忍者ブログ

CAPCOON7

青祓のネタ庫

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

末の弟はグレることを決意致しました。


「で、兄さんは僕に何か言うことはないのかな?」

雪男は椅子に座って膝を組みながら床に正座する燐に向かって言った。
なぜこんな状況になっているのだろうか。
二十歳を超えるまで、つまり塾に通っていた当時ならば
課題忘れやらテストの点やらでお仕置きと称してこんな扱いを受けたことはあった。
むしろ今日の床に正座はぬるい方である。
正座した上にバリヨンを乗せられたり、床にぶちまけた釘の上で足踏みさせられたりした頃に比べれば。
燐はちらりと雪男の顔を見上げた。
雪男は無表情だった。怒った顔はしていない。
それが余計に燐の額に冷や汗をかかせる原因となっている。

これは、確実に怒っている。
それも心の底から冷え込んだ怒りだ。
おそらく塾講師時代にやった数々のお仕置きが行われていないのは、
怒りで道具を準備する暇がなかったからだと思われる。

さて、雪男は何の件について怒っているのだろうか。
燐は内心必死で考えた。何か言うことがないのか。と雪男は言うが、
言うべきことがないから黙っているのである。それのなにがおかしいのだろうか。
しかし雪男はそんな黙っている燐の態度も気に食わなかったらしい。

「なに?庇ってるつもりなの?それなら僕にも考えがあるよ」
「いやちょっと待ってくれ雪男。
申し訳ないんだけど俺お前が何に怒っているのか全然わかんねぇ・・・」

燐は素直に告げることにした。
だって燐は頭で考えてもいい答えが出てくるタイプではないのだ。
それなら素直に言った方がまだましだ。
むしろ言い訳した方が事態が悪化しそうである。雪男はため息をついた。

「そう、兄さんにとっては忘れられるようなことなんだね。
この前の任務の時、自分がフェレス卿に言った言葉。覚えてる?」
「この前・・・」

燐の脳裏にあの悪夢が浮かんだ。
ジュースを買おうとして警察に補導され、アスタロトに付きまとわれ、
挙げ句の果てにメフィストに言ってしまったあの言葉。
燐はサァ、と顔色を青く染めあげた。その色はどこか燐の青い炎の色と似ていた。

「な、なんでお前そのこと知って・・・ッ」

「わからない?僕がフェレス卿に兄さんが任務に来ないって連絡したからだよ。
兄さんが合流して、任務が終わった後にね、フェレス卿から連絡があったんだ。
メールでね。しかもデコレーションメール。デコメだよ。お祝いって書いてあったな。
題名はこう。祝、末の弟がお兄ちゃんと呼んでくれた件について。
内容は兄さんがどういう経緯でフェレス卿をお兄ちゃんと呼んだか。
その全てが事細かに詳細に書かれてあったよ。なんなら見る?」

雪男が自分の携帯電話を開こうとした。燐はそれを止めた。

「やめろ思い出したくもない」
「自覚はあるんだ?自分がまずいことしたって」
「お前・・・あん時すんげぇ大変だったんだぞ!」

燐はもう成人済みの大人だ。しかし外見は未だ高校生で通用する。
それもこれも十五歳で悪魔として覚醒してしまったからなのだが、
こればっかりは燐としても対応しようがない。
今では雪男と歩いていると雪男の方が完全に年上に見られるような有様だ。
いくら頑張ったとしても、燐の外見がすぐ変わるわけではない。
そんなどうしようもないことで怒っているのか。燐は雪男に怒った。

「俺が補導されたことで怒ってんのかよ!
あれはもう仕方ないだろ!俺だって好きでこんな若いわけじゃねぇ!」
「・・・そうじゃないよ、何でわからないかな!!」

雪男は机をバン、と叩いた。普段冷静な雪男にしては珍しいことだ。
燐は目を見開いた。雪男は燐に怒鳴りつけた。


「兄さん、フェレス卿のことを兄と呼ぶなんてどうかしてるよッ!!」


燐はびくりと肩を揺らした。
雪男の先ほどの説明と、燐はあの時自分で言った言葉を思い出す。

おにいちゃん。

あれは別にそんな変な意味で言ったわけではない。
あの警察官は燐の保護者を要求していたのである。
そして目の前に以前後見人をしていた人物が現れた。
メフィストと燐の関係を一言で表すなら、この言葉ほど的確な言葉はないと思う。
悪魔の家庭は人間に一言で説明できるようなものではない。
九人の異母兄弟。その末弟が最高権力者である神の跡継ぎ。
悪魔の世界を知らない一般人からしたらどこのファンタジー設定だと言われてしまうようなレベルだ。
メフィストと燐は同じ魔神を父に持つ虚無界の超上級悪魔である。
超上級悪魔がまさか警察に拘束されて動けなくなるなんて、
もはやコントにしか思えない状況だった。
燐の精神も、アスタロトの言葉と警官に追いつめられて正常だったとは言いがたい。
そのことについて、雪男はわかっていない。
燐はキレた。あのとき自分がどれほど大変だったかも知らないで。
燐は雪男に噛みついた。

「あのときはしょうがなかったんだよ!
俺だって好きで言ったわけじゃねぇ!状況がそうさせたんだ!
そうじゃなきゃ、誰があんな奴のこと・・・お、おにいちゃんだなんて呼ぶか馬鹿!!」
「実際呼んでるだろ!そう思う心がなかったら呼ぶわけないじゃないか!
それに、何でよりにもよってフェレス卿なんかに頼ったんだよ!」

雪男は緊急性があった為メフィストに連絡を取りはしたが、迎えまでは頼んでいない。
雪男の思惑よりも先にメフィストがしゃしゃり出たことで、今回のようなことになってしまった。
兄弟間の不仲をじゃれあいにしか捉えられない悪魔にとって
今回のことは笑い話にしかならないのだ。
そんな悪魔の笑顔を知らず、奥村兄弟の喧嘩はどんどんエスカレートしていった。

「だってお前その場にいなかったじゃねーか!」
「だから最初から僕に連絡すればよかったじゃないか!
警官に電話借りればよかっただろ!僕だって兄さんの身分を証明できるんだから!!
携帯なくったって、僕の番号くらい覚えてるだろ!」
「ば・・・弟のお前に補導されたからなんて言ーえーるーかーッ!!!」

二人は今や立ち上がって、メンチを切りあっている状態である。
お互い一歩も引く気配がない。
燐の方が喧嘩慣れしているので、ガンつけるのは燐の方がうまい。
雪男は慣れていないせいか、もう完全に目が人殺しの目をしている。

「いつもそうだ、兄さんは肝心な時に僕を頼ろうともしないんだから!!
だったらもういいよ!」
「あーあー!だったら俺ももういいよ!お前に頼るなんて恥ずかしくてできるか!
お前は俺の弟だろうが!」

「数時間先に生まれただけで兄貴ぶるなってんだよ!
今は兄さんの方が弟みたいなもんじゃないか!!」

その言葉に、燐が黙った。
雪男は自分の言った言葉に、思わず手で口を押さえてしまう。
しかし、一度言った言葉は覆らない。
お互い息が切れてきた。肩で息をしている。

動いたのは、燐が先だった。六○二号室の扉を開ける。
成人した今でも、騎士團に監視化に置かれている燐の為に、兄弟は旧男子寮に住んでいた。
その部屋を、燐が出ていこうとしている。
雪男は燐に声をかけようとした。しかし、燐がそれを言わせなかった。

「俺だって、好きでこんな外見なんじゃない」

扉が閉まって、燐が去っていく音が聞こえても雪男は動けなかった。
雪男が言いたかったことはそんなことではない。
燐が年を取らないとか、外見がどうという話をしているのではない。
なんで肝心なときに自分たちはすれ違ってしまうのだろうか。

「兄さんの家族は、僕と神父さんだろッ!!!」

雪男が許せなかったのは、ただそれだけだったのに。

***

燐はメフィストの執務室の扉を蹴り破った。
蝶番にヒビが入るような音が聞こえたが、この際無視だ。
メフィストはずかずかと部屋の中に入ってくる燐をこれまたおもしろそうな目で迎えた。

「ノックもできないとは失礼な弟ですね」
「俺はお前のこと兄貴だなんて思ってねぇよ!」
「そうは言っても、この前の件で貴方の弟さんは完全に誤解しているようですけどね。
まぁ誤解も何も真実ですけど」

燐は旧男子寮を飛び出してしまった。行き場など他にない。
学園を飛び出してしまえば、監視役である雪男に迷惑がかかってしまうだろう。
そう思ってここへ来た。燐は考えなしなわけではない。
そんな弟への気遣いが雪男を怒らせる原因なのだが、
兄としての威厳を保ちたい燐からしたら譲れないものもあるのだ。
しかし、今回のことは久しぶりに頭に来た。
兄弟喧嘩をすれば、燐の方が謝ることが多かったのだが、今回ばかりは譲れない。
燐は、メフィストに宣言した。


「俺は、グレることを決意した!」


こうなったら、雪男を全力で困らせてやろうではないか。
そして、どうにもならない状況に追いつめられたら、あの時の燐の気持ちを理解できるだろう。
燐はそう考えた。やはり、燐が考えた末に出した結論はろくなことにならない。
燐は頭脳型ではない。つまり、計画的な行動は絶対に向かないのだ。
燐は怒りでそこに気づいていなかった。
メフィストは完全にずれた燐の言動に、思わず拍手を送ってしまった。

「すばらしい!その計画。私も協力致しますよ奥村君!」

そして、奥村兄弟の最悪の日が幕を開ける。



PR

お立ち寄り下さりありがとうございました!

イベントお疲れ様でした!
いや、終わった途端にまるで役目を終えたかのように体が壊れました。
うんうん唸ってました。遅くなってすみません。
ネットも雷被害からようやく復活ですやれやれ。

当日はお立ち寄りくださりありがとうございました!
初参加の時は両サイドのサークルさんがお休みでぽつんとしてたのですが、
今回は両隣がいらっしゃってテンションがマックスでした。
ご迷惑おかけしてたらすみません。でも、超楽しかったです。
憧れの人にも会えたのでうれしい。
あと、お客様の中でリンク張ってくださっている方がいらっしゃったようで、
慌ててたせいでお名前聞きそびれちゃったんだぜ。悔しい。
今後の目標は動揺しすぎないことですね。前日も緊張でお腹を壊しちゃったしな!

拍手もぱちぱちありがとうございます。
また、東北からのお便りありがとうございました!
貴方の拍手で本の通販始まっていることを知りました。感謝。
楽しんで頂ければ幸いです。

お知らせ前で申し訳なかったのですが、
現在在庫切れの状態なので、手配をお願いしたところです。
書店通販で購入されたい方ってまだいらっしゃるんですかね??
需要がわからんのですが、念のためまた開始されたらお知らせしたいと思います。

インテ、宜しくお願い致します

明日はインテ!しかし大雨と雷のせいで回線が逝ったのか
ネットが使えないので、携帯から強引にアクセス!
当日は無料配布『夜と着物』と新刊『伽藍DOLL』があります。
どうぞ宜しくお願い致します!!

インテックス大阪 3号館T23α 参加します。無料配布有り



うおおおお、何か不測の事態でも起きない限り出ま・・・す!
これもすべて皆様のお心と表紙作ってくれた塩さんのおかげです。
ありがとうございます。
うへへ、表紙が素敵すぎて死ねる・・・柄も全部描いてもらったんだぜへへへ
SQのカラー切り取ってスキャンしてこれ描いてって彼女にお願いしました。
無茶な要求に応えて頂き、ありがとうございます!

内容はサンプルにあった通りですが、こんな感じです。↓

「伽藍DOLL」
雪燐・燐受け 68ページ・小説本・A5・二段組
魔神との戦いで行方不明となった燐を探す雪男。しかし一年たってもその消息は掴めなかった。
そんなある時、悪魔を売買する闇のオークションサイトで「人形」の名目で意識のない燐が競売にかけられていた。
雪男は燐を救う為、オークションへの潜入任務につく。
深山鶯邸事件とも絡んだシリアス長編ストーリー。

無料配布かつサイトにおいてある
夜とホテル
夜と雪山
「夜と雪山」・「夜とホテル」を踏まえた内容となっていますが、
読んでなくても話は通じます。

サンプルは以下の通り。
サンプル1
サンプル2


アンケートご協力ありがとうございました。
おかげさまで出すことができそうです。
しかし、実物見るまで心臓が飛び出そうなくらい不安ドキドキ・・・

あとアンケートのご要望にもあった書店通販もお願いしました。
また詳細わかったらご報告させて頂きますね。
個人通販も希望の方いらっしゃったのですが、すみません。
時間的に無理なので、書店のご利用かイベントでの購入をお願い致します。

イベント当日ですが、売り子さんがいないため開始30分ほど留守にします。
すみません、まぁ売り切れるような物でもないので気が向いたときにお越し頂ければ幸いです。

また追加のご報告あれば更新しますね~。

ちょっとそこまで


監視のない道を
ちょっとそこまで二人で歩く。


携帯電話が鳴って、メールの着信を告げる。
開けば、志摩からの連絡。
「今から遊びに行かん?」とのお誘いが。
ベットに寝ころんでいた燐は、起きあがって机で仕事をする雪男の方を見た。
時計をちらりと見れば時刻は午後11時。
雪男は燐の言わんとすることがわかったのか、首を横に振る。

「なんだか知らないけど、ダメ」
「えー、なんも言ってねぇじゃん」
「それよりも、明日の宿題やったの?」
「・・・まだ」
「だからダメ」
「いいじゃん」
「兄さん、僕が監視役なの知ってるでしょ。夜も遅いし、許可できません」

雪男の言葉に押されて、燐はうなだれた。
もう一度、ベットに横になる。
メールに返信。
「今日はダメだ。悪い」
送って、そのまま目を閉じた。返信はない。
かりかり、とドアを爪でひっかく音がした。

「ああ、クロ帰ってきたんだ」

雪男がイスから立ち上がって、ドアを開けた。
外に出かけていたクロが部屋に帰ってきたようだ。
にゃーんという声が聞こえて、クロは燐の眠るベットへ飛び上がる。
ごろごろと喉を鳴らして、クロは燐に甘えだす。
燐は、クロの喉を撫でて、また目を閉じた。
兄さん宿題は、という声に後でする。とだけ返してそのまま寝た。
朝にはやってよ。という声には聞こえなかったふりをして。

深夜、燐は目を覚ます。
横を見れば、雪男が寝ていた。時刻は午前3時。
真夜中だ。ベットから降りて、木刀を持つ。
雪男にバレないようにこっそりと支度をしていると、クロが話しかけてくる。

「りん、あそびにいくのか?おれもいく!」
「しー、静かに。雪男起こすと機嫌わりぃから静かに」

そうして、部屋を抜け出した。
ドアが閉まったところで、雪男が目を開ける。

(・・・またクロと修行に行ったんだな)

いつものことだ、バレてないとでも思っているのだろうか。
雪男はクロと会話はできないので、内容はわからない。だがおおよその予想はついた。
今は深夜だが、このことに関しては雪男は燐の行動を咎めるつもりはない。
自分も、燐に隠れて祓魔師の修行をしていたからだ。
帰ってきた時もちゃんと寝たふりをしないとなぁと考えて、雪男は目を閉じた。
もう日付が変わっている時刻だ。眠くないといえば嘘になる。
そういえば、今月のスクエアはもうコンビニでは発売されているかもしれない。
修行の帰りに買ってきてくれないかな。とふと思う。

瞼の裏に、兄がコンビニに行く姿が見えた気がした。

「奥村君遅かったな」
「志摩、おまえよくこんな夜中に待ち合わせできるよな」
「最初は11時の予定やったんやけど?」
「だって雪男がダメだっていうしよ」
「まぁそう思って、3時頃におるっていうたんやけど」
「携帯で言やいいじゃねぇか」
「だって、携帯じゃ誰が見とるかわからんし。ええやろ?」

燐と志摩はコンビニで、立ち読みをしながら会話している。
深夜のせいか、店内には眠そうに瞼をこする店員1人しかいない。
静かな真夜中の空気があった。
コンビニの外で、クロがにゃーと鳴いた。

「クロなんて?」
「今日はかにかまが良いってさ」
「よしよし、伝言役のクロ様に買うてやるわ」

志摩は読んでいた雑誌を置いて、食品コーナーに行く。
燐はその後ろ姿を見送って、雑誌の中に埋もれるスクエアを手に取った。
今日発売らしい。たぶん、雪男は買ってないだろう。
ふと思いたってそれをレジに持っていった。
二人で、コンビニから出るとクロが待ってましたとばかりに飛びついた。

「しま!おれちゃんとでんごんしたぞ!」
「おおきにークロ。ほい。かにかま」
「かにかま!」

クロの言葉は、燐にしかわからない。志摩はたぶん勘で会話しているのだろう。
携帯電話では言いにくいことも、クロだったら伝えてくれる。
志摩は食べ物をあげる代わりに、燐への伝言を頼んでいた。
その伝言も、なんてことのないものばかり。

今日の夜ちょっとだけ会おう。とか。

クロの言葉は人の目を盗んで待ち合わせする時には、とても都合がよかった。

「じゃあ、俺修行あるから」
「うん、俺も帰って寝るわ」

そうして、コンビニを後にする。
このまま燐は当初の目的通りに、クロと修行へ。
志摩はそのまま、寮に帰って寝る。
燐が修行を始める前のちょっとした時間。
それが、二人の会う時間。

「おまえ、そうまでして会いたい?」
「うん」
「クロに」
「・・・いや、クロにも会いたいねんけどな」
「おまえも物好きだよな」
「奥村君とおると楽しいしな」
「そうか?」
「うん」
「眠くないか?」
「奥村君こそ」
「俺は授業中寝るし」
「俺も帰ったら寝るからええの」

少し会って話すだけ。それだけで楽しい。
だから、真夜中でも待ち合わせして会いに行く。
燐は昼間でもできるのに、なぜ深夜なのかと理由を聞いた。

「だってさ、誰にも見られてないところで逢い引きってなんかええやん?」

それってなんか燃えん?
と言われて、燐も。まぁ内緒だからこそ少し楽しいな、とか思ってしまう。
燐は普段、雪男かシュラに監視されている。
常に行動を供にしているので、この時間は息抜きをしているようなものだ。
流石に四六時中二人と一緒というのは疲れる時もある。
きっと、携帯電話にもなにかしらの細工がしてあるだろう。
こうして会うときは携帯電話は持ってきていない。
以前言われた窮屈だぞ、というシュラの言葉も今では少しわかってきた。

だから、こうして志摩に会っているのかもしれない。

ふいに、志摩に呼ばれた。
なんだよ。と返す前に唇を塞がれる。

「おやすみ。奥村君」
「・・・お前もしかしてこれが目的なんじゃねーの」
「そうとも言う」

触れるだけのキスは何の味もしなかった。
真夜中の待ち合わせの、さよならの合図だ。

「じゃあ、俺あそこの角で曲がるわ」
「じゃ、俺は直進で」

そこまでの距離をいつもよりゆっくりと。
監視のない道を、ちょっとそこまで二人で歩く。

これが俺たちに許されたささやかな戯れ。

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]