青祓のネタ庫
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SQ最新号ネタバレ有りです!!
クラーケンの退治も終わり、奥村兄弟の不和も一応の決着を付け、
祓魔塾の生徒一同はイカ焼きそばの調理に追われていた。
イカの足は取れたてのせいかぷりぷりとしており、意外と切りにくい。それに、大きさが半端ではない。
人の力では切りにくいそれをバッサバッサと切り裂いている燐がいなければ短時間では終わらなかっただろう。
しかし、倶利伽羅は調理器具ではないと明蛇の次期党首である勝呂は思いつつも言わなかった。
戦闘で空いた腹を早く満たしたかったという理由もある。勝呂は燐のほうをみた。
切れたイカの足を、鉄板の上で焼く姿は楽しそうだ。
あの海神の島でなにがあったかはわからないが、弟である雪男との仲も少しは修復されたらしい。
その証拠に雪男は燐の作っている焼きそばをそわそわと側で見守っていた。
勝呂たちは知らないだろうが、海神の島で作った燐の料理を意地を張って雪男は食べなかった。
その空腹が今頃きているのだろう。
燐は側で待つ弟に苦笑しながら、一番に出来た焼きそばを弟の皿に山のように盛り分けた。
「おーい、欲しい奴はこっち並べよ~」
燐のかけ声で、周囲にいた塾生や祓魔師達が集まってきた。
当初は魔神の息子ということで警戒されていたが、燐の料理のうまさが浸透したらしくいそいそと並んでいる。
その様子を見て、勝呂はふと温かい気持ちになった。
燐は魔神の落胤だ。だがそれの一言では燐を語れない。
奥村燐は悪魔だけれど、そこらの人間よりもよほど人間らしさを持っている。
それが少しでも多くの人にわかってもらえたら、燐の味方が増えることに繋がるだろう。
「ほれ、勝呂は多めに盛ってやるよ」
「おおきに、お前も食べや」
鉄板の焼きそばもいい具合に量が減ってきた。
ちょうどいい頃合いだろう、燐も残りを自分の皿に盛ると、勝呂と共に浜から外れた階段に向かった。
そこには志摩や子猫丸がすでに座っており、二人に向かって手を振っていた。
「待ってましたよ~こっちです」
「奥村君お疲れさまです、この焼きそば美味しいです」
「へへ、そうか?よかった」
階段に座ってイカ焼きそばを口にかき込む。
ソースの丁度よい辛さと、イカの弾力のある歯ごたえ。たまらない。美味しい。
戦闘で疲れた腹を満たす旨さだ。
腹が膨れてきたところで、志摩が声をかけた。
「さーて、腹も膨れたところでデザートいこか」
「デザート?あったかそんなもん?」
調理担当の燐が首を傾げる。食後に頂くようなフルーツなどは材料の中にはなかったが。
志摩は燐の手をひっぱると、階段の脇を指さした。そこにあるものを見て、燐は戦慄した。
「なッ、あれは・・・!」
「でへへ、流石夏のビーチやでぇ。絶対あると思っててん」
階段下に敷かれたコンクリートの上に、エロ本が並んでいるではないか。
それも一冊や二冊ではない。かなり量がある。
表紙の写真からして間違いなく十八禁だ。お宝だ。
夏。それは人を開放的にさせる季節だ。
しかもここは近隣でも有名なビーチ。人が集まれば、男女も集まる。
男女が集まればやることは一つ。
流石に今は見回りが厳しいので砂浜でそういった行為に耽るものは少ないだろうが、ゼロではない。
それを狙った男性客は、来るべき夜に備えてエロ関係のものを持ってくる。
男子高校生には買えないものを、大人はビーチに持ち込み、捨てていく。
これは昼間の男性客の夢の残骸だ。
志摩はその夢のかけらを拾っていたのである。そう、任務そっちのけで。
「さぁ、今回はジャンルが豊富やでぇ。陵辱系から清純系、女子高生にお姉様ものに女教師に医者ものに、
特殊なものでいうと緊縛監禁まであるでぇ!ああ胸が高鳴るわ!!」
「なに考えとんのや志摩!!」
「志摩さん・・・待機時間中に必死にゴミ拾いしてはるわと思ってたら、こんな」
幼なじみたちの冷徹な視線もなんのその。こちらはエロに興味津々の奥村燐という味方がいる。
志摩は水を得た魚のように燐とあれこれ話している。
「奥村くんどういう系好き?俺お姉様系、あと医者かな」
「俺はどっちかというと清純系で」
「お?お?それは清純プラス女子高生とかいう組み合わせ?ぶふっ、胸はおっきい方やんなぁ」
「ちょ、お前なに想像してんだよ!!」
「ええやん、俺もきっつい瞳のお姉様好き~表紙が出雲ちゃんに似た感じで・・・」
「あたしがなに?」
二人が硬直した。背後をギギギ、と油を差していない機械のような堅さで振り向くと。
そこには今話に出てきた同級生が絶対零度の瞳でこちらを見ている。
出雲は二人の視線の先にあるものを見つけると、顔を青くして、また赤くしてを繰り返すと絶叫した。
「キモいのよ!こんなとこまできて何してんのよ!!!」
「出雲ちゃん、違うんやこれは男の本能で」
「あたしに近寄らないでって言ったでしょ!寄るな!!汚らわしい!!」
志摩はどうにか弁解しようとしているが、あの状態の出雲に話しかけるなど勇者以外の何者でもない。
燐は完全に言葉を失っている。出雲は志摩に話していたら埒があかないと思ったのだろう、矛先を燐に向けてきた。
「ちょっと奥村燐!!あの本燃やしなさいよ!!」
「え、ええ!?俺が!?」
「あんたもこいつと同罪よ!自分の手で自分の不始末つけなさい!
じゃないと奥村先生にあることないこと吹き込んでやる!!」
「待て出雲、それは勘弁してくれ!!」
「じゃあ燃やせ!今すぐよ!」
「あかん奥村君!!せめて中身見て脳に焼き付けてからにせな!」
二人に挟まれて、燐は怯えていた。
出雲を取れば、お宝を自分の手で焼失させなければならない。
志摩を取れば、雪男からの制裁が待っている。
ジジイ。エロの権化であったジジイ。ジジイのベッドの下のお宝は、今でも俺の聖書です。
俺は一体どうすれば。悩む出雲が背後を指さして告げた。
「あ、奥村先生」
「くっそおおおおおおおお!!!」
燐は青い炎を灯らせた。哀れ、エロ本が青い光に包まれる。
その光につられて、雪男がすごい形相で走ってきた。
「馬鹿!兄さんなに炎使っているんだ!!」
「雪男!見るな!!」
雪男をいかせまいとする燐。燐を払いのける雪男。
状況が状況なら勝呂達も止めるなり説得するなりするがが、行き着く先はエロ本である。
止める気も起きなかった。
雪男の目が驚愕に染まる。そして、つぶやいた。
「えーっと。なんで炎の中に・・・あんな本が」
「え?あれ?燃えてないやん」
雪男と志摩が疑問の中燐を見る。燐は顔を覆い隠した。
すごく恥ずかしそうだった。
「燃やし分けの技術がこんなところで」
雪男は状況が理解できたのか、深い深いため息をついた。
燐は燃やさなければならない状況でも、心が拒否すれば燃やし分けれるようだ。
まさかエロ本でこんなことがわかるとは思わなかったが。雪男が燐の頭を掴んだ。
「燃やせよ」
「雪男、俺は・・・ッ」
「そうや!こんな男子高校生の心を否定するやり方なんてあんまりや!
先生だって男やろ!俺らと同じ男やろ!それやのになんでこんなひどいことできるんや!!」
「任務で来てるんですから見逃せるわけないでしょう!!」
志摩と雪男が口論を繰り返していると、騒ぎを聞きつけたシュラがひょっこりと顔を出した。
一瞬で状況を把握したのか、シュラが缶ビール片手に笑いながら雪男を指差した。
「にゃはは!なんだよ志摩とエロ本の取り合いとかビビりも成長したな!!」
「違いますよ!失礼な!」
雪男が怒鳴りながら状況を的確に説明した。
燐の燃やし分けを聞いて、シュラはまた爆笑していたが。
「なんだよ~つまんねぇメガネ。
ほれ、あの右から二番目の緊縛監禁モノなんかお前モロ好みだろ」
特殊なプレイものを名指しで指名された雪男は、即座にそれを否定した。
しかし、シュラは尚もつらつらと雪男の性癖を暴露していく。
たぶん、酒が五本目に突入していたのも理由の一つだろう。
「言っただろ溜め過ぎなんだよお前。お前の言うこといちいち聞いてたら
燐のこと監禁しなきゃならないことくらい自分でもわかってたんだろ?
檻に入れたかったんだろ。
自分が安心するために燐を自分の目の届くところに閉じこめておきたかったんだろ?
つまり、お前は緊縛束縛監禁大好きだ。せめて自分には素直でいろよ」
ここでいう溜めていたに該当するのはストレスなのだが、別の意味にしか取れなかった。
シュラの言葉に周囲の気温が五度は下がった。
シュラは酔っぱらっている。昼間に話したことと今の状況がこんがらがっている。
しかし、昼間の会話を知らない周囲がそんなことわかるはずもない。
あの真面目な先生が、緊縛束縛監禁大好き。
しかもその相手は実の兄。特殊なプレイすぎてどう対応していいのかわからないよ。
「雪男・・・俺のこと監禁したかったなんて嘘だろ?」
その対象とされている兄、燐は引くというレベルでなく顔が真っ青だった。
しかし、事実雪男の心の中にそんな思いがあったことは間違いない。
弟の心の中には兄を監禁したかった事実がある。
雪男は答えた。
「当たり前だ。嘘に決まってるだろ」
「じゃあなんで目逸らすんだよ!お前昔から嘘つくとき俺の目見ねぇじゃん!!」
「ばれてたの!?」
「兄ちゃんなめんな!!!」
燐が怒鳴ると、緊縛監禁のエロ本が天高く燃えていった。
なるほど、自分が対象になるかもしれないエロ本を取っておく必要はないだろう。
しかし、隣にあった清純系エロ本に燃え移ってないのを見る限り見事である。
そんな騒ぐ奥村兄弟の耳に、柏手が聞こえてきた。
「天の大神酒!!!」
雪男と燐の上に、大量の神酒が降り注ぐ。
燐は炎を出していたので、多少痛がっていたが命に別状はなさそうだった。
大惨事を受けたのはエロ本の方である。酒に浸されたエロ本は見るも無惨な姿になっていた。
青い炎も神酒で鎮静化したらしい。
志摩が悲鳴をあげる間もなく、出雲の声が響いた。
「狐火」
ぼう、と本に火が灯る。それは瞬く間にエロ本を燃やし尽くしていった。
志摩が燃えていくエロ本に向かって叫んだ。
「うわああん!坊の好きな女教師モノが!俺の好きなお姉様ものに医者ものが!
奥村君の好きな女子高生清純系モノが!奥村先生の好きな緊縛監禁モノが!
子猫さんはAVとかいうより、アニマルビデオ派!みんな大好き男の為の陵辱モノがああああああ!!」
みんなそれぞれ好みが別れとって喧嘩せぇへん分け方できたのにいいいい。と志摩は叫んだ。
志摩の叫びによって自分の性癖を暴露された男性陣は全員女子に視線を合わせられなかった。
シュラはにやにやしているが、出雲はゴミ以下のものを見る目だ。
その視線が怖くて、視線を空に向けた。
エロ本が燃えていく白い煙が空へと消えていっている。
「日本酒って燃えにくいのに、出雲うまいこと燃やしたな・・・」
料理の知識が豊富な燐は出雲の燃やし方のうまさに感動するやら残念やら。
燐は見れなかったエロ本と、知りたくもなかった弟の性癖に目を反らしながらつぶやいた。
男の夢が、天高く夏の空に燃えていった。
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