青祓のネタ庫
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たまに、携帯電話で写真を撮る。
それは朝焼けの空だったり、道端に咲いている雑草だったり、様々だ。
俺はたまに、写真を撮る。
それは気になったものを留めておくためのメモのようなものだ。
「それなんですか志摩さん?」
「ん?」
塾での休み時間。
子猫丸が志摩の携帯の待ち受け画面を見て、言った。
画面には人が写っている。
志摩の場合好きなアイドルの写真や、エロ雑誌の写メを待ち受けにすることが多い。
今回は、そのどれとも様子が違うようだ。
「これ、誰ですか?見たこと無い人ですけど」
「その写真、奥村君やで」
「え」
子猫丸は志摩から携帯を受け取り、じっくり見た。
確かにクラスメイトの奥村燐だ。
窓の外を見ている時の横顔をばっちり撮られている。
でも、写真で見る彼は、普段の姿からは想像もできない。
「なんていうか、奥村君じゃないみたいに見えますね」
「そうやろ、子猫さんもそう思うやろ」
志摩がたまに写真を撮ることを子猫丸は知っていた。
それは道端の草だったり、ビルの隙間の風景だったり、
気になったものを気の向くままに撮っているという印象がある。
今回の写真は若干趣向が違うように思えた。
「なんか、奥村君ってたまに『ああ、違うな』って思うことがあるんですよ。これはその時の写真」
「それわかります、目を惹くっていうんですかね。上手い事いえないですけど」
浮世離れしている、というのだろうか。
クラスメイトとして付き合っているし、普段はそんなこと全然感じない。
それなのに、ふとした瞬間。まるで人ではないような感覚を感じる時がある。
「雰囲気いうんかな。しゃべっとったらそんなことないのに。
黙って外を見てるときとか、人間じゃないみたいや」
「人間じゃないみたいなんて失礼ですよ志摩さん」
「でも、違うなって思いません?」
「まぁ人が大勢いても、なんか奥村君ってみつけやすいですよねぇ」
「そうでしょ。不思議な子やなー奥村君。弟の先生はそんな雰囲気ないんやけど」
「おい、なんの話しとんや」
勉強していた勝呂が二人のほうを見る。
志摩は待ちうけ画面を勝呂に見せた。
「これ、だれやと思います?」
「・・・?誰やそれ」
「奥村君です」
「なんやアイツ全然違うな」
「でしょう、坊はどんな風に感じます?」
志摩は「人間ではない」と思った。
子猫丸は「目を惹く」と思った。
「青いな」
「は?どういうことです」
志摩が聞き返す。
「どういうもなんも、その写真の奥村見てたら思っただけや」
青い。どういうことを意味しているのかわからないけど。
「青い・・・か。確かにそうかもしれませんね」
奥村燐を表す色があるとすればそれは青色だ。
それだけは揺ぎ無い。
青い夜といい、退魔の世界には青色にあまりいい印象はないのだが。
不思議と奥村燐の見せる青色に不快感は感じない。
ふとした瞬間に見せる顔。
きっと自分では気づいていないだろうが、他人が感じる差異。
それはこの青色が原因なのかもしれない。
「でも、お前が人の写真撮るなんて珍しいな志摩。そない奥村のこと気になったんか」
気になった。
勝呂の言葉を聞いて、納得した。
志摩が写真を撮るのは、気になったものを留めておくためのメモのようなものだ。
志摩は携帯を閉じた。
この奥村燐を他の人に見せるのが、なんだかもったいなく思えて。
(俺、この瞬間の奥村君のこと捕まえときたかったんかもしれんなぁ)
それはクラスメイトに向けるには重い、独占欲だったのかもしれない。
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