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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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荊の芽生え


自分は、藤堂に会ったのだろうか。

燐は疑問に思っていた。確かに腹を貫かれた痛みも、記憶もあるのに、
それが夢に思えてしょうがない。
電車内に飛び散っていた血が消えたことも原因の一つかもしれない。
燐は自分の腹に手をやって、撫でた。

ここに、なにかあるのか?

そう思うと底知れない恐怖が襲ってくる。
でも、それが本当なのか確証が持てない。
燐は自分の不可解な気持ちを持て余していた。
いっそ倶利伽羅か何かで自分の腹を裂いてみるべきだろうか。
そうすればそこになにがあるのかわかるだろうが。

「・・・駄目だな、頭おかしくなったって思われそうだ」

いきなり自分の腹を割く同級生とかイヤだろう。
塾生のうちの誰かがそれをやりだしたら、間違いなく止める。
それは燐だとしても例外ではないはずだ。
塾のみんなに変な目で見られるのはイヤだな。
燐は考えて、では雪男はどうだろう。と考えた。

よう雪男!ちょっと俺の腹切ってくんねぇ?
大丈夫、お前医者目指してるんだからできるって!

想像して、雪男の表情が歪むのが目に見えた。
駄目だ。雪男にそんなことさせられない。
腹を裂けば泣かれそうだし、腹を切ってくれと言えば怒られそうだ。
八方塞がりである。
唐突に、燐は呼ばれて振り返った。

「奥村ー!逃げろおおお!」
「え?」

燐が動く前に、動く物があった。
にゅるりとした蔦が燐の足を掴み、そのまま上に引っ張りあげられた。
世界が逆さに見える。宙ぶらりんのまま視線を向ければ、
下には大声で叫んでいる勝呂たちがいて、
蔦の方向を辿れば。大きな赤い果実の化け物がいた。

赤い実には大きな牙と口がついており、目は一つ目。
背丈は三階建てのビルくらいはありそうだ。ぎょろりと向けられた視線に慌てる。
口が開いている、こいつ。俺を食う気かよ。
しかも丸のみできるくらい口もでかい。
一気に迫った身の危険に燐は防衛本能を働かせた。
蔦ごと、一気に青い炎を纏ったのだ。
青い輝きに目がくらんだのか、蔦が緩む。抜け出せる。

燐がそのまま落下しようとすると、すかさず別の蔦が燐の腕に絡みついた。
足を掴んでいた蔦が、燐の腹をぐるりと取り囲む。ぞわりと鳥肌がたった。
腹周りの蔦が、燐の体を探るように動いている。
気持ち悪い。腕に巻き付く蔦は、もっと遠慮がなかった。
その蔦は、腹を囲んでいるものとは違う。赤い。
まるで血管のような色をしていた。

「くそ!気持ち悪ぃな!」

燐は振り払おうとするが、蔦の方が早かった。
燐の腕に巻き付くと、そこから土に根を下ろすかのように皮膚に食い込んだ。
どくん、どくん。と根が突き刺さったところから血が抜けていく感触がする。
でも、腕から血は出ていない。すべて根が吸い取っているのか。
根は更に燐から血と肉を奪おうと、根を張り巡らせた。
肩の方まで来ている。浸食が拡大している。
燐は炎を出そうとした。その前に、下から声が聞こえてきた。

「何やってんだ!馬鹿!」

声とともに、銃弾が飛んできた。
燐の腕に巣くっていた根がちぎられる。
体を取り囲んでいた蔦も、銃のおかげで切れている。
自由になった。燐は根を張り付けたままの腕を振るって、倶利伽羅を鞘から解き放つ。
燐の体からあふれる青い炎。すべてを焼き付くす、魔神の業火だ。

「よくも好き勝手やってくれたな!!」

それはもう盛大に燃やし尽くしてやった。
悪魔は断末魔の悲鳴を上げることもなく、跡形もなくなった。
燐は地面に降りて、華麗に着地。
したはずだったがその場によろめいて倒れ込んでしまった。
地上にいた勝呂たちが次々に飛んでくる。

「アホ!呆けとるからこんなことなるんやで!」
「悪い・・・でも敵倒したんだからそんな怒んなよ」
「怒るわ!見てみいこれ!」

勝呂に言われて、自分の腕を見た。
そこには悪魔に寄生されて根を張られている光景が。
グロテスクすぎて、近寄ってきた志摩が思わず目を反らしてしまうほどだった。
自分の体内に入っているとはいえ、悪魔は悪魔だ。
炎で燃やすべきか。
そう思って力を込めようとしたところで、頭を思い切り殴られた。
貧血によるものとは違う。頭のくらみ。
目に火花が散ってしまった。
これ以上脳細胞が死んでしまったらどう責任とってくれるんだ。
こんなことする奴なんて一人しかいない。

「いってぇな!!なにすんだよ!雪男!」
「なにしてる。はこっちの台詞だ!
戦闘の最中に突っ立っているなんて正気の沙汰じゃない!
一体何考えてるんだ!」

雪男は珍しく、額に血管を浮かせて怒っていた。
怖い。何そんなに怒ってるんだよ。全部終わったじゃん。
なんて言ったらどんな目にあうか。燐は想像して口を噤んでしまった。
雪男は押し黙る燐を無視して、怪我をしている腕を取った。
医工騎士として診察をしているようだ。
まじまじと見て、雪男はため息をついた。
勝呂たちに合図をして、燐を取り押さえるように言う。

「じゃ、押さえておいてください」
「はい」
「はーい」
「わかりました」

なにすんの。という疑問の言葉も許されないまま。
雪男が燐の腕から出ていた根を思い切り引っ張った。
血管から根が抜けていく感触、ぶちぶちという引き裂かれる音。

「いッてえええええええええ!!!!」

容赦のかけらもなく、引っ張り出された。
これが治療だというのならなんという荒療治だろうか。燐はぼろぼろと泣いた。
予告してくれたら覚悟もできたのに。
痛がる燐とは正反対に雪男はどこまでも冷静だった。

「はい終わり、違和感はない?もう傷口ふさがってるから大丈夫とは思うけど」
「え?あー。うん。違和感はないな」

手を握ったりして確かめるが、あの根が残っている感覚はなかった。
念のため青い炎で燃やしてみるが、何かが燃えることもない。
根が張っていたという事実は跡形もなくなっていた。

「よかった、寄生型の悪魔に取り憑かれると全身が乗っ取られることもあるんだよ。
兄さんは上級だろうから、滅多にそんなことにはならないだろうけど。
同じ悪魔だからこそ気をつけないといけない相手だったんだからね」
「寄生型の悪魔・・・」

燐は悪魔を燃やしつくした後を見た。赤い実の悪魔。
雪男が言うには、最初はただの山魅だったらしい。
そこに寄生型の悪魔が取り憑いてあんなにも巨大な悪魔にまでなってしまった。
だから、遅刻してきた燐には散々悪魔に近づいてはいけないと
言い聞かせていたのに。

「兄さん、今日は何かへんだよ。他に怪我してない?」

雪男は燐に手を伸ばした。蔓が腹の辺りに当たっていなかっただろうか。
寄生型の悪魔は触れた場所から取り憑くこともある。
念のため見せて、と燐の服をめくろうとした。
燐は雪男の手をとっさに振り払った。乾いた音が響く。

「触るな!」
「え・・・?」

雪男の手が、行き場をなくした。
燐は自分がなぜそんなことをしたのかわからなかった。
でも、雪男に触れられたくないと思ってしまった。
なぜだろう。

燐は藤堂に会ったことを思い出した。
口を開こうとした。なぁ雪男、俺あの藤堂っていう男に会ったんだ。
でも、それは言葉にならなかった。

「なんともねーよ、悪い」
「それならいいんだけど・・・」

雪男の視線が探るように見ている。
それをなんともないという風に流して、その場を離れた。
勝呂が燐に声をかける。

「奥村、なんかあったんか?遅刻してきてから変やぞ」
「大丈夫だって」

燐はなんともない、と答えた。
藤堂に会ったことを言おうとすると、なぜだか言いたくない気持ちになる。
燐は自然と自分の腹を撫でた。


プレゼントだよ、ここでしっかりと育てるといい。奥村燐君


藤堂の言葉が耳に響く。
でも、このことを言うことはできない。燐は吐き気を覚えた。
なぜだろう。別に変な物は食べていないのに吐きたい気分だった。
そして、妙な食欲があった。

「なんか、レモン食べたい」

レモンはビタミンが豊富で疲労回復にもなる。
たぶん疲れているのだろう。燐はそう結論づけて岐路につく。

何かが芽生え初めていることに、このときは誰も気がつかなかった。

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