青祓のネタ庫
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≪ 11話目 | | HOME | | クロとハネムーン症候群 ≫ |
若干グロテスク表現アリ。
苦手な方は注意。
「にいさ、ん…?」
雪男は、血の海に沈む兄の姿を呆然と見ていた。
ここは自分達の部屋だ。
今日は任務でちょっと遅くなったけど、帰ったら晩御飯を一緒に食べる約束だった。
兄さんの大好きなすき焼きでも食べる、つもりで。
雪男は部屋に広がる死臭に吐きそうになる、兄が死臭の中倒れている。
回りには、今しがた取り出された生々しい内臓が湯気を立てて散らばっている。
肝臓、腎臓、小腸、大腸、それに、心臓。
木の床に染み込む血の色。血に染まった兄の服、身体。
「そんな…」
雪男はその場に膝を着いた。
床の血だまりがべしゃりと散っていく。
割れた窓ガラスから冷たい風が入ってきた。
この頬をなぞる冷たい風だけが現実だと感じた。
「あにうえ」
「なんだ」
「奥村燐の好物は肉だそうです」
「だから何だ」
「だから部屋に生肉を置いておきました」
「…スーパーで買った肉か」
「そこらへんに落ちてた肉です」
メフィストは『局地的肉牛失踪事件被害報告書』を閉じて、頭をかかえた。
アマイモンの興味が奥村燐に向かうよう仕向けたのはメフィストだ。
しかし、ここまで偏った興味を寄せるとは思わなかったのだ。
「お前、奥村燐のことが好きなのか」
「好き、というより」
アマイモンは頭のとんがりを動かして悩んだ。
奥村燐のことが好き?好き、というより。
「育成してる気分です。今のままじゃ手が出せないので、美味しく育った所を頂きたいのです。
そういう純粋な思いをこめて肉を置きました」
思いが重い。
好きならなにしてもいいと本気で思っている。
なんだかロリコンの理屈みたいな言い方で誤解を招きそうだ。
「まあ、わからんでもないが」
メフィストも奥村燐を育てている一人だ。自分の目的の為に。それに、奥村燐は面白い。
あんな無鉄砲な兄弟は初めてだからだ。悪魔には生まれた時から階級があるため、
上に逆らうことがイコール死に繋がる。それを本能で理解しているため、
勝算がなければ行動を起こさない。
人間とのハーフだからだろうか。勝ち目のない戦いに挑む時のあの挑戦的な瞳は…
「おいアマイモン」
「なんですかあにうえ」
「お前のせいだぞ」
いや、自分はそんな目で見ていないはず。なんだかアマイモンに洗脳された気分だった。
「大丈夫です。拾った肉は部位ごとにバラして部屋に置いておきました。食べやすいはずです」
会話がかみ合っていないが、突っ込まない。アマイモンに常識はないのだ。
メフィストはアマイモンが作ったその光景を想像してみた。
ちぎれた牛の頭がベットの枕に寝そべっていて、床に綺麗にハツ、モツ、ホルモン、レバー、
カルビにタンが整然と並んでいて、部屋一面に広がる血の海と死臭。
うん、大丈夫だ。自分はこれより狂っていない。
「アマイモン、今すぐ片してこい」
「えー」
「騒ぎになるだろう!」
「わかりました」
アマイモンは渋々、部屋を出ていった。無限の鍵を使ったのですぐ済むだろう。
携帯の着信があった。
「おい、どうした」
「あにうえ、奥村燐と鉢合わせたので腹を殴って気絶させておきました。いいですよ…」
ね、という前に扉が開く音とガラスが割れる音がした。
「なんの音だ」
「奥村燐の弟が入ってきたので窓を割って逃げた音です」
「奥村雪男に見られたのか」
「いえ、それは大丈夫だと思いますが…」
「が?」
「奥村雪男が部屋を見て呆然とした挙げ句に膝を着いて
なにかに打ちひしがれているようです。なにかあったんですかね?」
メフィストは考えた。
床には片付けられなかったハツ、モツ、ホルモン、レバー、カルビにタンが整然と並んでいて
その血の海にアマイモンに気絶させられて倒れる奥村燐の姿。
無残な殺害現場の出来上がりだ。
「アマイモン」
「なんでしょう、あにうえ?」
「お前のせいだ」
メフィストはまだ使いどころのある雪男をここで壊すつもりはない。
フォローが大変だ。電話を切って、席を立った。
勿論、ポケットにカメラを入れていくのは忘れない。
フォローはするが、面白いことは見逃さない。
これがメフィスト=フェレスのやり方である。
「イテテ、雪男どうした蹲って。腹でも痛いのか?」
「兄さん生きてたの!?」
そんな悪魔兄弟に振り回される二人だった。
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