忍者ブログ

CAPCOON7

青祓のネタ庫

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

僕が日常に帰るため

銃に、弾を込める。
もう何回繰り返しただろう。
悪魔が次々に湧いてくる。
それをゲームかなにかのように機械的に撃ち殺していった。
もう何回繰り返しただろう。
悪魔を殺す引き金を引くことを。



今日は帰るのがとても遅くなってしまった。
学園の寮で一緒に暮らし始めてから、はじめての長期任務だった。
いい加減、携帯食じゃなく美味しいご飯でも食べたい。
ここ数日で何体悪魔を殺したことだろう。
日常からかけ離れた生活を続けたせいで、心も身体も荒んでしまった。
背後で、音がした。
雪男は反射的に銃を引き抜き背後に向ける。
なんてことはない。空き缶が風で転がっただけのことだ。
疲れているのだろう。
雪男はため息をついて重い荷物を抱えなおす。
3日も帰れなかったので、兄の様子が心配だ。
理事長に変なことされていなければいいのだが。


雪男は男子寮の前まで着くと、3日前と寮の様子が違うことに気づく。

(電気がついてない・・・)

もう寝てしまったのだろうか。他の建物と比べて、寮の明かりの量は明らかに違う。
どの部屋も、玄関の電気すらついていないのだ。
雪男は腕時計で時刻を確認した。午後7時。兄も寝るにはまだ早い時間だ。
留守にしているのだろうか。でも、塾はもう終わっている時間だ。
雪男は首をかしげながら、荷物を抱えなおした。
とりあえず、部屋まで帰って荷物を置かないと重くてしょうがない。
視線を兄と暮らす部屋に向ける。
一瞬、青い光が灯って消えた。

「兄さん?」

青い電光など、寮には設置されていない。
なら、あの青い光はなんだ。
雪男は急いで玄関をあけた。辺りはしいんと静まりかえっている。
自分達二人しか住んでいないので当然だ。
でも、この静けさと青い光に胸騒ぎがした。



雪男は玄関に荷物を置く。いつでも敵が来たとき反撃できるように。
(屍が差し向けられていないといいんだけど)
あの時も停電していた。いや、だめだ。考えるために立ち止まるな。
嫌な予感を拭うためには行動あるのみ。
雪男はゆっくりと部屋に向けて歩く。ぎしぎしと古くなった床板が軋む。
真っ暗だ。階段の電気もついていないなんて、ブレーカーが落ちてしまったのだろうか。
目を凝らしながら前に進む。月明りの中、ほこりが舞うのが見えた。
1つ深呼吸する。
古い、ほこりの臭いの中に、なにかが焦げる臭いが混ざっている。

「火事か!?」

雪男は走り出した。
部屋のドアを開ける。
いきなり、部屋の中からなにかが振り下ろされた。雪男はそれを銃で受け止めていなす。
硬い。棒のようなものだ。
攻撃されて反撃しないわけにもいかない。
雪男は相手に近づいて胸倉を掴んで、思いっきり壁に叩き付けた。
ゴン、とい鈍い音が部屋に響いた。
相手の力が抜ける様子がわかる。
「・・・あ」

壁に身体を預けて、ぐったりする様子を見てはじめて気づく。

「兄さんごめん!」

頭を思いっきりぶつけたので、完全に落ちている。
敵かと思っていた。だって、中から攻撃されればそう思うだろう。
でも、言い訳したい相手は伸びている。
雪男は伸びた兄を抱えて、ため息をついた。
疲れて帰ってきてみれば、余計疲れることが待っていた。
そこで、机の上に置かれているものに気づいた。



「で、なにか言いたいことは?」
「ごめん、兄さん」

雪男は素直に謝った。机の上にはできたてのチャーハンが置かれている。
ことの次第はこうだ。
雪男が寮に着いた頃、ほとんど同時期に停電が起きてしまった。料理を作っている最中だった燐は、
手元がわからないまま火をつけるのに抵抗があった。
火事になっては大変だからだ。

「でも、青い焔出してチャーハン焼くのはどうかと思う」
「そこは俺が悪かった。すまん」

で、後は焼くだけだったので、青い焔を出して一気にチャーハンを仕上げた。
右手にフライパン。左手に青い焔。火力は初めちょろちょろ中パッパ。
サタンが見れば泣いてしまいそうな光景だ。
雪男が見た青い光の原因がコレ。
チャーハンを皿に移した後、分電盤に向かおうとしたところで燐は気づく。
誰かがこの部屋に近づいている。ネイガウスのこともある。
警戒した燐は木刀を持って侵入者を撃退しようとする。
そこを、逆に雪男に撃退されてしまった。
お互いただの勘違いだった。
停電も、分電盤のスイッチがおかしくなっていただけだ。
警戒しすぎることは悪くはないが、冷静になることも必要だと二人は実感する。
「頭いてぇ」
「ごめんって兄さん」


明るい部屋のなか兄弟で、食卓を囲む。
「まぁいいから、早く喰えよチャーハン冷めちまうぞ」
「え、これ兄さんのじゃないの?」
「俺はもう食ったんだよ」

チャーハン作って待っててくれたのに、本当に悪いことした。
雪男はうな垂れながら、チャーハンを口に入れる。
ほっこりと美味しい、携帯食なんかじゃ味わえない美味しさ。
食べなれた兄の料理の味だ。

「これ、焔で作ったんじゃなかったならもっと素直に味わえたのにな」
「おい、俺の火力技術を褒めろよ」
「そもそも、焔使っちゃダメって言ってるでしょ」
「でも、うまいだろ」
「・・・悔しいことに」

雪男は、日常に帰ってきたことを実感する。
兄の作ってくれたご飯を食べること。
ささやかな幸せが、悪魔を殺し続けていた昨日を遠く感じさせてくれる。



任務から帰ってくる度に、こうして労わってくれる兄の存在に感謝した。

PR

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]