青祓のネタ庫
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銃に、弾を込める。
もう何回繰り返しただろう。
悪魔が次々に湧いてくる。
それをゲームかなにかのように機械的に撃ち殺していった。
もう何回繰り返しただろう。
悪魔を殺す引き金を引くことを。
今日は帰るのがとても遅くなってしまった。
学園の寮で一緒に暮らし始めてから、はじめての長期任務だった。
いい加減、携帯食じゃなく美味しいご飯でも食べたい。
ここ数日で何体悪魔を殺したことだろう。
日常からかけ離れた生活を続けたせいで、心も身体も荒んでしまった。
背後で、音がした。
雪男は反射的に銃を引き抜き背後に向ける。
なんてことはない。空き缶が風で転がっただけのことだ。
疲れているのだろう。
雪男はため息をついて重い荷物を抱えなおす。
3日も帰れなかったので、兄の様子が心配だ。
理事長に変なことされていなければいいのだが。
雪男は男子寮の前まで着くと、3日前と寮の様子が違うことに気づく。
(電気がついてない・・・)
もう寝てしまったのだろうか。他の建物と比べて、寮の明かりの量は明らかに違う。
どの部屋も、玄関の電気すらついていないのだ。
雪男は腕時計で時刻を確認した。午後7時。兄も寝るにはまだ早い時間だ。
留守にしているのだろうか。でも、塾はもう終わっている時間だ。
雪男は首をかしげながら、荷物を抱えなおした。
とりあえず、部屋まで帰って荷物を置かないと重くてしょうがない。
視線を兄と暮らす部屋に向ける。
一瞬、青い光が灯って消えた。
「兄さん?」
青い電光など、寮には設置されていない。
なら、あの青い光はなんだ。
雪男は急いで玄関をあけた。辺りはしいんと静まりかえっている。
自分達二人しか住んでいないので当然だ。
でも、この静けさと青い光に胸騒ぎがした。
雪男は玄関に荷物を置く。いつでも敵が来たとき反撃できるように。
(屍が差し向けられていないといいんだけど)
あの時も停電していた。いや、だめだ。考えるために立ち止まるな。
嫌な予感を拭うためには行動あるのみ。
雪男はゆっくりと部屋に向けて歩く。ぎしぎしと古くなった床板が軋む。
真っ暗だ。階段の電気もついていないなんて、ブレーカーが落ちてしまったのだろうか。
目を凝らしながら前に進む。月明りの中、ほこりが舞うのが見えた。
1つ深呼吸する。
古い、ほこりの臭いの中に、なにかが焦げる臭いが混ざっている。
「火事か!?」
雪男は走り出した。
部屋のドアを開ける。
いきなり、部屋の中からなにかが振り下ろされた。雪男はそれを銃で受け止めていなす。
硬い。棒のようなものだ。
攻撃されて反撃しないわけにもいかない。
雪男は相手に近づいて胸倉を掴んで、思いっきり壁に叩き付けた。
ゴン、とい鈍い音が部屋に響いた。
相手の力が抜ける様子がわかる。
「・・・あ」
壁に身体を預けて、ぐったりする様子を見てはじめて気づく。
「兄さんごめん!」
頭を思いっきりぶつけたので、完全に落ちている。
敵かと思っていた。だって、中から攻撃されればそう思うだろう。
でも、言い訳したい相手は伸びている。
雪男は伸びた兄を抱えて、ため息をついた。
疲れて帰ってきてみれば、余計疲れることが待っていた。
そこで、机の上に置かれているものに気づいた。
「で、なにか言いたいことは?」
「ごめん、兄さん」
雪男は素直に謝った。机の上にはできたてのチャーハンが置かれている。
ことの次第はこうだ。
雪男が寮に着いた頃、ほとんど同時期に停電が起きてしまった。料理を作っている最中だった燐は、
手元がわからないまま火をつけるのに抵抗があった。
火事になっては大変だからだ。
「でも、青い焔出してチャーハン焼くのはどうかと思う」
「そこは俺が悪かった。すまん」
で、後は焼くだけだったので、青い焔を出して一気にチャーハンを仕上げた。
右手にフライパン。左手に青い焔。火力は初めちょろちょろ中パッパ。
サタンが見れば泣いてしまいそうな光景だ。
雪男が見た青い光の原因がコレ。
チャーハンを皿に移した後、分電盤に向かおうとしたところで燐は気づく。
誰かがこの部屋に近づいている。ネイガウスのこともある。
警戒した燐は木刀を持って侵入者を撃退しようとする。
そこを、逆に雪男に撃退されてしまった。
お互いただの勘違いだった。
停電も、分電盤のスイッチがおかしくなっていただけだ。
警戒しすぎることは悪くはないが、冷静になることも必要だと二人は実感する。
「頭いてぇ」
「ごめんって兄さん」
明るい部屋のなか兄弟で、食卓を囲む。
「まぁいいから、早く喰えよチャーハン冷めちまうぞ」
「え、これ兄さんのじゃないの?」
「俺はもう食ったんだよ」
チャーハン作って待っててくれたのに、本当に悪いことした。
雪男はうな垂れながら、チャーハンを口に入れる。
ほっこりと美味しい、携帯食なんかじゃ味わえない美味しさ。
食べなれた兄の料理の味だ。
「これ、焔で作ったんじゃなかったならもっと素直に味わえたのにな」
「おい、俺の火力技術を褒めろよ」
「そもそも、焔使っちゃダメって言ってるでしょ」
「でも、うまいだろ」
「・・・悔しいことに」
雪男は、日常に帰ってきたことを実感する。
兄の作ってくれたご飯を食べること。
ささやかな幸せが、悪魔を殺し続けていた昨日を遠く感じさせてくれる。
任務から帰ってくる度に、こうして労わってくれる兄の存在に感謝した。
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