば「きゅう」と寝息が聞こえる。
憎めない奴だ。
「そういえば兄さん知ってる?」
「なにを?」
「その痺れってハネムーン症候群っていうんだよ」
「は?」
ハネムーン症候群。
ある意味若気の至りともいえる腕枕があるが、ハネムーンに行った新婚夫婦に多い症状のためこの名前が付けられた。
新婦の頭の重みで新郎の腕の神経が圧迫されて腕が痺れてしまうという現象のことである。
「仲がいい証拠だよ。
ちなみに慢性的になると腕が痺れてあがらなくなるといった意外と厄介な症状になるから注意が必要だけど」
「お前絶対おもしろがってるだろ!」
今夜は雪男のベットに行くように言ってやろうと、燐は心に決めた。

連れてなんかいかせない

小さな頃から人には見えないものが見えた。
それは、人に危害を加えるものから、そうでないものまで様々だ。
それらの正体が悪魔だと言うことを教えてくれたのは父だった。
父は言った。兄は10年後恐ろしいものを見ると。
自分が見ているもの以上に恐ろしい目にあう。
それを止めたくて、僕は祓魔師という道を選んだ。

(またいる…)

それがいると気づいたのは3日前だ。深夜にトイレに起きると、窓の外に気配を感じた。
それは修道院の中には入って来れない。ただ、窓の外からじっとこちらを見て、朝になると消えている。

(これの祓い方、まだ習ってないんだよね)

雪男は訓練を始めて間もないため、実践練習はまだ先だ。
父に相談すればどうにかなるかもしれないが、あいにく任務で留守にしている。
だから、こういう状態になるとじっと耐えるしかない。
悪魔は見えない相手に干渉しない奴もいる。こいつも、見えないフリをしていれば
きっといつかいなくなってくれる。それを3日前から期待していたのだが、相手もなかなかそこは譲らない。
修道院は、神の加護を受けているため、大抵の悪魔は侵入できないはずだ。
それを知ってはいるが、もしかしたらという不安は消えない。
悪魔からの視線を受けて寝れるほど、雪男の神経は図太くなかった。

「でも、いい加減寝たいなぁ…」

布団の中から窓を見ると、今日も変わらずそこにいた。
黒いもやだ。目や鼻といったものはないので、コールタールの集合体なのかもしれない。
窓と反対方向に目をやれば、そこには寝こける兄の姿があった。

10年後、兄さんは恐ろしいものを見る

雪男が眠れない理由はそこにあった。父が任務でいない今、同室である自分が守らなければいけない。
自分ひとりが危害を加えられるならまだしも、兄が怪我するのは耐えられなかった。
(早く神父さん帰ってこないかな)
雪男はまたひとつ寝返りをうった。この悪魔のせいでとんだ寝不足だ。
すると、静かな寝室に足音が聞こえた。

(まさか、あいつが入ってきたのか?)

ぞくっとした悪寒が背筋を走る。もうしそうなったら、兄だけは守らなければ。
雪男は背後を振り返った。
「ゆきお」
「にいさん」
兄がいた。向かいのベットからこちらまで来たらしい。
トイレにでも起きたのだろうか。
「お前、またねれてないんだろ?」
「…うん」
「怖いものでもみたのか?」
そこに、窓の外にいるよ。とはいえなかった。
兄は気遣ってくれたらしい。それが嬉しかった。
「俺がいっしょにねてやるよ」
「ちょ、にいさん!」
窓側の方に兄が入ってきた。あいつがみている。
なにかあったらどうしよう。
兄が、窓を見る。

「失せろ」

そいつは今までの3日間が嘘のように消えていった。
「な、な…何かしたの?にいさん」
「いや、なんかいたのか?」
兄は悪魔に気づいていなかった。

「お前が窓のほうみてたから、怖いもんがいるんなら追っ払ってやろうとおもったんだよ」

兄は優しい。でも、僕は不安が消えなかった。
兄の力は年々強くなると父は言っていた。
その力で追い払ったのか。
それとも、兄のことがバレたのか。
鼓動が不安で早くなる。
あいつが、消える瞬間に笑ったような気がしたからだ。
兄を連れて行くつもりだったのか?
わからない。だが。
雪男は、燐の身体にぎゅうっと抱きついた。

「どうした?」
「こわいんだ、このままでいて、にいさん」
「おう、わかった」

連れて行かせるもんか。

雪男は早く、祓魔師に成りたかった。
こうしていないと、捕まえていないと、兄がどこかへ行ってしまいそうな気がして。

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