青祓のネタ庫
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肌寒さに震えて、目が覚めた。
ぼんやりと目を開けてみるとそこには見慣れた寮の天井はない。
木のにおいも、古ぼけた埃の匂いもしなかった。
燐は痛む背中をさすりながら起き上った。
そこには、空が広がっていた。空はまだ日が昇る前で薄暗い。
体にかけていた新聞紙ががさりと揺れる。
燐は枕にしていた荷物を肩にかけた。自分の体温が残っていて少しだけあたたかい。
寮を、学園を、あの町を追い出されてどれくらいの日数が経っただろうか。
燐には携帯電話もないので、時々食糧調達のために立ち寄る店にかかっている
カレンダーで確認できるくらいだった。
燐には居場所がない。帰る場所もない。
当然、家が無いのだから泊まるところもあるわけがなかった。
漫画喫茶などに泊まることも考えなかったわけではないが、
祓魔師としての収入が途絶えた今となっては少しのお金も惜しい。
貯金は多少していたから、まだ大丈夫だけれどそれも何時まで持つかはわからない。
燐は体にかけていた新聞紙を丸めて、荷物の中にしまう。
サバイバルの技術として新聞紙をかけて寝ると温かいと聞いていたが、その通りで驚いている。
今日は公園のベンチで寝れたけれど、いつまでもここにいては警察を呼ばれかねない。
燐の容姿は悪魔であるせいで、十五歳の時から変わっていない。
いくら成人していると言っても、警察に信じて貰えず祓魔師免許で証明していたことも記憶に新しい。
それも今となってはできないのだけれど。
「車の免許くらい、取っておけばよかったなぁ」
燐には身元が証明できるものがない。そのうえ、外見は十代で止まっている。
人間社会では非常に生きにくい。だからこそ、あの世界で生きていたというのに。
そのことを誰よりもわかっていたのは、雪男だったのに。
雪男の姿を思い出して、胸が痛くなった。もう会うことはない。
会うつもりも、なかった。
燐は公園を後にする。今日はどこへ行こうか。
歩いて、歩いて、歩いて。
燐はあの町ではない何処かに行こうとしていた。
目的もない。目標もない。心の支えにしていたものは皆あの町に置いてきてしまった。
捨てざるをえなかった。
この空っぽの心を抱えて、燐は生きていくのだ。
「・・・何処に、行こうか」
何処で、生きていこうか。
それを決めるのは、まだとても難しいことに思える。
***
放浪を続けて、外で寝て。銭湯を見つければそこで疲れを癒した。
あの町を出て世間を見て回れば、皆日々働いて生きているということだった。
そこには悪魔の世界も、殺し合いの世界もない。
子供は笑っているし、大人は仕事をしている。
昔は当たり前のように見ていた光景がとても新鮮だった。
一度死線をくぐったからだろうか。その光景がうらやましい、とは思わなかった。
平和でよかったとそう思える。
だが、その光を揺るがす闇は確実に潜んでいる。
人には見えないものが、燐には見える。それは路地裏だったり、夕闇の影の中だったり。
人の悪口に潜んでいたり。と事欠かなかった。
光があるところに闇はある。だから祓魔師はその光を守るために、闇を祓っていた。
もう燐がその任務に就くことはない。一生許されることはない。
一生、養父の名誉を回復させることはできないのだ。
燐の心が揺れた。それに呼応したかのように、周囲の空気が乱れた。
今は逢魔が時だ。下手に気配を察知されてこちらに来られてはたまらない。
燐は着ていたパーカーのフードを被った。気休めだが無いよりはいいだろう。
町に人の気配はしない。家路につくもの、誰かと出かけるもの。様々だ。
その中に紛れて、燐も今日の寝床を探そうとした。
一度、公園の茂みで寝ようとするといきなり男に声をかけられた時は驚いた。
いくらで買える、と凄まれたので怖くなって男を突き飛ばして逃げたけれど、
そういう場所。というのも世の中にはあるらしい。
以来燐はきちんと下調べしてから寝床にするようにしている。
だからこそ、寝られる場所は限られるので日々難儀しているのだが。
今日はどこにしようかな。と歩いていると、声をかけられた。
「おいお前、ちょっといいか」
燐は自分に声をかけたのだとは思わず、そのまま歩き出そうとした。
すると、背後にいた人物が焦れたのか燐の肩を掴んだ。
見ればその人物には悪魔が憑りついている気配がした。
目が殺気を帯びている。どうやらリーダー格の男に声をかけられたらしい。
後ろには子分とみられる男が二人いた。
「ここいらじゃ見ない顔だなどこから来た」
不良、と呼ばれる奴らだろう。厄介な奴らに目をつけられてしまった。
それも一人は悪魔憑きだ。悪魔の目からも騎士團の目からも隠れるようにしてきたというのに。
燐はリーダーの男の手を振り払った。そのまま無言で逃げ出す。
案の定、待ちやがれと言って追いかけてきた。人通りが多いところで目立った行動はできない。
燐はそのまま路地裏に入って行った。今日の寝床にしようかと思っていた候補地だったのだが、
この際しょうがない。燐は突き当りまで来ると、後ろを振り返った。
細い路地裏をリーダー格の男が先頭で走ってきている。その顔はもはや悪魔そのものだった。
「恨むなよ」
燐はそう声をかけると、男に向かって走った。
男は急に立ち止ることもできず、燐と正面からぶつかるように対峙した。
燐は自身でつけた勢いと合わせて、男の顔面に掌底をぶつける。
勢いがあったせいだろうか。男の体が後ろに一回転して倒れ込んだ。
背後にいた子分は何が起きたかわかっていないらしい。
燐はそのまま勢いを殺さず、路地の壁に足をつけてジャンプし、斜め向かいから男の顔を蹴り飛ばした。
そのまま空中で一回転して、その後ろにいた男も勢いを殺さないまま蹴りつける。
人が面白いように宙に舞った。念のため言っておくと、着地場所はゴミ捨て場だ。
ゴミ袋がクッションになるので、重症にはならないだろう。
しかし、悪魔憑きの男は急所狙いで完全に伸びてしまっているので手は早く打たなければならない。
燐は倒れているリーダー格の男を睨み付ける。
正確には、その裏側。内部と呼んでもいいだろう。その暗闇に潜む影を、あぶり出す。
「見つけた」
言うや否や、視線で男の体を燃やした。青い光が一瞬光って消える。
男から悪魔の気配は消えていた。
以前の様に、大規模な炎は使わない。誰が見ているかわからないので、勝負を決める時は一瞬だ。
その姿を見られてはいけないので、子分の方も両方とも寝ていてもらっている。
燐は今一人だ。何かあっても誰が助けてくれるわけでもない。
誰も助けてはくれない。だから、何があっても自分一人で生きていかなければならないのだ。
燐はリーダー格の男のポケットを探って携帯電話を取り出した。
「あの、喧嘩みたいです。男の人が三人倒れてて・・・一人は顔がっ」
いかにも今来たような一般人を装う。転がっていた男の携帯からかけていることを伝えて、
名前を聞かれても偽名を答えることを忘れない。
119番を押して、この場所を伝えると燐は携帯を男に向けて放り投げた。
せっかく寝床になりそうな場所だったというのに。
今から救急車や警察が来てはおちおち眠ってもいられない。
こういうとき、身分が不安定な者というのは真っ先に狙われる。
まったく、生きにくい世の中だ。燐はため息をついて路地裏から出ようとした。
すると、路地の先に人が立っていることに気づいた。
「・・・?」
その人物は先程まではいなかった。燐は気配には敏感だ。
何処に何がいて、それがどういう者なのか。
それは今までの戦闘で見に着いてきた知識と、経験による勘だった。
やばい奴に見つかってしまった。
燐は舌打ちをする。
気配を隠すことがうまい奴は、よほどの低級が、上級。
今回は上級に当たってしまったようだ。それも、人型。最悪である。
燐は思わず腰に手をやった。そして、そこにいつもの相棒がいないことに気づいてはっとする。
倶梨伽羅は刀だ。日本では銃刀法違反という法律があるので、街中を刀を持って歩くわけにはいかない。
だからこそ、養父の形見である神隠しの鍵でいつもは倶梨伽羅を隠していた。
周囲を見ても、刀を取り出せるような鍵穴はない。
歩兵戦と、少しの炎で切り抜けられるだろうか。
顔は見えなかった。
それでも、敵は素早く燐に向けて悪意を飛ばしてきた。
魍魎の群れが燐の視界を遮る。それを全て燃やすと、魍魎の影から男が下から腕を突き出してきた。
燐はそれを身体を傾けることで避ける。
頬を少しかすったけれど、なんてことはない。
燐は男の腕を掴んで、懐に入る。そのまま投げ飛ばそうとした。
けれど、背負う前に男の体が動かなくなる。
足元を見れば、影に潜んだ魍魎が燐と男の足を地面に固定していた。
これでは男を背後に招いたようなものだ。燐は魍魎を燃やして急いでその場から離れようとする。
しかし、男の方が早かった。
燐に掴まれていた腕を振りほどき、逆に燐の腕を掴んで上に引っ張った。
身長差があるせいで、燐の体は宙に浮きそうになる。引っ張られているせいで千切れそうなくらい腕が痛い。
男は開いている手で燐の体を首から腹にかけて撫でる。
その仕草が嫌に粘着質で、思わず鳥肌が立った。
「気持ち悪ィんだよッ!離せ!!」
男は燐の声を聞いて、一瞬動きを止める。
腹を撫でていた手がそのまま首筋まで這い回って、燐の頭を覆っていたフードにかかった。
燐が止める間もなく、フードが外される。
男は露わになった燐の項に顔をうずめた。匂いを確かめるように嗅いでいる。
べろりと首を舐められた時には思わず悲鳴を上げてしまった。
変質者だ。危ない人だ。
おまわりさん。こっちです。
そう叫べたらどんなによかっただろうか。
残念なことに、都会で救急車やパトカーがたどり着くまでにはそれなりに時間がかかる。
燐が呼んだそれらも、まだ到着してはいなかった。
「若君お探ししておりました」
燐は背後を振り返る。今度は至近距離なのでよくわかった。わかりたくもなかったが。
忘れもしない。その白髪に、燐のことを若君と呼ぶその態度。
「アスタロト、お前なんでここにッ」
このまま虚無界に連れていかれてはたまらない。
燐は全身に青い炎を宿して、抵抗しようとした。それよりも先にアスタロトが動く。
燐の腹に、熱い何かが刺さった。
見れば、ナイフが刺さっていた。痛い。かなり痛い。
何の躊躇もなく、ナイフはその全身を燐の体の中に埋められている。
血が溢れ出して、口からこぼれる。
出血と痛みから、意識が遠のいていった。
やべぇ、痛い。かなり痛い。
背後から悪魔の笑い声が聞こえてきたけれど、どんどんそれも遠くなっていった。
脳裏には、別れた友達の姿と、修道院の人たち、弟の姿がよぎった。
でもその人たちは今燐の周囲にいない。誰もいない。
そして思い知る。俺は、死ぬときは一人なのだと。
自分の身元を辿れるようなものは持っていないから、どこの誰かはわからないだろう。
奥村燐の死は誰の目にも止まることもない。
友達にも、雪男にも。皆は俺が死んだことを知らずに生きていくんだろう。
それは、とても悲しいことに思えた。
誰か。血と共に口から言葉がこぼれ出た。
助けて、とは最後まで言わなかった。
倒れ込むように燐は前のめりに傾いたが、その体は背後からアスタロトが支えた。
意識のない燐を見て、アスタロトはようやく安心したようにつぶやく。
「共に参りましょう、若君。あの憎きサマエルの結界から解き放たれる時を
ずっとずっとお待ちしていたのですよ」
その声には、ナイフで燐を刺し貫いた冷酷さは感じられなかった。
反対に、恍惚とした表情が浮かんでいる。
アスタロトは血塗れの燐を横抱きに抱えると、そのまま夜の闇の中に消えていった。
遠くからは、救急車とパトカーのサイレンの音が響いている。
現場に残されていた血の量を見て、救急隊員は顔を青くした。
その血は現場に残されていた誰の血でもなく、明らかに致命傷と呼ばれるような出血量だったからだ。
話題はニュースで少しだけ取り上げられたが、
世間は不良同士の喧嘩だろうとそれほどその事件に関心を寄せたりはしなかった。
どこの誰とも知らない相手のことなど、世間ではその程度にしか見てはいないのだ。
周囲にいる人に目を向けた。
そこには人がいることがわかるのに、なぜかその人たちの顔は霞が
掛かっているかのように見えない。
燐は学校の椅子に座っているようだった。
その周囲を取り囲むように、正十字学園の制服を着た人たちが
自分に向けて何かを話しかけている。
でも顔が見えないから声も聞こえない。
仕草で、話しかけているんだろうな。ということは察することが出来たが。
燐にはそれ以上どうすることもできなかった。
筆談という手段はどうだろうか。そう思ったけれど机の上にも、中にも
あるはずのノートや筆記用具はなかった。
空っぽだ。
何故燐は自分がここにいるのかわからない。
なぁ、お前たちは一体誰なんだ。
とても親しくて忘れたくなかった人たちのはずなのに。
燐には思い出すことができない。
ふいに、背後から声をかけられた。聞き慣れた声だった。
「奥村燐君」
そこにはメフィストがいた。
けれど、そこにいつもの余裕はなかった。メフィストはどこでつけたのか。
怪我をしていたし、いつもは白い服もボロボロだ。
所々、血が飛び散っている。戦いをしていたことは明白だった。
メフィストは燐に手を伸ばした。
でもその手は燐に届くことはない。それでもわかっていてやっているようだった。
「必ず、迎えに行きます。だから待っていてください」
おかしなことを言う奴だ。
それではまるで、俺がどこかに行ってしまった様じゃないか―――
燐の記憶はそこで途切れた。
燐が目を覚ますと、豪華な天井が見えた。
天井画、というのだろうか。オリーブの木々が描かれている。
何故オリーブなのだろうか、西洋の画風だし詳しい意味まではわからない。
料理で使うこともあるので知っていたというくらいのことだった。
起き上がって周囲を見渡せば、青色の調度品が部屋の中にはそろっていた。
ベッドは天蓋付で、真っ白のシーツで覆われている。
窓もある。燐はふらふらと窓の脇に立った。
時刻は夜。空には青白い月が浮かんでいる。夜風に当たりたい。
何気なしにそう思って、窓に手をかけた。
途端に、手がばちん。という音を立てて窓から弾かれてしまった。
よく見れば、薄く光っている。もしかして結界の類だろうか。
そうだ。ここからは出られないんだっけ。
燐は思い出した。
外には深い森が広がっていて、周囲に町も村もない。
森の中に建てられた古城。そこで燐は生まれた時から過ごしている。
古城の中でも、この部屋の中くらいしか燐は知らない。
外の世界のことは知らないはずなのに。
燐は頭にそっと手をやった。
何故夢の中に出てきた人たちの格好が、正十字学園の制服だとわかったのだろうか。
外に出たことがないなら、本で見たのだろうか。
それも怪しい。部屋の中には燐が退屈しないようにと本が置いてあるけれども、
あまり読んだことはなかったからだ。
そもそも、本を読んだりすることも好んではいなかったし。
燐は部屋の中を少し歩くと、姿見があった。
そこで初めて自分の姿を確認する。首を傾げるような格好だった。
青色の羽織に、金色の装飾。なんだこれ。どこの高貴な身分の服装だ。
自分が持っているといえば精々Tシャツにジャージのズボンくらいだろう。
燐の意識と、目の前に広がる光景に齟齬がありすぎる。
燐は首を傾げる。しかし、何かを思い出そうとすれば頭の奥で
まばゆい光がチカチカと光って邪魔をするのだ。
燐がふらつきながらベッドに座ると、丁度ノックが聞こえてくる。
燐の返事を待たずに、扉は開いて外から誰かが入ってくる。
燐は頭痛のせいで俯いていたが、その人物を確かめるために顔を上げなかった。
いや、正確には上げることが出来なかった。
「体調はどうですか、燐」
肌をピリピリと刺激するこの威圧感。燐はごくりと喉を鳴らした。
問いかけられているので、答えたくなくても答えなければならない。
「ルシフェルが心配することじゃ・・・」
言って、燐は首を掴まれてベッドに押し付けられた。
といっても抑える腕や力自体は、とても軽いものだ。ルシフェルは身体が弱い。
元々悪魔は体を持たない生き物だ。物質界に来ようと思ったら憑依体を見つけなければならない。
だが、虚無界の第一権力者の力に耐えられる器など、数千年に一人くらいだろう。
だからルシフェルは最初に憑りついた人間の体を今もなお使用している。
人の体とは脆いものだ。むしろ今までよく持ったといえるだろう。
現に、燐を抑える手からじわじわと血が滲んできている。
仮面の奥は、どんな顔をしているのだろうか。
燐はルシフェルの顔を直視することができなかった。
それは、力の差による恐怖そのものだった。
怯える燐に言い聞かせるようにルシフェルは燐に呟いた。
「燐、我らの末の弟よ。長兄をそんな風に呼び捨てにするなどいけない子だ」
「に、兄様でも・・・」
「そうです、慣れないでしょうが。使っていくうちに慣れますよ」
いい子です。と頭を撫でられたけれど少しも嬉しくはない。
むしろ嫌悪感ばかりが沸いてくる。気持ちが悪い。
こいつの良いようにされている自分が許せない。
それを知ってか知らずか。ルシフェルは燐の顔を覗き込むように見てきた。
視線を無理やりに合わせられる。
「私が、怖いですか?」
仮面の隙間から、血が滴り落ちてきた。
皮膚も、形を保っていることが限界なのだろう。
燐の頬に血がすべり落ちていく。とても、甘いにおいがした。
燐はルシフェルが怖い。でもそのまま答えることは癪だ。
「離れてください」
体に障りますよ、と言って顔を逸らした。
ルシフェルは満足はしていないようだったが、納得はしたらしい。
燐の頬についた自分の血を戯れに指で伸ばす。
そのまま指を燐の首にすべり落としていくと、燐の顔が青くなった。
「い、いやです。やめてください」
燐はルシフェルの手を握った。本当ならばこの男を突き飛ばして今すぐここから逃げ出したい。
逃げ出して―――あの場所に帰りたい。
燐の記憶に囁く声が甦った。
『必ず、迎えに行きます。だから待っていてください』
メフィスト。
いや、違う。あの悪魔の名前は何だっただろうか。
燐が抵抗の手を止めると、ルシフェルがにやりと笑った。
「兄に食事をさせないなど、悪い弟だ―――」
そう言って、ルシフェルは燐の首に噛みついた。
悪魔の牙が燐の首を犯して、その血液を奪い取っていく。
「うぁ、止め!いたい、痛いッ!」
「すみません燐、ですがどうか我慢を―――」
口ではそう言っておきながらルシフェルは燐の血を啜ることを止めようとしなかった。
身をよじって逃げる燐を追って、何度もその首に噛みついた。
お互いの血が混じり合って、飛び散りあい。ベッドは血塗れになっていた。
悪魔の交わりのような、光景だった。そんな恐ろしい食事風景でありながら、
紳士の様に振る舞うルシフェルが逆に恐ろしい。
温かい血を受けて、ルシフェルの体は徐々に回復していった。
反対に燐の顔色はどんどん青くなっていく。
普通の悪魔なら消滅しているだろうが、耐えているのはひとえに魔神の落胤であり
青い炎を継いでいるという特殊な体質だからだろうか。
力を奪われて燐の手はくたりとベッドに落ちた。失血によるショックで意識を失ってしまったらしい。
ルシフェルはそっと燐の首を舐めて、最後の一滴まで味わうと唇を離した。
崩壊しそうであった皮膚は原型を保っているし、失った血も補給できた。
ルシフェルの体は、これでしばらくは持つだろう。
燐はぐったりと体をベッドに沈めていた。
気まぐれに奪った次男のおもちゃだが、想像以上に使えるようだ。
「貴方はいつも、私が持っていないものを持っていますねサマエル」
だからこそ、私と貴方は相容れないのだけれど。
独り言をつぶやいて、燐から離れた。失血の為、しばらくは目を覚まさないだろう。
燐がこの古城に閉じ込められているのは、そのせいだった。
ルシフェルの体を保たせるための、食事。
魔神の血筋であり、回復力も高い。なによりその血は悪魔の喉を潤した。
今では燐はルシフェルに欠かせない存在となっている。
「しかし、あのサマエルがムキになるなど珍しい」
お気に入りのおもちゃが盗られて、そんなに悔しかったのでしょうかね。
兄としては、弟に悪いことをしてしまいました。
そう思いながらも、ルシフェルは反省などしていない。
寝ている燐の髪を撫でて、その頭を掴んだ。
途端に光が湧き上がって燐の頭を包み込む。何度も行っている、燐の記憶の改竄だった。
下手に思い出してここから出て行かれては叶わない。
記憶を奪い、血を抜いて無理やりに一所に縛り付けている。
兄に弄ばれる弟の姿に、ルシフェルは同情したような声で囁いた。
「サマエルに囲われて、私に捕らわれて。我らの末の弟はまるで哀れな小鳥のようだ」
その身に秘めるは全てを焼き尽くす業火だ。
その火をどれだけ抑え込めるだろうか。いつか私を焼くだろうか。
それもまた一興。とルシフェルは燐の部屋を後にした。
指を鳴らして、燐の部屋を取り囲むように光の檻を作り出す。
その日を、楽しみにしていようか。
燐は目を開けた。ぼんやりとした風景。また学校の椅子に座っているようだった。
その周囲を取り囲むように、正十字学園の制服を着た人たちが
自分に向けて何かを話しかけている。
相変わらず顔は見えない。
その中の一人の手をおもむろに握った。
その手の平には、銃を撃つことで出来るタコが何個もあった。
固い皮膚だ。その手を握って燐は無性に泣きたくなった。
皆の手を一人一人握っては確かめた。
これは、俺の知っている人だ。会いたい。皆に会いたい。
ここから出たい。
燐は後ろを振り返って。けれどそこにはメフィストの姿はなかった。
ここは燐の夢だから全てが思い通りにできるはずなのに、メフィストはいくら望んでも
姿を現してくれなかった。迎えにいきます。その言葉だけを残して彼は去っていった。
もしかして、夢を渡ってきてくれたのかもしれない。
燐はふと、あのオリーブの天井画を思い出した。目覚めて初めに見るものがあれしかないからだ。
後何夜、あの天井画を見ることになるのだろうか。それは誰にもわからなかった。
天井に描かれたオリーブ。旧約聖書によれば、平和と友愛の象徴とされている。
全く持って、皮肉な絵だった。
「頼むから早く、来いよ」
何度も何度も燐は血を抜かれて力を奪われている。いくら回復するからと言っても
限界はあるのだ。体は日に日に衰弱していっている。
誰かの名前を呼ぶことも許されず。燐は幽閉されていた。
光は、どんどん奪われていく。家族の名前も、友達の名前も思い出せない。
唯一覚えているのが、あの悪魔であることが癪だけど。
唯一縋れる名前を、夢の中で何度も呼んだ。
「 」
呟いた言葉は、言葉にならなかった。
メフィストから聞いた彼の本名は、やはり思い出すことはできなかった。
長かった出張も終わりましたが、仕事のデスマーチが止まりません。
それでも、SQショックにいてもたってもいられなくなりました。
なにあれ・・・すごく・・・メフィ燐ですッ 熱く滾って変な声でました。
またこの衝動をしたためなければならない!
あと、出張の間に通販も開始されていたようです。
遅くてすみません。もしよろしければご利用ください。
さよならブルートレイン通販
Return通販
先月号のショックで書き上げた夏コミの無配です
ネタバレ有りの為注意。
お前の命は、あいつに生かされた命なんやで。
子供のころから何度も聞いてきた言葉が頭に響く。
志摩はその言葉を聞くと何も言うことができなくなった。
会ったこともない、知らない兄の話を聞いて、自分にどうして欲しいというのだろう。
立派になれ?ちゃんとしろ?そんな言葉聞き飽きた。
言ってやりたかった。俺じゃなくて兄貴が生きとったらよかったんやないの。
俺にはそんな責任とか重すぎる。俺はもっと楽に生きたい。もっと楽しいことをして生きていきたい。
それの何があかんのや。苦しいことから逃げて、何が悪いんや。ずっとずっと。そう言ってやりたかった。
「だから、俺は楽な方に行こうと思ってん」
志摩は抱えていた出雲を、イルミナティ側の人間に引き渡した。
燐はやめろと叫ぶが、出雲はそのまま連れていかれてしまう。抵抗しようとする燐を、志摩の黒い炎が突き刺した。
身体を刺し貫かれてしまえば、身動きは取れない。
自分も炎を宿しているが、この炎は質が違う感じがする。
黒くて、どろどろしてて。まるで。燐は倒れたまま、志摩を睨み付ける。
「流石奥村君、感じる?俺の炎のこと」
志摩を現しているかのような、黒い炎。魂を、心を焼き尽くすような痛みに耐えながら燐は叫ぶ。
「なんでだよ」
なんでお前がスパイなんだ。燐は信じたくなかった。
出雲が連れていかれそうになっている。その光景を目にした時、燐は真っ先に刀を抜いて、
出雲を連れ去ろうとしたイルミナティの男に襲いかかった。しかしその刃を止めたのは、志摩だった。
「志摩!?なんでだッ」
動揺している燐に黒い炎が襲いかかる。燐は青い炎で防御した。
黒い炎は青い炎に遮られては近づくことができないらしかった。
炎と炎のぶつかり合い。志摩は言った。
「この炎を燃やされるとな。俺、死んでまうねん」
聞いて、燐の炎の勢いが収まった。刀を持つ手が震える。
その隙に、志摩は黒い炎で燐の体を絡め取った。
自身の危機に反応したのか。
青い炎は燐の意志に反して黒い炎を焼き尽くそうとする。止めたのは、燐だった。
「ダメだ!」
志摩を殺してしまう。そう思い、倶梨伽羅を鞘に納める。焔は一瞬にして消えていった。
志摩はにやりと笑って夜魔徳を使って燐を拘束する。
手と足。体を上から押さえつけられ、燐は地面に縫い付けられた。志摩は燐に話しかける。
「ごめんなぁ。出雲ちゃんは頂いてくわ」
「・・・てめぇ、本当に」
燐の言葉に志摩は笑って頷く。
「そうやで、俺はスパイ。敵側の人間や」
奥村君達上手に騙されてくれて助かったわ。そう志摩は告げる。
燐は納得ができなかった。勝呂達とあんなにも仲が良くて。
不浄王の時には一緒に戦った仲間なのに。
そうだ、京都の。明蛇宗の人たちともあんなに楽しそうに。
家族がいて。友達がいて。そんな世界を捨てて、暗い世界を選ぶ志摩を燐は理解ができない。
「お前、家族や。勝呂達のことも裏切ってたのかよ」
家族。その言葉に志摩の笑顔が消えた。
「家族?そんなもんクソくらえや」
志摩は家族に、家に縛られてきた。長男は、志摩を守って死んだ。
よくできた兄で、家を継ぐことに何の障害もない立派な人だった。らしい。と志摩は聞いている。
そう、志摩は兄に会ったことがない。会ったこともない家族に、生まれた時から縛られていた。
聞いた話では、この夜魔徳は死んだ兄が使役できる悪魔だった。
志摩の家に憑く悪魔。勝呂家のカルラと原理としては同じだろう。
家を継ぐ者が継いでいく悪魔。家督の象徴の様なものだ。
兄は夜魔徳を、自身ではなく。まだ見ぬ母の腹にいる弟へと譲った。
そして魔神の炎に焼かれて死んだのだ。だから志摩はこうしてここにいる。
「…恩着せがましい。この力譲ってくれなんて。そんなこと頼んどらんわ」
志摩は恨めしそうに黒い炎を見た。本当に、自分の内面を移すような炎だ。
燐の青い炎が美しく全てを燃やす炎なら、自分の炎は心を砕く薄暗い炎。
お前の命は、あいつに生かされた命なんやで。
子供のころから何度も聞いてきた言葉が頭に響く。
志摩はその言葉を聞くと何も言うことができなくなった。
会ったこともない、知らない兄の話を聞いて、自分にどうして欲しいというのだろう。
立派になれ?ちゃんとしろ?そんな言葉聞き飽きた。
言ってやりたかった。俺じゃなくて兄貴が生きとったらよかったんやないの。
俺にはそんな責任とか重すぎる。俺はもっと楽に生きたい。もっと楽しいことをして生きていきたい。
それの何があかんのや。苦しいことから逃げて、何が悪いんや。ずっとずっと。そう言ってやりたかった。
「だから、俺は楽な方に行こうと思ってん」
これが無ければ、志摩はもっと自由に生きられたのかもしれないのに。
勝呂の家を守ることも、悪魔と戦うことを強いられることもなかったはずだ。
こんな道を選ばなくても、よかったはずなのに。
「お前、本当にこの道が楽って思ってんのかよ」
「…思ってへんよ」
「だったら」
「もう戻られへんのよ」
黒い炎がまた燐を刺した。燐が低く呻く。かなりの痛みだろう。
この炎は悪魔の器ではなく、魂を燃やし尽くすもの。
内部から甚振られる痛みはどれほどのものか。
耐えられるのも燐が魔神の落胤という特殊な立場だからだろう。
炎を出さないようにはしているが、内部では青い炎が黒い炎の侵入を阻止しようとしているはずだ。
それにしても。と志摩はため息をつく。
燐は自分に。志摩に害が及ぶとわかった途端に、青い炎を収めた。
本当は焼き尽くしたい本能を抑え込んでまで耐えている。
馬鹿だ。この同級生は本当に馬鹿だ。
志摩がうそつきなことを知っている癖に、その言葉を信じているなんてとんだ大馬鹿だ。
志摩は言った。
「奥村君って優しいなぁ。反吐が出るわ」
燐の態度は力ある者故の優しさだ。人よりも力があるから。
人よりも特殊な力を持っているから。全てを壊す力があるから、誰よりも人にやさしくできる。
志摩には燐の優しさがまぶしいものであると共に、どうしようもなく憎い。
恐らく、人が彼を恐れる理由もそこからだ。人は弱いからこそ、誰よりも人に厳しく、人を切り捨てる。
燐は悪魔だ。悪魔だからこそ人にやさしく寄り添える。
人が憧れる人間という者に一番近いのが悪魔だなんて。本当に、笑えない。
志摩は父親から譲り受けた錫杖に黒い炎を灯した。
その矛先を、燐の心臓に当てる。
「ああ、そうや。違うわ」
錫杖を燐の身体から離して、手の先。燐が握りしめている倶梨伽羅に向けた。
そこには燐の悪魔の心臓が封印してある。全ての情報は、志摩に筒抜けだ。
仲間の手の内は知っている。
誰よりも近くにいたからこそ知っている。
「狙うなら、ここやんな」
黒い炎が倶梨伽羅を包めば、反射的に燐の体と刀が青い炎に包まれた。
本能的にまずいと感じているのだろう。悪魔の心臓を壊されれば、いくら上級悪魔といえども死ぬ。
悪魔の急所を志摩に壊されようとしている。
燐はもがいてなんとか黒い炎から抜け出そうとしているが、夜魔徳がそれを許さない。
「俺を殺したら、坊や子猫さんから奥村君すごく恨まれるやろうな」
例えばここで俺と奥村君が戦っとるとこ見られて、俺が奥村君が暴走した。
助けてって言ったら、たぶん騎士團側は俺の言い分を信じるやろうな。
だって俺人間やし。坊たちに必死に訴えてどっちの言い分信じるかやってみる?
きっとおもろいやんな。その想像がついて、少し笑う。
自分の嫌味な言い方にも嫌気が差す。燐は苦しそうに息をしながら志摩に言った。
「お前、自分の事嫌いなんだな」
「ああ大嫌いやで」
こんな風にしか生きることのできない自分が嫌いだ。
だからイルミナティに入ったのかもしれない。
イルミナティにはそんな輩ばかりだ。
世界を恨んで自分を嫌う。そんな集団ばかりだと思う。
「でも俺も皆もお前のこと好きだよ」
頼むから、戻ってこいよ。
聞いて、志摩は錫杖を倶梨伽羅に突き刺した。
黒い炎が倶梨伽羅を貫く。燐の体ががくりと力が抜けて、動かなくなった。
青い炎がろうそくの火が消えるかのように消えていく。
「奥村君…」
話しかけても燐は動かなかった。触れた体は冷たい。
「馬鹿やな、俺のこと燃やしたくなくて自分が刺されるとか。本当に馬鹿やな」
うそつきな自分の言葉を信じなくてもよかったのに。
錫杖をどかそうとすると、悪寒がした。命が脅かされるような、そんな危機感。
「夜魔徳くん!」
使い魔に声をかけて、急いでその場を離れる。
夜魔徳も状況のまずさを理解したのだろう。志摩を覆うように黒い炎を発動させる。
燐の体から、火柱のような青い炎が巻き上がった。燐に意識はない。
炎の勢いに支えられて倒れていた体が起き上がった。ぼんやりとした瞳でこちらを見ている。
『まずいぞ、あの炎には宿主の意識がない。悪魔の本能に従って、命を脅かす何物をも破壊する』
「えええ!?あかんやんまずいやん!」
志摩はとんでもないものを呼び起こしてしまったらしい。
魔神に通じる炎の意志を敵に回しては、勝てるわけもない。
燐の意識が無いのなら、志摩など一瞬で灰にさせられる。
魔神の炎は物質界、虚無界のどちらにも干渉する特殊な力だ。
こうなっては分が悪い。
「目的も果たせたし、とんずらやな」
志摩は夜魔徳に捕まって、その場を離れた。
すると、志摩がいた場所に青い炎の塊が降ってきた。あと少し離れるタイミングが遅かったとしたら。
そう考えて、ぞっとする。
やはり、奥村燐の存在は物質界のイレギュラーだ。
志摩に命令を与える上役もそこは十分すぎるほど理解はしているだろうが。
イルミナティの組織に必要な出雲。その先にある目的に燐も絡んでいる。
ここで彼を連れていくこともできただろうが、そうなればメフィスト=フェレスが黙っていないだろう。
時間を操る悪魔を敵に回すのは得策ではない。
現に、イルミナティが作った虚無界の門を周辺の時間を停止させることで止めたような悪魔だ。
次元が違う。
彼は燐の存在を守るためにあらゆる手を尽くしている。
メフィストがいなければ燐は物質界で生きていくことは難しい。
志摩は眼下に広がる光景を眺めた。学園祭の夜。普段とは違った風景だ。
提灯や雪洞の灯りに包まれて、町は騒いでいる。人が笑っている。
こんな戦いがあることなんて知らずに、普段通りの日常が過ぎていくのだ。
「くだらんわ」
だが、それこそが志摩が求めてやまないものだった。
誰に縛られるでもなく、捕らわれるでもなく過ぎていく日常。
この学園で過ごした日々は間違いなく楽しかったと言える。
例え皆を騙していたとしても、その思いだけは本物だ。
志摩はこの学園の裏側も知っていた。知っていたからこそ強く感じる。
まさしく、この学園は籠の鳥だ。出雲や、燐が囲われている牢獄のような町。
今日この町から、志摩は去っていく。
「またな奥村君、この道の行く先で待ってるで」
志摩の表情は、黒い炎の影に隠れて見えなかった。
***
燐が目を覚ますと、周囲は騒がしかった。
祓魔師達が慌ただしく現場検証を行っているし、救急車も来ている。
担架に乗せられて、自分は運ばれようとしているらしい。視線を横に向ければ雪男と目があった。
「兄さん!」
不安そうな顔をしていた。燐の目が覚めるのかどうか。
気が気ではなかったのだろう。自分たちは二人だけの家族だ。
一人を失ってしまえば、本当にひとりぼっちになってしまう。
燐は問いかけた。
「出雲は、志摩は…?」
雪男は口を噤む。それが全てを物語っていた。ああ、彼は去ってしまったのだ。
昨日まで近くにいて、寮の部屋にも遊びに行って。一緒に女の子に声をかけたり、学園祭を楽しんだり。
出雲にも悪いことをした。彼女は燐の呼びかけに答えて、店を手伝ってくれようとしていたのに。
出雲を守れなかった。
志摩を止めることもできなかった。
「ちくしょう」
悔しい。裏切られた思いは強い。
それでも何もできなかった自分が悔しい。
何かをしていれば止めれたのではないか。そんな思いが止まない。
「兄さんのせいじゃないよ」
たぶん、誰のせいでもない。どうしてもっと簡単に生きれないのだろうか。
この世界は不自由な事ばかりだ。
皆で笑っていられる世界。そんな日が続くことを望んでいただけなのに。
雪男はそっと慰めるように燐の手を握る。
志摩は何でも持っているように思えた。あたたかい家族、騒げる友達、
祓魔の家系だったとしても他と何も違わない。
「ひとりぼっちの寂しさだって、知らないくせに」
家族や友達が周りにいてくれることを、疎ましいと思うことすら燐には羨ましい。
悪魔だと罵られて、人に嫌われてきた燐にとっては。
悪魔の尻尾だって、牙だって、青い炎だって持ってないのに。
燐がなりたくてしょうがない人間なのに。
アイツはどこまで性格が曲がっているのだろうか。
燐は志摩にされた仕打ちを思い出して、ふつふつと怒りが沸いてきた。
「俺にしたこと。倍返しにしてお返ししてやる」
「温いね。僕も手伝って百倍にしてあげるよ」
思い知らせてやる。と雪男の眼鏡がきらりと光った。
その光景をそっと見なかったことにした。
志摩はさよならとは言わなかった。また、と言っていた。
だから燐はまた志摩に会う。出雲も取り返さなくてはならない。
彼女には直接危険な目に遭わせてしまったことを謝らなければならない。
志摩に会う。そして出雲を取り返す。
今度の敵は、昨日の友達だ。
もし次に会えたなら。今度こそ言えなかった言葉を言ってやる。
ぐだぐだと色々言っていたが、燐が志摩に告げる言葉はただ一つ。
「甘えるな」
ついでに一発殴ることも忘れないでおこう。
イベントでの差し入れありがとうございました!
そして夏コミで生まれて初めてお手紙頂いたので嬉し死にするかと思いました。
しかし夏コミから戻ってきて、インテも終わって、すんごい急ぎで書店納品の手配も
してきたのですが、死にそうなのもサイトに取りかかれないもろもろも
今週からまた長期出張に行ってしまうからなのですこんばんわ!!(大汗
出張準備がまだできてません。なんてこったい。
しかも試験と被るダブルパンチです。死んだ。
日常生活が慌ただし過ぎて非常にすみません。
インテ終わったら落ち着くと思ってたのに・・・orz
取り急ぎご質問だけ返させて頂きます。
書店委託につきましては、以前お問い合わせがありましたKブックスさんに
今回はお願いしてみました。
そのうち?更新されると思いますので、通販をご利用の方はよろしければどうぞ。
Retuen、さよならブルートレインの両方を預けております~。
また戻ってきたら、リンクもつなげるようになる、はず!お知らせしたいこといっぱいです。
2013/08/19 20:49
夏コミ、インテお疲れ様です。いつもご本楽しく拝見しています~の方
お返事遅くて申し訳ありません。本のご購入誠にありがとうございます!
ご質問にありましたイベントでの本のお値段をご連絡させて頂きます。
Retuen ¥1200
さよならブルートレイン¥500
となります。お友達さんにもありがとうございますとお伝え頂ければと思います・・・//////
本を買って、読んで下さる方がいることは本当に幸せなことだと思っています。
少しでも、楽しんでいただけるように精進してきますので、どうぞよろしくお願い致します。
ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております(^^)
人が殺せるくらい分厚い本を一回は作ってみたいですね。
そんな夢を見ながら、出張に行ってまいります。行くまでにこれそうな時があればまた汗
今回は前回より更に長い出張となり、SQの発売日にも自宅には帰れません・・・
なんとか抜け出してSQ買えないものかすんごい悩んでます。
青祓ないと死ぬ。ネタバレ怖くてネット絶ちとかもっと死にます。
色々バタバタしてますが、また帰ってきますのでーー!!