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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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犯行は計画的に

「なんで君がここにいるのかな志摩君」

自分の部屋に帰ってきたら、兄とその友人が鍋を囲んでいた。
しかもこの二人はつい先日、駆け落ち未遂を起こした二人だ。
なにを仕出かすかわからない。
雪男が志摩を警戒感するのは当然のことなのかもしれない。
しかし、志摩は全く気にしない様子で鍋に野菜を入れている。

「おかえりなさーい。奥村君に呼ばれたからお邪魔してまーす」
「・・・へーえ」
「雪男、怒るなよ、気にしすぎると眉間に皺寄るぞ」
「もう二人のせいで寄ってるよ」
「そう言わんといて先生、ほらお土産もあるから」
志摩はビニール袋に入った瓶を手渡した。
中身を見ると、ジュースらしいラベルが見えた。
雪男はため息をついてコートを脱ぐ。
この二人には何を言っても無駄だ。

部屋の中央にちゃぶ台を置いて、上にコンロと鍋が置いてある。
いいにおいだ。任務で疲れた空腹の胃を刺激する。
普通なら寮の食堂で食べるのだが、あそこだと寛ぐというより
ただ食事を食べるための場所だ。
三人で食事をするにはこの部屋はせまい。でも、たまには悪くない気がした。
用意がいいことに、座布団が三枚。雪男は燐の横に座る。
「なぁそろそろいいかな」
「奥村君豆腐食べる?」
「俺肉がいい」
「肉ばっかやと俺らの分なくなるやん」
「兄さん、野菜も食べなよ」
雪男は志摩の持ってきたジュースをコップに注ぐ。
オレンジの甘い匂いが香るそれを志摩に渡した。
「おおきにー」
それぞれにコップが渡ると、志摩がコップを上に掲げる。
「かんぱーい」
「カンパイー」
「・・・乾杯」
何に乾杯なんだろう。疑問はジュースを口にして喉の奥に流し込んだ。


この三人での食事は始めてだ。
昨日までの関係だと今の状態は考えられないな、と雪男は思う。
温かい鍋を囲んでいるせいか、ふと表情が緩んだ。
兄の表情は楽しそうだ。
燐はその力故にほとんど他人と関われなかった。
その笑顔は『友達』が作り出しているもので、『兄弟』の関係とは違ったものだ。
関係は多いほうが兄にとってはいいのかもしれない。
それに、自分達の関係性は揺るがない。
今回のことでわかった。自分は弟で、兄は兄だ。


それはずっとずっと変わらない。
だから、大丈夫なんだと思う。


・・・なんだか頭がぼうっとしてきた。
せまい部屋で鍋をしているせいだろうか。
雪男は冷たいジュースを飲んだ。
コップが空になったところで志摩がジュースを注ぐ。
「これ美味しいやろ」
「ああ、甘くて美味しいね」
燐のほうを見ると、顔を紅くしながらジュースを飲んでいた。
燐も雪男と同じらしい。志摩だけが一人涼しい顔だ。
「なんだか、暑くないこの部屋?」
「窓開けるかー?」

燐が立ち上がると、足元がよろめいた。
志摩は予想していたらしく、倒れこんできた燐を腕の中にキャッチする。
途端に、雪男がむっとした顔になる。
二人のじゃれあいは、許容はできるが納得はできない。揺れる心は別問題だ。
「あはははー、悪い志摩」
「ええよー奥村君抱き心地ええしな」
なんだか一気にムカついた。普段なら我慢できるのに、今は何故かできない。
雪男は印を組んで、禁断の言葉を呟いた。

「オン・マニパドウンッ」
「いだだだだだだ!!!!!」

痛がり出した燐に志摩が驚く。燐は尻を押さえている。
見れば、尻尾にアクセサリーの様なものがついていた。
なるほど、呪文で戒める仕組みか。志摩は悪い顔になった。


これほど痛がるのだから、きっと燐の―――悪魔にとっての弱点なのだ。


「雪男!てめぇらにすんだ!」
「のぼせて足元が覚束無さそうだったから・・・ひっく。目を覚ましてあげようかと」
「余計なお世話だ!!」
二人とも呂律がまわらなくなってきている。


計画通り


志摩は悪い笑顔になった。
志摩が持ってきたのはお酒だ。しかも甘口なので酒と知らなければまず味では気づかれない。
外見だけで雪男がわからなかったのは、ジュース瓶の中身を入れ替えていたからだった。

二人ともお酒に弱いんやなー。もしかして飲み慣れてないんかなー。

志摩の上の兄弟は成人しているので、家でも面白半分飲まされていた。
酒に耐性のない奥村兄弟はどんな面白いことになるのだろう。
志摩はいつもどおりだが、やはり酒が入っているせいか普段より積極的に燐をつつく。

「かわいそうな奥村君ー。俺が撫でたろか?」
「やめろ、尻を触るな」
「ちょっとなにしてるのさ二人とも」

背後には志摩、前にはにじりよってきた雪男に燐は挟まれている。
いつもならすぐ逃げる。なのに酒に酔った頭では危機に気づけない。
志摩が燐の耳元で呪文を囁いた。
アクセサリーが呪文に反応して燐を戒める。
しかし、先ほどのような鋭い痛みではなかった。

「・・・う、あ」

その痛みは少し辛い。足が反射で思わず閉じる。
雪男が何を思ったのか燐の足の間に入ってきた。
足は痛みで閉じてしまうので、雪男の体を締めるように動く。
雪男は触診するように燐の足を捕らえた。

「志摩君何したのさ」
「仮にも詠唱騎士目指しとるんやもん。呪文の唱え方にもコツがあるんやで奥村先生。
詠唱の仕方によって同じ呪文でも強弱つけれるんよー」

へぇそれは知らなかった。雪男は素直に感心した。
目の前にある兄の顔は、眉間に皺が寄って入るが耐えれない痛みではなさそうだ。
この時点で雪男は完全に酔っ払っていた。
いつもなら、警戒している志摩の前で燐を戒める呪文など言わなかっただろう。
志摩にとってはもうけものだが、今後の燐の身は確実に危険に晒される。
そこに雪男が気づく頃にはもう後の祭りなのだが。


「てめぇら・・・俺をいじめて楽しいか」


燐は不快そうに呟いた。当然だ。
しかし、雪男と志摩は平然と答える。


「楽しいか楽しくないかといったら、楽しい」
「知らんかったん奥村君。俺悪い子やねんで」


志摩の指が燐のシャツのボタンにかかる。
燐は嫌がるが、呪文を言われたら体が抵抗できない。
「暑いっていうてたやろー、窓開けるより早いで」
「君だけずるいな。僕も手伝う」
雪男の手がズボンのベルトにかかる。
おい、ちょっと待て。お前ら俺になにする気だ。

前門の虎。後門の狼。

燐の頭にふと思い浮かんだ言葉はこの状況に相応しい。
なんだどうしてこうなった。
背後の志摩を振り返ると、やっぱり悪い顔をしていた。



「奥村君、3Pエンドは予想だにせんかったやろー」
「あ、たり・・・まえだ、馬鹿野郎!」



燐は一先ず雪男を蹴って、志摩に頭突きを食らわした。

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