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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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亡国のプリズム7


ここら辺でいいだろう。
用済みのごみを捨てるには丁度いい。
そんな声が聞こえてきて、直後に体に強い衝撃が走る。
馬車に乗っていたような振動は感じていたけれど、恐らくはそこから投げ捨てられたのだろう。
身体に力は入らないし、視界は悪い。
けれど人並み外れた聴力は生きていたようで、馬車が走り去る音の中でも
少しの声を拾うことができた。

王の血族も手に入ったし、兄の持っていたこの全てを殲滅する炎は使える。
弟の方には我らにとって都合のいい王となってくれることを祈るばかりだな。
除名されたといえども、ユリ=エギンは最期にいい土産を残してくれたものだ。

笑い声と共に、馬車は去って行く。
本当なら追いかけて行きたかったけれど、それもできない。
心臓を刺し貫かれ、力を奪われた今となっては燐はただの死体も同然だった。
あの剣はなんだったのだろうか、刺された瞬間から今まで自分の中にあった力が
根こそぎあの剣に奪われるのがわかった。
力を手に入れた人間がする行動は簡単だ。
男達は嬉しそうに剣を振り回して、村を焼いた。
燐の耳には遠くで人が焼き殺される悲鳴が聞こえてきていたのに、何もできなかった。

俺のせいだ。

燐の体からは血がどくどくと流れ出ていく。
命の炎が消えて、体温も下がっている。
脳裏に浮かぶのは、弟の姿だった。
スープを作ってやると約束したのに約束を破ってしまった。
雪男は泣いていないだろうか。
俺がいなくなったとしても、泣いてないと、いいな。

燐の意識が消えそうになった時、頭上から声が聞こえてきた。

「おや、こんなところに子供とは・・・」

聞いたことのない男の声を最後に、燐の意識は途切れた。


次に目が覚めると、真っ白な天井が目に入ってきた。
周囲も全て白く、目が眩むようだった。
腕を動かそうとすると引っ張られるような感覚がして驚く。
腕には針が刺さっており、その先にある液体が燐の中に流れている光景が見える。
これは俗に言う点滴というものだったが、燐は今まで病院や医者にかかったことがないので
何をしているのかがよくわからない。
片手で引っ張ってその管を抜くと、腕から少しだけ血が出た。
こんな得体の知れないところからは早く逃げ出さないと。
自分の体を見れば、身体は綺麗に清められており白い服――入院着を着せられている。
首にはタグが巻きつけられていた。
寝かせられていた寝台から降りると、足元がふらつく。
燐はどうにか踏ん張りながら、目の前にある扉へ向かおうとした。

なんだかざわざわする。
この気配は一体なんだろう。

一つの大きな光の塊の他に、無数の弱い暗闇が集まっている。
無数の暗闇の方は蠢くような動きをしているのにまるで死んでいるかのような感覚だ。
対して光の塊はこちらに向かっているような動きをしている。
幼い燐でもわかる。この光は自分にとって良くない物だ。早く逃げないと。
燐は扉を叩いた。普段の燐からしたら弱々しいものだったが、燐は普通の人間とは違う力を持っている。
がつんがつんと何度か扉を叩けば、扉は歪んで開きそうだった。
けれど、扉は燐が壊す前に開いてしまった。
開いた扉の前には、白衣を着た男がいた。かなり太っており、ぎょろりとした目が燐を見つめた。

「大人しくしてなきゃ駄目だろ~、大事な体なんだから」

男は嬉しそうな表情をしている。変な奴だ。
扉を壊そうとした燐を叱るわけでもなく、軽口を叩くだけなんて。
あやしい奴だ。
燐は逃げ出そうとしたが、扉を出る前に体に電流が走ったかのような痺れが走った。
倒れ込んだ燐を起こして、男は丁寧に寝台の上に燐を寝かせる。

「逃げようとしても無駄だよ、お前には特別な監視システムつけておいたからね。
自力で逃げれはしないよ」

キャキャキャ、と笑う男の表情が怖い。
男は持っていたカルテを開いて、燐と見比べた。
程なくして、扉からまた別の人物が入ってきた。
鳥肌が立った。仮面を被った男は、燐が意識を失う前に聞こえた声と同じ声をしている。
仮面の男は外道院、とカルテを持った男を呼んだ。外道院という名前らしい。
そして外道院は恭しく仮面の男に説明を始めた。その説明を聞き終えると、仮面の男は燐に向かって問いかけをした。

「貴方の名前は何ですか」

燐は警戒して口を噤んでいたが、外道院が答えろと凄むとしぶしぶ口を開いた。
燐だ、と口に出せば仮面の男も燐の名前を繰り返した。
すると、燐の体に一気に圧力がかかった。
燐は意識するよりも前に全身から青い炎を噴出した。
その炎が、仮面の男が発した何かを弾き飛ばす。

「私が真名を呼んだのに束縛できない上に、父上しか扱えない青い炎を・・・これは面白い」

青い炎に包まれた燐は、呆然と男達の様子を見ていた。
外道院は興奮しているし、仮面の男は燐を静かに見守っている。
こいつら、一体何がしたいんだよ。
燐は叫んだ。

「お前ら、一体なんなんだ!!ここはどこだよ、俺をどうするつもりだ!!」

ルシフェルは燐の警戒する様子を見ても怯まず、近くによって来た。

「私の名はルシフェル。検査結果を見させて頂きましたが、貴方は私の腹違いの弟です。
つまり、貴方は魔神という悪魔の神の子供というわけだ。それも私たち兄弟が決して
継ぐことのなかった青い炎を継いでいる。つまりは次代の神の器というわけです。
私はとてもいい拾い物をしたと言う訳だ」

神、悪魔。腹違いの弟。
聞いたこともない単語が燐の頭に浮かんでは消える。
燐の家族は母と、たった一人の弟だけだ。
燐はふざけるなとルシフェルに怒った。

「俺の家族は、母さんと雪男だけだ!お前なんか知らない!」
「知らないことは、知っていかなければいけません。貴方が何者なのかということも」

ルシフェルは外道院に目配せすると、外道院は部屋から出ていった。
後でデータを取らせて頂きますね、と不穏な言葉を残して。
残された燐はルシフェルから逃げて扉に向かうが、今度も扉が開くことはない。
青い炎に包まれた燐を怯むことなくルシフェルは抱きかかえた。
そのまま、寝台の上に連れていかれて押し倒される。
燐は触るな、と叫ぶがルシフェルには叶わない。

「こどもに手を出すのはサマエルの趣味だと思っていましたが、
次代の神に悪魔として目覚めてもらうには私が行うのが一番でしょうね」

仮面が外されると、その下からは金髪の美しい男の顔が現れた。
燐は悲鳴を上げる。
彼の顔は間違いなく美しいものだったのに、肌は崩れ血が噴き出していたからだ。

燐は、この日のことを一生忘れることはないだろう。
ルシフェルによって燐の体は無理矢理に開かれた。
奥底に魔力の塊を注がれ、燐は強制的に悪魔としての目覚めを迎えたのだ。


***


それからは地獄のような日々だった。
今まで人だった燐の体は牙が生え、尻尾が出来てしまい目に見えて悪魔と化してしまった。
炎を使おうともルシフェルには通用しないし、外道院には毎日のように検査をされる。
ルシフェルは体が弱いらしい、というのは最中に知ったことだ。
死人のように冷たい体は、燐と交わることで温かさを取り戻すし、
終わった後彼は目に見えて調子が良くなっている。
燐も、心臓を奪われたことで死にそうになっていた感覚は今はない。
ルシフェルの魔力のおかげで、心臓を奪われた燐の身体は失ったものを補う形で安定している。
それに悪魔化したことが加わり、燐は少しの傷も体に残らなくなった。
今は健康そのものだ。
けれど、精神的にはぼろぼろだった。
自分の意志が及ばぬところで行われる全てに我慢がならない。
早くここから出たい。毎日そればかり考えていた。

燐が何回目かの脱走を試みていると、建物の中に警報音が鳴り響いた。
燐の部屋からではない、どこか別の場所からだ。
燐が様子を伺っていると、扉が勢いよく開いた。驚いた。
ここには研究者のような白衣を着たものが数名いるようたが、
部屋の中に入ってきたのはルシフェルと外道院しかいない。
燐の閉じ込められている部屋の中に入り込んできたのは、女の子だった。
きつい釣り目に、麻呂眉が特徴的な。背後には、妖狐を従えている。
少女は燐の姿を見るなり、叫んだ。

「かくまって!!」

燐は急いで扉を閉めた。外からはばたばたと人が駆けまわる音が聞こえる。
少女は燐に問いかけた。

「私の名前は、出雲。私と似た顔の女の子を見たことはない?!月雲っていうんだけどッ」
「ないな・・・ここに連れてこられてから、部屋から出たことねぇし」
「あんたも、拉致されたってこと・・・私たちと同じね」

最深部に近いから、てっきりここにいるかと思ったんだけど。
出雲はそう呟くと、羊皮紙を取り出してもいう一匹妖狐を呼び出す。
妖狐たちは出雲の命令に従って、壁をすり抜けて部屋を抜け出していった。
何もないところから、悪魔を呼び出す力があるのか。
燐は出雲の手を掴んだ。

「俺の名前は燐、なぁ出雲。どうやってそれやってるのか教えてくれ!!」

これが、燐と出雲の最初の出会いだった。

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