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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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亡国のプリズム3


燐その力を使ったりしないで。
その力は悪いものを呼び寄せるの。
絶対に、何があっても使ってはだめよ。

母は、燐の手を握って繰り返しそうつぶやいた。
あの夜を境に燐は一度も炎を使っていない。
母は、この力をよくないものだと思っているらしい。
燐は二人の役に立てるのではないかと思っていたのに。

どうして、そんなことを言うんだよ。
この炎があれば夜の寒さに肩をふるわせることもないじゃないか。

燐は体が丈夫だが、母や雪男は体が弱い。
二人が寒さに怯えずに過ごせるのなら俺はこの力を使いたい。
なんで使っちゃだめなんだよ。
燐は母にそう訴えた。
ユリはそっと燐の頭を撫でる。

「燐はとっても優しいのね。
ありがとう、でも燐の力を使おうと悪い人たちが寄ってくるかもしれないの。
母さんはそれが心配なのよ」
「平気だよ、俺力強いから追い返してやる」

燐はベッドに横たわる母にそう語った。
ユリはもう起きあがることもできなかった。

あれからすぐに村に疫病が流行り、体の弱いものは次々に倒れていった。
ユリもその疫病と見られる症状が出ており、家には人が寄りつかなくなった。

それに森で狩りをする幼い燐の姿を、よく思わないものがいるのも事実だ。
子供の姿をしているのに、大人顔負けの力を使いこなし獣を殺す。
すべては家族を生かすためにやていることだけれど、他者にとっては恐怖しか与えなかった。
血塗れの獣を平然と抱える姿から、燐を悪魔だと噂するものも少なくはない。
疫病患者に、悪魔のようなこどもがいる家に、情けをかけるものはいなかった。
治療できるような医者もいない地方では、病気にかかったものはただ死を待つしかない状態だ。

「母さん、森で鳥を捕ってきたんだ。食べよう」

燐はユリにスープにしたんだよ、と話しかけた。
森に入ってはいけないと言われていたが、食べて行くには獣を捕らなければいけない。
まだ働けない兄弟にはそれしかできなかった。
母を生かさなければならない。

燐は必死だった。同じく、雪男も必死だった。
雪男は頭が良かったので医術にまつわる本を読んで、薬草を採ってきては母に飲ませていた。
けれどそれは根本的な治療にはなっていない。
せいぜい、滋養をつけさせる程度の効果しか見込めなかった。

薬を持ってきた雪男も、燐の隣に座る。
雪男は薬を、燐はスープを母に差し出した。
ユリはそれを黙って受け取った。
薬を口に含み、スープを飲み込む。

「おいしいわ、薬も効いてきたみたい。ありがとう二人とも」
「ねぇお母さん、今日一緒に寝てもいい?」

雪男がそう言うとユリは病気がうつってしまうからだめよ、と言う。
子供に自分の病気をうつしたくないという気持ちと、
母親として一緒に添い寝もできないのかという思いでユリは辛そうに微笑んだ。
雪男も母の心配は痛いほどわかった。

もう時間がないことはこの場にいるだれもがよくわかっている。

雪男の背中を押すように燐が俺も一緒に寝たいと言い出した。
二人は止める母の言葉を聞かず、布団の中に潜り込んだ。
あたたかい体温に囲まれて、ユリは微笑んだ。

自分の手がもう折れそうなほどに細くなってしまったことをユリは知っている。
その手で二人の頭を撫でた。
彼らの大きくなった姿が見られないことをとても残念に思う。

「苦労をかけて、ごめんなさい」
「苦労なんかしてない」
「そうだよ」

兄弟は母の言葉を否定した。ユリは両脇に兄弟を抱えて、幸せそうに微笑んだ。
どうか幸せに。それだけを心の底から願う。

ありがとう大好きよ。

ユリはそう言い残して、そっと目を閉じた。

その夜、兄弟は眠ることはできなかった。
母の体温がどんどんなくなっていくのを、必死で暖めようとしたけれど無意味だった。
翌朝泣きはらした目で兄弟は母の名前を呼んだ。
けれどユリが、目覚めることは二度となかった。


疫病で亡くなったものは、速やかに火葬しなければならない。
そういう取り決めになっている。土葬すれば、そこからまた病原菌が沸くこともある。
けれど、村での死者は増え続け火葬する時も何体もの遺体をまとめて焼くようになってしまっている。
燐も雪男もそれがイヤだった。
母が、誰かも知らない村人とともに焼かれることがイヤだった。

自分達の母は自分達の手で送り出してやりたい。

けれど、遺体を焼くほどの火力となるとかなりのものになる。
薪もいるし火の周りが早いようにある程度の火種も入れなければならない。
自分達だけでやるには難しいだろう。
母の横たわるベッドを見て、雪男は燐にお願いをした。

「兄さん、母さんを兄さんの炎で送るのは。だめかな」
「雪男・・・」

燐は隣にいる雪男を見た。顔は涙で濡れている。
母には決して使うなと言われた力だ。燐は一瞬躊躇した。
大切な母親を送り出すために、この力を使っていいのだろうか。
悩む燐に雪男が話しかける。

「兄さんの炎ってきれいだから、それでおくってもらえたらいいかなって思ったんだ」

アクセサリーも何もない、胸に兄弟が摘んできた花だけを置いた母へのせめてもの手向けに。

燐は雪男の言葉にうなずいて、そっと手を母の前に差し出した。
もう片方の手は、雪男が握る。

「さようなら母さん」

二人で泣きながら、母親にお別れを告げた。
優しい青い炎に包まれた母の最期は、とてもとても美しいものだった。

炎が収まると、ベッドの上には何も残ってはいなかった。

「兄さん、ずっと一緒にいてね」

雪男は泣きながら燐の手を握った。
この家にはもう兄弟しかいない、頼れるものはいなくなってしまった。

「約束するよ」

二人は離れないようにただ手を握っていた。


***


「悪魔の血を引くこどもなど汚らわしい!」

消えたユリの遺体についていつまでも秘密を抱えておくことは狭い村社会の中では無理な話だった。
雪男と燐は石を投げられ、村人に糾弾されていた。
ユリが死に、その遺体が消えた。
疫病患者の遺体は火葬しなければならない。それは村の掟であり、また国の命令だ。
当初は遺体を森に隠しているのだろうと疑われた。
二人は必死に村人に抵抗したが、雪男に向けて暴力が振るわれそうになったとき。
燐は、使ってはならないと言われた力を使ってしまう。

「雪男に手出すんじゃねぇ!」

青い炎で、村人の手を焼いてしまう。
村人は痛みで転げ回り、周囲で見ていた者は化け物を見るかのような目で燐を見つめた。

悪魔だ、この村に悪魔がいる。
汚らわしい。この疫病も、この悪魔のせいなんだ。

逃げていく村人。村の有力者は、騎士団の方を招くと言い残し、去っていった。
あとには、ぼろぼろになった家と、雪男。血を流す燐が残された。

雪男は燐にすがりついて、ごめんなさいと涙を流した。
あのとき、僕が母さんを燃やそうと言わなければこんなことには。
燐は雪男を抱きしめて、そんなことはないと言って慰めた。
悪魔だと言われて、燐は自分が人間ではなかったことにショックではあったが反面妙に納得していた。
母は力を使ってはいけないと言っていたし、やはり自分の持つ力は他とは違うものだったのだと気づいた。

一番近くにいる雪男とも違う。
人間の中に混じった異端の悪魔。

弟である雪男は間違いなく人間だ。
せめて雪男だけでも人の中で暮らしていけるようにしてやりたい。
俺はここにいては、雪男の邪魔になってしまうかもしれない。
村人の暴力は人である雪男にまで向いてしまった。
俺のせいた。だから雪男、お前が謝ることじゃないんだよ。

「雪男、ごめんな」
「どうして兄さんが謝るの。兄さんは何も悪いことしてないよ」

母を亡くしてすぐに人から悪意ある目で見られることは、
どれほど幼い心に負担になっただろうか。
雪男は燐にしがみついて離れようとしなかった。
燐はそこで雪男の変化に気づく。体が熱い。

まさか。

燐は手の平を雪男の額に乗せた。
額はかなりの熱さになっている。高熱だ。体にも力が入っていない。
雪男、燐は震える声で雪男に問いかけたが雪男が答えることはなかった。

「雪男!いやだ、うそだろ!!」

この症状は、母さんの時と同じだ。
燐は急いでぼろぼろになった家の中に入り、ベッドの上に雪男を横たわらせた。
雪男まで病気になってしまうなんて。
母さんの病気が移ってしまったのだろうか。

ならなぜ自分だけ無事なんだ。もしかして俺が悪魔だから無事なんだろうか。
雪男は人間だから、病気になったのか。

燐には雪男のように薬草に関する知識はない。
燐は熱でうなされる雪男の額に水で冷やしたぼろぼろのタオルを何度も乗せた。
けれどそれで熱が下がることはない。
ここには解熱剤もなければ、疫病に効く薬もありはしない。
燐にできることはせいぜい、森で捕ってきた獣を与えることしかできない。
燐は恐怖を感じた。母も亡くし、弟も奪われるのではないかという心の底からの恐怖。
俺が二人の代わりになれればよかったのに。
そんなことを思ってしまうくらい、燐の心は絶望に満ちていた。

「誰か・・・ッ」

助けてくれ。雪男を助けてくれるなら、俺なんでもするよ。
燐は一晩中願った。雪男の体温はどんどん暑くなり、もはや一刻の猶予も許されない状態だ。
雪男はこどもなので、病気の進行も早いのだろう。

誰か、助けて。雪男を助けて。


「その願い、叶えてやろうか」


燐が振り返ると、そこには見知らぬ男達が立っていた。
胸元に光るマークは、この国の直轄機関正十字騎士団であることを示している。

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亡国のプリズム2


悪魔の血を引く子供など汚らわしい。

それが、母が死んでから人から最初にかけられた言葉だった。


正十字国のはずれには小さな町があった。
町と言うよりも、村に近い小規模な集落だ。
ただ、国境からは遙かに遠く内陸に位置していたため村は貧乏な暮らしの者は多いけれど平和に暮らしていた。
町の片隅には少し変わったある親子が暮らしている。
母の名はユリ。子供は兄を燐、弟を雪男といった。
兄弟は二卵性の双子で、弟の雪男は未熟児で体が弱くよく倒れては
母や兄に心配をかけるような子供だった。

双子の母親ユリは美しい女性であった。
町の者は皆、行き倒れるようにしてこの町にやってきた母の姿を覚えていた。
身重の体でも、粗末な食べ物を前にしても人に感謝を忘れない。
まるでどこかの貴族の女性のような振る舞いがユリからは感じられた。
どんな時でも、美しく気高さを忘れないような女性であったと。

ただし、料理が苦手だったことは兄弟の中でも特に印象に残っている。
目の前の皿には、紫色の液体が浮かんでおり、
兄弟はお互いに顔を見合わせて母親に声をかける。

「母さん、これなに?」
「何ってスープよ」
「何の?」
「さぁ・・・なにかしら」

母はおっとりと笑うだけだった。
なにかしらって作ったのにわからないの。材料を聞きたいけれど聞けなかった。
この家が貧乏なことはよくわかっている。
救いとして口に入れて倒れるようなものではないが、
進んで食べたいものでもないのが問題だ。

燐はちらりと隣にいる弟の雪男の様子を確かめた。
雪男も我慢をして食べているのが目に見えてわかる。
雪男はついこの間も風邪で寝込んだばかりだなので、ご飯を食べて栄養をつけなければならない。
母は子供のためを想って行動しているのだが、苦手なことばかりはどうしようもない。
なんでも料理をあまりしたことがないらしいので勝手がわからないそうだ。

母も子供に食べ物を与えることをなにより優先しているので、
体の線も日に日に細くなっていく。このままではいけない。

燐は家族のために立ち上がることを決意する。



ある日、燐は家から持ち出した果物ナイフを持って森に来ていた。
森の中には木イチゴやブルーベリーがなっているので村の者たちもよく立ち入ることがあった。
けれど、それはあくまで森のごく浅い部分での話だ。
森の奥には獣が多く潜んでおり、仕留めれば肉には困らない。
けれど、それも仕留められればの話。
野ウサギや鳥がいるということはそれを狙う狼も潜んでいる。
特に、子供だけで森に入ることは村でも禁止されていた。

燐は木イチゴを摘んで腰に下げた袋に集める。
母や雪男へのお土産だけど、お腹が空いたらつまむのもありだろう。
燐の目的は、この森の奥だ。燐は辺りの様子を伺いながら藪の中を進んでいった。
時折立ち止まっては身を潜めるのは、獣の気配を察知しているからだ。

普通の人間では気づかないような足音や、葉のこすれる音。

燐の五感は研ぎすまされていた。燐の瞳は青く光り、暗闇に潜むものを見つける。
燐は穴から飛び出したものに向かって潜ませていたナイフを投げる。
子供の力とは思えない勢いで飛んでいった刃は、獲物を一撃で絶命させた。
草むらに血を流して倒れ込んだものを、燐は毛皮を掴んで持ち上げる。
野ウサギだ。それも大きい。
これならおいしいし栄養になるだろう。
濁っていくウサギの瞳に向けて、一言ごめんな、と呟いた。
食べていくためとはいえ、燐は初めて生き物を殺した。
その事実に、恐怖がないといえば嘘になる。
けれどもそれ以上に胸が躍っていた。

「母さんたち、よろこんでくれるかな」

燐の手はウサギの流した血で真っ赤だった。
その血に向かって陰から何か虫のようなものが近寄ってくる。
魍魎だった。死と血のにおいに引き寄せられたのだろう。
燐は魍魎の正体はわからないが、イヤなものであることは察知したらしい。
魍魎に向かって、にらみをきかせた。

「寄るな」

途端に、魍魎はぼうっと青い炎に包まれて消えていった。
燐は驚いた。
魍魎が消えたことはもちろんだが、自分の体から一瞬だけ同じ炎が出たのが見えたからだ。
燐は近くにあった葉に向けて同じようなことをしてみた。
するとどうだろう、青い炎が葉を跡形もなく消していった。
次に燐は手のひらに炎を宿すイメージを持ってみる。
そうするとほんのりと暖かい炎が、自分の手のひらに宿った。
なぜ自分がこんな力を持っているのかはよくわからなかったが、
子供心から単純に便利だと思った。
この炎があれば、寒い夜には暖まることができるし、
料理に使う薪だってあまり使わずに済むかもしれない。
俺は、家族の役に立つことができるかもしれない。
燐は獲物を持って、駆けていった。
早く、早く。
二人の元に戻って見せてあげよう。
きっと喜ぶだろう。

「でも他の人も、できたりすんのかな」

もしかしたら雪男ならできるかもしれない。
自分たちは双子だから、自分だけができるなんてことはないだろう。
燐はそう思っていた。
死んだウサギは自身の体重を自分で支えなくなるのでどんどん重くなっていく、
普通の子供なら持って走ることが難しいことを燐は知らない。
そして、獲物を横取りする存在がいることも。

燐の持つ獲物の血の臭いに惹かれて、狼が目の前に飛び出して来た。


***


「兄さんどこに行っちゃったんだろう」

雪男は兄の姿が見えないことを心配して、家の周囲を散策していた。
母も今朝から姿を見ていないらしい。
この村は平和だけれど、人さらいだってこのご時世珍しい話ではないのだ。

兄は元気が良すぎてすぐに雪男の足では届かない遠くへ行ってしまう。

雪男はそれが歯がゆかった。
この前も森に入ってせめて薪くらいは取ってこようと思ったのに
母に見つかって止められてしまった。
二人には心配をかけてばかりだ。
どうして自分と兄はこんなにも違うのだろう。
もっと僕が体が強かったらこんなに心配をかけることもないし、
役に立つことだってできるのに。

雪男が兄さんと再度呼ぶと、遠くの方から声が聞こえてきた。
森の方からだった。よかった、日が暮れる前に戻ってこれたのだ。
雪男は手をふって、燐に呼びかける。

「兄さん、母さんが心配して―――」

言おうとした言葉は途中で途切れてしまった。
燐は、体中血にまみれていた。手にはウサギを、背中には狼を担いでいる。
毛皮は血で染まっており、そのどちらも事切れていた。
燐は平然とした顔をしている。
兄さんが、殺したの。
雪男は恐怖にかられながらも、燐に駆け寄って声をかける。

「いったい何があったのッ!?」
「こいつが襲ってきたから、倒した。毛皮って売れるのかな」
「そんなことより怪我してない?みせて!」

燐の腕をみれば、布が巻いた跡があった。
その布をどけて確認をするけれど、怪我は大したことはなさそうだった。
聞けば、狼に噛まれたらしい。
それでも燐は笑っている。

「痛くないから大丈夫だって」
「でも・・・」

こんなにすぐ怪我が治るなんて。
兄さんは僕とは違って元気だからそうなのかな。
雪男の疑問は浮かんでは消えていく。
燐が獲物を捕ってきたことは家計を助けるけれども、
燐が危険な目に遭うことは容認できない。
こんなに心配かけさせておいて、大丈夫ってなんだよ。
雪男が燐に向かって怒る前に、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。

「燐!!!森の中でいったいなにやってたの!!!」

振り返れば、ユリがものすごい勢いで怒っている姿が見えた。
燐は思わず背負っていた狼をぼとりと落とした。
足が震えている。襲ってくる狼は怖くないけれど、母の怒りは死ぬほど怖い。
結局燐は、獲物を捕って帰ってきたことは二人に大変ほめられたが、その倍以上こっぴどく叱られた。

「だって、母さんたちよろこぶと思ったんだもん」
「食べ物を取ってきてくれたことはとってもうれしいわよ、
でもね燐がその為に怪我したら悲しいわ。
私たちのために自分を傷つけたりしないで。それをわかって燐」
「そうだよ兄さん」
「・・・うん」
「これからはせめて、森に入るときは私に言わなきゃだめよ。
それも、奥まではいかないこと。戻ってこられなくなったらどうするの」
「俺、道くらいわかるもん」

燐の五感がどれだけ優れているかは、普通の人間である母や弟には理解できないだろう。
燐が当然だと思ってやっていることは人にとってはとても難しいことなのだ。
ユリは燐の頬をつねって引っ張りあげた。おお伸びる伸びる。
餅のように伸びる兄の頬に、雪男は感心した。
ユリは聞き分けのない息子に屁理屈を言わない、とびしりと言い放つ。

雪男はその様子を苦笑しながら見守っていた。
この家には、あたたかい家族があった。
貧乏かもしれないけれど幸せの形が確かにできている。

取ってきたウサギは、新鮮なこともありそのまま焼いて食べることにした。
ユリが薪の準備をしようとしたところで、燐が暖炉に向かって手をかざした。

「そうだ!こうすれば簡単だよ、母さん」

暖炉に残っていたわずかな薪を頼りに、青い炎が灯る。
雪男はその光景を、とてもきれいだと思った。
兄は本に出てくる魔法使いみたいだとも思った。
けれど、母は違ったらしい。

「嘘でしょう・・・」

集めていた薪を床に落とす音が、家の中に響いた。
青い炎に照らされた母の顔は真っ青だったことをよく覚えている。

母さんが亡くなったのは、それからすぐのことだった。

拍手ありがとうございます


ぱちぱちだけの方もありがとうございます!

2014/01/14
コピー本って通販しないのでしょうか~の方。

拍手ありがとうございます!申し訳ありません、コピーだと書店通販に向かないので、
今回は見送りたいと思います・・・お問い合わせありがとうございました。
代わりに別の王宮パロ話を作ってみましたのでよろしければ・・・
逆様鏡の感想も頂きありがとうございました!いつ頼んだ~の言葉は書き始めから使いたいと
思ってたので書いた本人もすっきりしてます笑
完結までお時間をいただいた長編でしたが、気に入っていただけたならとても嬉しいです。



反応を頂けるって嬉しいですね。
ありがとうございます。糧になります!

亡国のプリズム



その騎士の姿を見たのは、任命の儀のただ一度きりだった。
雪男は王として王座に座り、騎士団長に任命される騎士は顔を伏せて膝を立て、
王座の前に坐している。
右手を立てた膝の上に置き、武器を持っていないことと
利き腕を差し出すことで王に忠誠を誓う仕草となっている。
雪男は側近が持ってきた剣を手に取ると
騎士の前に差し出し、言葉を放つ。

「これより彼の者を正十字騎士団長に命じる。我が剣となり、祖国の為に戦うと誓うか」

セオリー通りの言葉だな、と雪男は思った。
この後、目の前に坐している彼が放つ言葉も決まっている。
この国は建国から戦争ばかりだ。
新たな騎士団長を任命するのだって、前任者が先の戦争で亡くなったからである。
雪男は王として、国を守り民を守るために騎士となった国民に死ねと言わなければならない。

この騎士団長はいつまで生きているのだろうか。

団長に上り詰めるのだから剣技の腕は確かだろう。
しかし風貌からして雪男と同じか、年下のようにしか思えない。

子供の力に頼らなければ成り立たない国に、未来はあるのだろうか。

自分がしていることが全て正しいとは思えない。
雪男はまだ十五歳の年若い王であった。
王の血を引く兄弟の中で一番下位に当たる自分が王になるなんて、夢にも思ったことはなかった。
他の兄弟たちの間で殺し合いが多発し、最後に残ったのが雪男しかいなかったのだ。
消去法で王に選ばれ、国を動かし、王としての役割を果たす自分は、
この国の歯車の一部でしかない。目の前の彼もそうだろう。
国という大きな共同体にならなければ、人は迫りくる悪魔に対抗できなかった。
人が集まれば、それを統治するシステムがなければならない。

雪男はいわば、そのシステムを動かすための代表者といったところだろう。

例えそうだとしても、雪男には果たしたい目的があった。
王となり、自身の采配に悩み、人を失い。
幾度も辛く苦しい日々を過ごしてきたけれど、全ては自身の目的を果たすため。

幼い頃に生き別れた、兄を見つけること。

それは雪男が心に決めた自分の信念であり、また生きる糧でもある。
広大な世界の中で特定の個人を探すならば、人手は多い方がいい。
王としての地位は国の中で一番人を多く使えるので、まさにうってつけだった。
兄を探し、共に生きるために、この国を守らなければならない。
そのために犠牲になる数多の命と人生を。雪男は見送らなければならない。

己の理想を叶えるために。

こんな傲慢な王の為に、目の前の彼は死地へと向かうのか。
雪男は自嘲した。それでも前に進まなければこの国は守れない。
目の前にいる彼にもきっと、大切な誰かがいるのだろう。
だから、人は戦っている。
その気持ちを利用して、国は繁栄している。

騎士は差し出された剣をゆっくりと右手で握る。
そのまま、両手で王からの剣を受け取り心臓の前に持ってきた。
王が騎士団長の顔を見ることはない。
騎士団長も、王の顔を見ることはない。
下々の者が王に向けて顔を上げるなど、不敬に当たるからだ。
騎士団長は顔を下に向けたまま、言葉を口にする。

「誓います。この命を、王と我が祖国の為に」

いずれ死ぬだろう騎士団長の名前は、儀式の場では告げられない。


***


「燐君、ちゃんと儀式できてたやん。
よかったわ~失敗して殺されやせんかて心配やったんやで」
「徹夜で特訓した甲斐があったぜ・・・志摩、俺もう眠い」
「寝てもええけど、部隊の訓練どうすんの」
「俺人に教えるの苦手だから、シュラに任す」
「ははは、燐君完全に実践型やしこの展開は予想はしとったけどね。
その方が部隊にとってもええか」

騎士団の休憩室で、年若い少年二人が談笑を交わしていた。
外見からはわからないが、一人は新たに騎士団長に任命された燐であり、
その燐と親しく会話を交わしているは騎士団の副長をつとめる志摩だ。
この国の前線の指揮を執る戦闘集団のトップである。

「にしてもなぁ、このところえらい小競り合いが多発してるやんな」
「悪魔は容赦がねぇってのもあるけど、一番は国の国境が動いたことだろ」
「俺たちが頑張っちゃったおかげで、奪われた土地が取り返せたってのはでかいやんなぁ。
そのせいで、悪魔がまぁ怒っちゃうのも無理はないか」
「あれは作戦がよかったってのもあるけどな」
「せやね、王様なのに参謀も務めるとか。
一昔前に比べたら。えらいやり手な王様になったもんやわ。
なぁ、王様ってどんな顔してはるんかな。見た?」
「―――見てねぇ」

王の顔は、下々の者にはわからない。
この王宮でも王の姿を知る者は、ごくわずかだ。
顔を隠すことで暗殺者の脅威は少なくなる上に、
決して見ることのできない王は威厳溢れる存在だと認識させることができる。
けれど、だからこそ。
前線にいるものは王の駒なのだという意識が消えることはない。

「次の戦争が始まる前に、家族と過ごせる人ってどれくらいいるんやろね」

志摩はぽつりとつぶやいた。
騎士団には家族を戦争で亡くしたものが多く入っている。
戦う理由は人様々だ。残された家族を養う為の糧にしているもの、復讐の炎に身を任せるもの、
ここ意外に行き場がないもの。
志摩のように家族はいるが、家督を継げない為にここにいる者もいる。
それでも志摩は家柄が良い為騎士団の中でも優遇されている方だ。
燐は、孤児の為ここ以外に帰る場所がない。
そのため、戦いの前に会う家族もいない。
苗字も無いので唯一持っているのは名前だけ。
志摩は燐に疑問を投げかけた。

「なんで燐君は騎士団長になったん?」
「なんだよ今更」
「だって、騎士団長になったら絶対に戦争に行かなあかんやろ。
俺は副長やけど実際戦うより偵察とかの役割の方が強いし。
燐君はなんでそんなに頑張るんかな、って思って」

志摩はへらへらしているが、燐のことが心配なのだろう。
国の為に死ぬのは馬鹿らしいと普段から言っているので、死に急ぐような
燐の行動が理解できない。
志摩は前任の騎士団長が悪魔に惨い殺され方をしたことを知っている。
あれは見れたものではなかった。
腕は千切られ、内臓は食い荒らされていた。瘴気に毒された皮膚は紫色になっている。
悪魔に喰われて死んだ者はその遺体を家族の元に返すことも難しい。
だからこそ、騎士団には家族に縁のない孤児が集うのかもしれない。
燐には友人としてそんな死に方はして欲しくなかった。
本当なら、騎士団長にもなって欲しくはなかったけれど。
万年人手不足の騎士団には、他に適任者がいなかったのも事実だ。

「そうだなぁ。この国の上にいけばいつか弟に会えるかな、って思って」
「燐君、弟さんおったん?」

初耳だった。
そんな話は今まで聞いたことがない。
燐は驚く志摩の表情を見ながらも、笑いながら話す。

「そう、俺の一番大切なもの」
「生き別れなんや・・・もしかして弟さん探すために騎士団入ったん?」
「そんなところだ」

燐は王から賜った剣を手に取る。
青色の装飾が美しい鞘と柄、その剣の全てが燐の手に馴染む。
この剣は、悪魔の加護を受けた魔剣で抜けば青い光と共に悪魔を殲滅することができるという。
騎士団長が代替わりしても、この剣だけは受け継がれてきている。
いわば、団長の証とも呼べる代物だ。

けれど、この剣が使われることが無ければいいと思っている。
志摩は知っている。
魔剣は使用者の命を喰らい、その命と引き換えに悪魔を殺すと言われている。

「弟さんに会うために頑張っとるんやったら、死んだらあかんよ」
「わかってるよ」

志摩はそう言うと、訓練の様子を見てくると部屋を出ていった。
適当に生きるをモット―にしている身からしたら、恥ずかしいことを言ってしまった自覚はある。
燐もそれ以上何も言わなかったので、志摩が逃げ出した形だ。
戦争の度に知った顔が死んでいくのは、辛いものがある。
昨日まで共に笑っていた友達が血を流して死んでいく姿を何度も何度も見てきた。

何で俺が生きて、あの子が死ぬんかな。
世の中って理不尽やな。

生き残り続けるのが志摩の役目だけれど、時々その役目がひどく重く感じる時がある。
だから生き残る人が一人でも増えてくれるのは、志摩にとってはありがたい。


***


燐は誰もいなくなった休憩室から、隣接されている仮眠室へと移った。
騎士団長になってから使用できる部屋が個室になったのはありがたい。
扉を閉めて、固いベッドに横になる。
王が使用するような、贅を尽くしたようなベッドとは天と地の違いだ。
これでも、下っ端時代に比べたら破格の待遇である。
志摩の言葉に甘え訓練は任せて、このままひと眠りさせてもらおう。

燐は剣を胸元に引き寄せる。
普通の人間からしたらただの冷たい武器だが、燐にとってこの剣は自身の一部だ。
とくんとくんと温かい温度が伝わってくる。
昔、弟と二人で寄り添って寝たあの夜を思い出した。

「雪男、覚えてないだろうな。それも当然か・・・」

悪魔の俺のことなんか、お前はきっといらないだろうから。
魔剣倶梨伽羅。王家に伝わるこの剣には今、燐の心臓が封印されている。
悪魔の血を色濃く引く燐は王家にとって害にしかならないと判断され処分が命じられた。
それでも使えるものは使えと、王家はまだ幼い燐の悪魔の心臓を奪い取り、
魔剣に封印することで悪魔と戦う武器を作り上げたのだ。
用済みになった燐は命である悪魔の心臓を奪われたまま、
王家とは全く関わりの無い荒野に一人捨てられた。

燐の手に残ったのは、名前と人よりも強い力だけ。
悪魔の力のおかげだろうか、普通の人間なら死ぬような状態でも生き残ることができた。

ここまで這い上がって来たのは、一目弟に会いたかった。
それだけだった。
王族としての身分などはなから興味は持っていない。
けれど、今の身分になっても王に目通りは叶わない。
どんな顔をしているのだろう。
背は伸びたのだろうか。
会話はできなかったけれど、声だけは聞くことができた。
昔はあんなに弱々しかったのに、すっかり王様っぽい固い声になってしまって。


「いつか、お前に会いたいな」


燐は倶梨伽羅を失った弟の代わりの様に抱きしめて目を閉じた。


その数日後、王からの命令で燐は戦争の最前線に立つことになる。


インテお疲れ様でした!


インテお疲れ様でした~!
無事に終わってほっとしております。
本を手に取って頂き誠にありがとうございました!
いつも開催前は緊張で心臓が止まりそうになり逃亡したくなるのですが、
今回は友人も来てくれたので大丈夫でした。
久しぶりに地元の友人にも会えたのでほくほくです。

当日はお声掛け頂きありがとうございました。
本人が久しぶりのイベントでお買いものに出ており
直接お話しできなかったことが心残りです・・・orz
体調の方は大丈夫です。ご心配をおかけしました!

あと、こちらも伝言で伺ったのですが、コピー本以外の新刊があると
お問い合わせ頂きました方、もし誤解をまねく表記をしていたとしたら大変申し訳ありません。
今回の新刊は、王宮パロディ「青の守人」コピー本のみとなっております。
前回のイベントの新刊となりますと、「さよならブルートレイン」か、「Return」になります。
ブルートレインは完売致しましたので、新刊扱いのものはコピー本のみです。
その他ご質問ございます場合はよろしければmirapororin77●yahoo.co.jp (●を@に変更をお願いします)か
メルフォにてご連絡いただければ別途回答させて頂きますのでお願い致します。


次回はきちんとした本が出したいですね!
仕事の残業時間が初めて50時間ぶち抜いてたのには笑いましたが、
資格試験の勉強もせねばなりません。ああ、憂鬱だ・・・
私生活は忙しくなってきますが、更新はまたやっていきたいと思っております。
ルシフェルお兄様とサマエルお兄様が燐を取り合うお話とかください是非ください。



以下、拍手返信になります。
遅くなりまして申し訳ありません汗
ぱちぱちだけの方もありがとうございます!!


2013/10/29
一昨日、スパークに行ったのですが、青エクの辺りは、少し寂しかった~の方

拍手ありがとうございます!東京の方は春くらいしか行く機会が無いため、
スパークの状況が知れてよかったです。青祓は前に比べたら少な目になってるんですね・・・
ですが私も諦めずに続けていきたいと思っております。青祓よ永遠なれ!が合言葉です笑
ご心配おかけしました!


2013/11/12&2013/11/22 ユカ 様

逆様鏡へのコメントありがとうございます!いつもユカさんには励まされております!
雪男と燐は、兄弟喧嘩した方がいいんじゃないだろうかという単純なきっかけから書き始めたものですが
この二人にかかれば深刻な殺し合いにまで発展していきました。
当方の奥村兄弟は本当に殺伐としております笑
そんな中アスタロトと志摩君が兄さんの救いになっていた形になりましたが、気に入っていただけたなら
とても嬉しいです。アスタロトさんは雪男の男前度に反比例するかのように男前になりました汗
連載がひとまず終了できたのもユカさんのコメントのおかげです。ありがとうございました!
またお時間ある時にでもお越し頂ければ幸いです。


2013/12/02
最近は月曜の朝の出勤の電車の中で~の方

拍手ありがとうございます!雪男君は兄さんに対してもっと本心を話せたら楽になるんだろうなと
思いながら書いておりましたが、本当に言葉にするって大事ですよね。
逆様鏡もひとまず完結となり、この結末が少しでも気に入って頂けていたら嬉しいです。
体調のご心配もありがとうございました!体に気を付けてがんばりますね(^^)


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