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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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リュウ=セイリュウお前もか

「取り戻したいのでしょう?」

メフィストはにやりと笑った。
燐は答えられなかった。


***

あの祭りから一週間が過ぎていた。
うさ麻呂と出会い、別れたあの日の出来事はなかったことにされている。
勝呂達と野球をしたりもしたが、ついにみんなは思い出すことはなかった。
覚えているのは、燐だけだ。

燐は寒い雪道を歩いていた。スーパーで買った袋の中には、卵が入っている。
オムライスをとろとろだ。とうれしそうに食べていた顔が忘れられない。
燐は後ろを振り返った。雪道に刻みつけられているのは一つの足跡だけ。
自分の後ろを小さな歩幅でついてきたうさ麻呂はいない。

「俺だけは・・・ずっと忘れない」

燐はうさ麻呂の思い出を覚えている。なかったことにされたとしても、燐にとっては真実だ。
燐はスーパーの袋を抱えなおした。寮では弟が待っている。
任務から帰ってすぐ報告書を書いているのでご飯をとっていないはずだ。
燐がやめさせないと雪男はいつまでも働き続けている。完全にワーカーホリックだ。
学校に行って放課後は塾の講師。
終わったら祓魔師としての任務に、帰ってきたら報告書の作成と学校の課題を処理。
深夜に寝るのがざらで、起きるのは燐より早い。十五歳の高校生のスケジュールではないと思う。
今は寒い。無理をして風邪を引いたらどうするのだろうか。燐は足を早めた。
早く帰って、食事を作ってやろう。うさ麻呂が喜んでくれたオムライスを作ってやろう。
雪男はおいしいと言ってくれるだろうか。

「あー、でも同じ食事ばっかって文句言われるかも」

オムライスの回数が続いていることから、雪男から疑問が投げられたことがあった。
兄さん、オムライス好きだったけ。雪男の問いかけに燐はごまかすような言葉しか出てこなかった。
これが好きだったのは。燐はその続きが言えない。燐は寮への帰り道から外れた、路地裏に入った。

正十字学園はたくさんの道と路地に溢れている。その先には古びた扉も。
燐は首から下げていた鍵ひもを取り出した。そこには神隠しの鍵と、塾に続く鍵。
そしてもう一つ。ピンク色の鍵を鍵穴に差して、
扉を開ければ目の前にはおもちゃとゲームに溢れた寝室につながった。
ここは燐の部屋ではない。部屋の中から声がかかった。

「寒いでしょう、お入りなさい」

メフィストの声だった。燐はその声に導かれるままに入る。
冷気が入らないように扉は後ろ手で閉めた。
スーパーの袋は扉の近くにあった小机に置く。
相変わらずピンク色の部屋だ。メフィストは寝室にはいないらしく、奥の執務室にいるようだ。
そのまま寝室は素通りして、執務室へと入る。
そこにはいつもの通りに仕事をこなしているメフィストがいた。

「寝室から入るとは、貴方もずいぶんと大胆になりましたね」
「いや・・・お前がそこに繋げたんだろ」

メフィストからもらった鍵をそのまま使っているだけだ。燐には別に何の意味もない。
メフィストが自分の寝室に繋がる鍵を持たせている意味には気づかない。

「まぁいいでしょう。ご用はなんですか」
「あいつ、うさ麻呂のこと。取り戻すことはできないのか?」

うさ麻呂は時空そのものを食べることで街を救ったが、あの日々はなかったことになった。
うさ麻呂はかつてあの祠にいたが、今もあそこにいるのかは燐にはわからなかった。

「よくお気づきで。あの悪魔は次元そのものを喰いました。
ですから今の改変された世界は以前と全く同じというわけではないのですよ」
「じゃあ・・・」
「あの悪魔が消えていたとしてもおかしくはないですね」

それだけのことをあの悪魔はやってのけたのだ。
街を、人を、燐を救う為に。燐の瞳は悲しみに包まれていた。
メフィストはそれを狙っていたかのように声をかけた。

「取り戻したいですか?」
「できるのか!?」

燐はメフィストに食いついた。そんな方法があるならばなぜもっと早く言わない。

「あれは、私の眷属ですからね。王たる私にかかれば創れないこともない。
ただ、その為には貴方の協力が必要です」
「俺の?」

なぜ自分なのだろうか。燐は疑問に思った。

「ええ私はあの悪魔の過ごした記憶までは持っていません。
それを持っているのはもう貴方だけ。つまり私と貴方の力を持ってすれば
もう一度あの子供に会うことができますよ」
「また会えるんだなッ」

燐の目に希望が戻ってきた。もしも叶うならもう一度会いたかった。
その為の方法があるなら試してみたい。うさ麻呂をもう一人ぼっちにしたくはなかった。
メフィストは燐に真剣な瞳で命令した。

「覚悟が決まったなら結構。では早速ですが寝室に行ってください」

なんで。と燐は聞き返した。ここは外に出るなり、祠に行くなりするところではないだろうか。
なぜ寝室に行くのだ。燐は聞き返した。メフィストは嬉しそうに語る。

「することと言えばひとつでしょう」
「だからなにを」
「ナニを」
「え?」
「つまり、貴方と私の力であの悪魔を創るってことです。
私は時の力を貴方の中に注ぎ、貴方はあの悪魔の思い出と心を与えて形を創ればいい」
「それ、どうやるんだよ。俺やり方知らねぇよ」
「簡単です、寝室ですることと言えば一つ」
「寝ること?」
「そう、私とね」
「・・・え?」

燐にはすごく嫌な予感がしていた。
寝る。という意味には二つの意味がある。
文字通りただ体を休ませるためのものと、夜の交わりの意味だ。
このメフィストがただ体を休ませるための言葉を放つ訳がない。

「単刀直入に言いましょう。燐君私とセックスしてあの悪魔を創りましょう。
母胎は貴方なのできっと丈夫な子が産まれますよ」
「お、俺は男だ!!産めるわけねぇだろ!!」
「大丈夫ですよ、全ての悪魔の根源は魔神です。その魔神の落胤である貴方なら可能です」
「うーそーだーッ!!!」

燐は頭を抱えた。まさか今まで生きてきた人生が全部ひっくり返されるような言葉を
言われるなんて思ってもみなかった。
じじい、天国のじじい。俺、男だけど子供が産めるみたいです。
どうすればいいでしょうか。
もしもこの事実を生前藤本が知っていたなら燐の夜の外出は軟禁してでも阻止していそうだ。
燐はちらりとメフィストを見た。相変わらず食えない笑みを浮かべている。
つまり、だ。今通ってきた寝室のベッドの上で。抱かれろ。ということだ。

燐は鳥肌が立った。無理だ。
男に抱かれるなんて、燐の知識の中にない。
未知数すぎて完全に無理だ。燐の嗜好はノーマルである。
女の子が好きだし、男に対してそんなこと思ったことは一度もない。

「おや?貴方あの悪魔にもう一度会いたいのでしょう?」
「そ、それは・・・」
「大丈夫です、一回でできるとは私も思ってませんから。
何回だって試しましょう。その為に寝室への鍵も渡しているのですから」

燐は持っていたピンクの鍵を見てぞっとした。
こいつ、最初から。燐は逃げようとしたが、扉に辿りつく前に体に激痛が走った。
振り返ると、メフィストが燐の尻尾を握っていた。

「いけない子ですね。尻尾はしまいなさいと言ったでしょうはしたない」
「はな・・・せッ!」
「いい機会ですから体に教え込んであげましょう。
敏感な尻尾を二度と人前に出したくならないようにね」

メフィストはそのまま燐を自分の寝室に連れ込んだ。
天蓋付きのベッドの上に乱暴に燐の体を投げる。
燐はベッドの上部に急いで逃げ出す。
体に青い炎を纏わせて、メフィストに向かって近寄るな、と威嚇する。
メフィストはそんな燐の抵抗など可愛らしいとしか思っていない。

むしろ、もっとやれと言ってやりたいくらいだ。
メフィストは悪魔である。相手が嫌がれば嫌がるほど本能的に燃え上がる。
燐の腕を押さえ込んで、足の間に入りこんだ。
そして、燐の耳元で囁く。

「取り戻したいのでしょう?」

メフィストはにやりと笑った。
燐は答えられなかった。
うさ麻呂にもう一度会いたいのは本当だ。
でも、まさか兄としてではなく親としてあいつに向き合うことを強いられるなんて。
燐の体から力が抜ける。メフィストは悪い顔をする。
堕ちた。手が燐の体を拓こうとしたところで。


「おい、日本では未成年に手を出すのは合法なのか?」


こん、という堅い音が部屋に響いた。
寝室の扉の前には、リュウが立っている。
手に書類を持っていることから報告書の提出に来たのだろう。
執務室に入ったと思ったら、寝室から言い争う声が聞こえてくるわ、
未成年が悪い悪魔に喰われようとしているわ。
リュウにしたら不可思議この上ない状態だ。

「悪魔同士ですし。お気にせず」
「それもそうだな」

リュウはくるりと振り返る。
燐はとっさに叫んだ。

「おい!この状態を無視か!」
「冗談だ」
「通じねぇよ!」
「奥村君、逃げるならあの悪魔には会えないと思いなさい」

メフィストに痛いところを突かれ、燐は押し黙る。
リュウは首を傾げた。

「何を言っている。玉兎は消えたわけではないぞ」

メフィストと燐の言い争いを聞いていたせいか、リュウはある程度事情を知っているらしい。
燐は呆然とし、メフィストは舌打ちした。

「余計なことを」

メフィストのつぶやいたその言葉が全てを物語っていた。
うさ麻呂は別に消滅したわけではない。
時を司る悪魔は退治しても、時がたつと共にまた再生することが多い。
うさ麻呂は千年もの昔から存在していたが、
かつてのリュウの祖先が退治せず封印という手段を取ったのもそのためだ。
うさ麻呂は膨大な力を使って時空を食った。
現在あの祠にうさ麻呂はいるかもしれないし、いないかもしれない。
でも、何年先かはわからないが、いつか必ず。

燐はメフィストの胸ぐらを掴みあげた。

「おい!メフィストてめぇ嘘つきやがったな!!」
「合法的に貴方を手に入れられると思ったんですけど」
「違法だろ!」
「なるほど、未成年に手を出すのは違法なのだな」

リュウが淡々と口にする。燐は怒鳴った。

「当たり前だろ!」
「了解した。悪魔同士のまぐわいを見なくて済むことになって安心だ」
「待て、見る気だったのか。それにまぐわいって・・・おい」
「冗談だ」
「通じねぇよ!」
「訂正する、性交だ」
「もっとリアルだろ!」

燐はメフィストにビンタをかますと、寝室から出ていった。
メフィストもリュウが来たことで気分が削がれたようだ。
リュウはメフィストに報告書を投げると、燐に続いて部屋を出ていった。
メフィストは去っていくリュウの方を見て、言葉を放つ。

「わざとらしい報告の仕方、ありがとうございます」

機会はまだある。
燐を手に入れるのはまた次のタイミングを見計らうとしよう。
メフィストはにやりと笑った。

***

「おい奥村燐」
「なんだよ」

メフィストに騙されたことに怒り心頭な燐にリュウが話しかける。
目の前に赤色の鍵が投げられ、燐は慌ててその鍵を掴んだ。
なんだこれ。燐の訝しげな視線にリュウが答える。

「玉兎のことが語りたければ、いつでも来い」

あの支部長に騙されるよりはましだろう。とだけ言い残してリュウは去っていった。
燐は渡された鍵を見る。うさ麻呂のことを誰も覚えていなかった。
それがやはり少しだけ寂しかったのかもしれない。

「そっか、そうだよな・・・」

俺だけはずっと忘れない。
でも俺にできることはそれだけじゃないはずだ。
あいつがいたことを人に語ることだってできる。
あの絵本が千年先の今に残っていたように。

「わかった!あんたがうさ麻呂のこと忘れねーように、何度だって行くからな!」

背後から聞こえてきた元気な言葉にリュウは笑う。


その後、燐が鍵を使って乗り込んだ先はリュウの寝室に繋がっていたという。


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