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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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亡国のプリズム8


出雲は燐の言葉に戸惑った。いきなり教えろだなんて、無理だ。
悪魔の召喚は才能が物を言う。出雲は巫女の血統なので簡易の陣での召喚が可能になっている。
一般人がそう易々と使える者でもない。
けれど、出雲の思惑は燐の姿を見て変わった。
燐からは悪魔の尾が生えていた。

「あんた、悪魔なの?」
「それは・・・」

燐は思わず尻尾を隠した。
この体になってしまってから、普通の人間に会ったことがない。
会うのは外道院とルシフェルだけで、燐のこの姿を喜ぶような輩だ。
燐は決して望んで悪魔になったわけではない。できるなら、雪男と同じ人でありたかった。

「別に隠さなくてもいいわよ、この悪魔と人間の交わった世界じゃよくあることだわ。
私も、血は薄くはなったけれど悪魔と血が繋がっているし」
「そうなのか!?」
「貴方、何も知らないのね。
もしかしたら何も知らされてない、が正解かしら」

出雲は燐の姿をよく確認した。悪魔の尻尾に尖った牙、それに耳。
特に何かの眷属の悪魔の特徴を示してはいないが、
この最深部にほど近い場所に幽閉されているという部分が引っかかる。
けれど、出雲は燐に構っている暇はなかった。
妹の月雲を連れて逃げ出すためにここに来ているのだ。
可哀想だが、燐は置いていくしかないだろう。
出雲は匿ってくれてありがとう、と言い残して部屋を出ようとした。
燐は慌てて出雲を引き止める。

「待ってくれ!お前誰か探してるんだろ、俺も手伝うからその術教えてくれ!」
「何言ってるの、あんたさっき知らないって言ったじゃない」
「探してるやつって、どんなやつなんだよ」
「しつこいわね、私の妹よ。私が助けないといけないの、離してよ!」

先程放った使い魔はまだ戻って来ていない。
まだ月雲の居場所は特定できていないのだろう。
ここに留まるだけ捕まるリスクが増してしまうため、出雲は焦っていた。
燐は少しの間目を閉じると、見つけた。と呟いた。

「お前の妹、ここより二つ上の階だ。生きてる」

燐の瞳は確信に満ちていた。けれど出雲には信じられない。
適当なことを言って、出雲を騙そうとしているのかもしれない。

「あんたの言葉、信じろって言うの?」
「さっき放った使い魔の一匹が丁度二つ上の階をうろついてる。
そいつに命令して確かめさせればいいだろ」

妹の居場所だけでなく、使い魔の居場所までわかるのか。
出雲は半信半疑ながらも、使い魔に命令してその場を探らせた。
自分の召喚した使い魔なら、離れた場所からでも命令を伝えることができる。
程なくして、焦った声で使い魔が戻ってきた。

『出雲、月雲を見つけた!!ここから二つ上の階だ!早く行こう!!』

出雲は冷や汗をかいた。燐の言っていた言葉は本物だった。
けれど、会ったこともない人物の居場所をつきとめるなんて普通じゃない。
それに出雲の使い魔だってさっき出したばかりで、すぐにこの部屋を出て行かせた。
出雲は警戒しながら燐に問いかけた。

「あんた何者よ、どうして月雲や私の使い魔の居場所がわかったの」
「お前の血縁だっていうなら、気配を辿るのは簡単だろ。
使い魔はさっき出してたから、普段ここにいない奴の気配なら区別はつく。
俺が何者って言われても・・・俺の名前が燐ってことと、俺にも弟がいるってことくらいしか言えねぇよ」
「簡単そうに言うわね・・・まぁいいわ」

出雲は陣の描かれた紙を燐に一枚渡した。
出雲にとっては武器になるものだけれど、燐にこれを渡すのは一種の賭けだろう。
それでも、燐からは底知れぬ何かが感じられる。
自分の行動は無駄にはならない気がした。

「この陣に自分の血を流して、悪魔を呼び出す言葉を言えばいいわ。
祝詞とかを知らないなら、来いとかだけでもいいと思う。
私の場合、最悪円を描くだけで使い魔を呼び出せるから、これ一枚だけでいいならあげる。
成功するかしないかは貴方次第よ」

出雲は使い魔に従って、部屋を出ようとした。
背後から声が聞こえてきた。

「ありがとう!出雲!」

出雲は照れ臭そうに顔をそむけた。
後は、月雲を連れ戻しに行くだけだ。出雲は部屋を飛び出して上の階に向けて駆けあがっていった。
背後から、足音が聞こえてきた。
敵かと思って振り返ると、燐が着いてきていた。出雲は思わず叫んだ。

「なんであんたが着いて来てんのよ!?」
「俺も行く!逃げ出すなら、戦力多い方がいいだろ!」
「あ――、もう!勝手にして!アンタが捕まったら真っ先に置いていくからね!」

二人は暗い道を駆け上がった。
出雲は口では燐のことを邪険に扱いながらも、一人ではないことに少しだけ安心感を覚えていた。
この冷たくて暗い道を行くには、一人はとても心細かったのだ。
それは、燐にとっても同じことだった。


***


月雲を見つけ出して、三人で出口を探しているところで最悪の奴に出くわしてしまった。
暗闇の向こうから、無数の屍人がこちらに向かってきたのだ。
出雲は使い魔で屍人を祓おうとするが、彼らは倒れても倒れても起き上がってこちらに向かってくる。

「どういうこと!?普通の屍人と違う・・・ッ!」
「出雲、あいつらは人なのか?」
「かつて人だったもの、よ。あれだけ損傷が激しかったらもう人として生きることは不可能だわ。
せめて、一撃で殺してあげれたらいいんだけど。回復が早すぎるの」

出雲は月雲の手を握った。月雲も姉の手をしっかりと握る。
本来なら泣き出したいほどの光景だろうが、月雲はそれに耐えている。
燐は月雲と出雲の姿を見て、自分たち兄弟の姿を思い出した。
雪男に会いたい。
そうだ、俺は兄ちゃんなんだから雪男を守らないといけない。
だからここから生きて脱出しないといけないんだ。
燐は覚悟を決めた。出雲に声をかける。

「出雲、一気に行くぞ。月雲の手、絶対離すなよ」
「え、なに言って・・・」

出雲の言葉を待たずに、燐は全身に青い炎を灯した。
その炎は燐の視線の先にいる屍人を次々に燃やしていく。
苦しむ暇もない程に、一瞬で燃え尽きていく光景はいっそ美しいとも言えた。
燐は走れ、と叫んで屍人の燃える間を駆け抜けた。
出雲もそれに従って月雲の手を引っ張って走る。
出雲は燐の背中を追いながら、自分はなんてものを引き当てたのだろうかと恐ろしい気分だった。

「あんた、よく自分の正体を知らないとか言えたわね。
青い炎だなんて、魔神の血縁じゃなきゃ扱えるわけないじゃない!」
「魔神なんて奴知るかよ!俺は悪魔になりたくてなったわけじゃねぇし!」
「・・・本当に何も知らないのね、馬鹿って本当に怖いわ」
「ねーね、ばかってなに?」
「こういう奴のことを言うのよ月雲」
「おい出雲、馬鹿とはなんだ!」
「自分の正体も知らない奴なんか、馬鹿で十分よ!」

使い魔の示した出口はもうすぐだった。
このまま三人で抜け出せたら。希望が見えてきたところで、目の前に絶望が見えてきた。
燐は背中に出雲と月雲を庇うようにして立ち止る。
出雲は思わず声を漏らした。

「外道院ッ・・・!」
「三人とも悪い子だ、抜け出せるだなんて本気で思ってたのかな?」

外道院がぱちんと指を鳴らすと、燐の全身に電流が走ったかのような痛みが走った。
燐は立っていられず、その場に倒れ込む。
出雲が燐に駆け寄る。燐の尻尾には、銀で出来た聖具が取り付けられていた。
外道院の合図で締め付けるような呪いも仕込まれているらしい。
悪魔の尻尾と心臓は弱点だ。その一つを抑えられてしまってはどうしようもなかっただろう。

「今回は燐の戦闘能力を見ようと思ってあえて泳がせてたんだけど、
いやぁ出雲のおかげでいいデータが取れたなぁ。
まったく、本気でここから抜け出せるとでも思ったの?」

全部僕の掌の上だってこと知らずに必死になってさ。
馬鹿みたいで、とてもかわいかったよ。
外道院の言葉に出雲は激昂する。

「アンタ、どこまで人のこと弄べば気が済むのよ!!!」
「燐はルシフェル様の御手付きだから、これでも優しくしてる方なんだけどなぁ。
三人とも僕のお気に入りなんだけど、月雲ちゃんはまだ小さすぎるからね。
出雲や燐くらいの年ごろの方が、僕はタイプだな」

べろりと外道院は舌なめずりをする。
出雲は月雲に燐の傍にいなさい、と声をかけると外道院に向かって走り出した。

「ウケ、ミケ!」

使い魔に声をかけて、外道院の体に攻撃をかけた。
けれど、その前に屍人が立ち塞がる。出雲は咄嗟に足払いをかけて屍人を転ばせる。
転がった屍人を狐火を使って焼き尽くそうとするが、火力が足りないようだ。
火だるまになった屍人はゆっくりと立ち上がり、出雲に向かってこようとする。

『出雲、危ない!!』

咄嗟に使い魔が盾になり、屍人の攻撃を受けとめた。ウケ、と出雲は使い魔の名前を叫んだ。
一回目の攻撃はなんとか防いだが、使い魔の体に残る火傷の跡が痛々しい。
月雲は兄弟のように育った使い魔が攻撃を受けたことで、とうとう泣き出してしまった。
死肉が焼けるにおい、外道院の笑い声、月雲は泣いている。
燐は、なんとか意識を取り戻した。けれど動くことはできない。
いつも、外道院やルシフェルにいいようにされたのは、この聖具があったからだ。
自分が動けないときに、動いてくれる誰か。出雲に召喚の方法を教わりたかったのは、このせいだ。
それに、今回は自分だけじゃない。
さっき会ったばかりだけど、出雲や月雲がいる。
彼女たちだけでも、どうにかして逃がしてやりたい。
燐の手の中には、出雲に貰った陣があった。
燐は指を噛んで血を滲ませる。

出雲に、屍人が襲いかかる光景が目に入った。
自分は動けない。

燐は陣に血を落として、叫んだ。

「誰か、助けてくれ!!!!」

燐の叫びに応じて、辺り一面が光に包まれた。
屍人と外道院はその光に吹き飛ばされる。
小さな陣から発せられたとは思えないほど、すさまじい魔力が放出されている。
光が収まると、目の前がピンク色の煙にもくもくと包まれていることがわかった。
出雲は、月雲を抱えて燐の傍に座り込んでいる。よかった、無事だった。
燐は倒れたまま、目の前に現れた人物を見上げた。

「私をお呼びとは珍しい―――貴方の望みは何ですか?」

ピエロの様な悪魔は燐に問いかけた。
燐は、俺たちを助けてくれ、と答えた。


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