青祓のネタ庫
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今月号のSQネタバレ有り。単行本派は要注意!
メフィストの部屋に招かれて、食事を振る舞われた。
晩餐と聞いたのでなにが出てくるのかと思いきや、出てきたのはカップラーメンだった。
しかし、メフィストの好物はジャンクフードらしいので、
自分の好物で迎えてくれたというのは燐に対して思うところがあってのことか、否か。
燐は思った。こいつ、確実に面白がっているな。と。
カップラーメンの蓋を開けて、箸を取る。ナイフとフォークもあるが、
そんなもの使ってラーメンを食べるつもりはない。燐は麺を取って一口啜った。
「・・・まず、くはない」
が、しょせんインスタントだ。おいしいとは言いがたい味がする。
燐は小さな頃から家庭料理を極めてきた自信がある。
そのために鍛えた舌が、やはりあまりおいしくはないと訴えている。
まぁ食べられないことはないので燐は大人しく麺を啜った。
向かいにいるメフィストを覗けば、うきうきと嬉しそうに麺にかぶりついていた。
これが、俗にいう残念な大人だろうか。燐はため息をついた。
そんな男が、魔神の直系で、虚無界の第二権力者で、時の王サマエルだとは。
信じたくはないが虚無界まで連れて行かれた身としては信じるしかない。
そうなると自分の母親違いの兄に当たるのだろう。
カライ・・・じゃない。アマイモンもそう言っていた。
自分達は兄弟みたいなものだと。
燐は、メフィストに対してあまり良い感情をもっていない。
こいつが兄?絶対イヤだね。いや、本気で。
しかし、悪魔を見えなくする薬はメフィストしか持っていないのだ。
課題が何かはわからないが、メフィストに従うしかない。
それもまた燐の心に複雑な思いを抱かせる。
「メフィスト」
「なんですか?奥村君」
「俺は、お前の思い通りにはならねーからな」
箸を置いて、ごちそうさま。と手を合わせる。ご飯に罪はない。
頂いたことに感謝はしなければならない。
それは父、藤本獅郎に口を酸っぱくして躾られたことだ。
燐の父は藤本獅郎ただ一人だけだ。魔神ではない。
だから、メフィストがいくら自分の兄に当たろうとも、態度を変えるつもりはない。
今はかなわなくても、いつか絶対にあらがってみせる。燐はそう決めていた。
帰ろうと一歩を踏み出したところで、ぐらりと地面が揺れた。
おかしい、歩けない。燐は床に膝をついた。
意識が揺れる。メフィストはおかしそうに笑いながら、こちらに近づいてきた。
「おや。すみません、まだ内臓が回復してなかったのでしょうか。
刺激が強すぎたようですね」
燐は虚無界でアマイモンによってバラバラにされた。
悪魔の回復力で身体は元通りになったが、内蔵がまだたったのか。
そこにインスタントラーメンはきつすぎた。
燐はお腹を押さえてうずくまった。メフィストは燐の身体に触れようとする。
燐はメフィストの腕を振り払った。ぱしん。音がメフィストの部屋に響く。
「俺、に。触るなッ!」
「威勢だけは一人前ですね。警戒心もなかなかだ。ですが」
力が伴っていなければ、悪魔にとっては無意味です。
メフィストは燐の腕を引き上げて、そのまま横にあるベッドに放り投げた。
燐はやわらかい布団の上にうつ伏せで着地し、むぐ。とくぐもった声をあげた。
顔色はあまり良くない。メフィストは動けない燐を仰向けにひっくり返すと、
そのネクタイに手をかけた。
驚いたのは燐だ。部屋に連れてこられて、食事を振る舞われて。
帰ろうとしたら、ベッドに連れてこられた。これは、なんだ。まずいぞ。
映画とかでよくあるワンシーンみたいだ。
罠にはめられたターゲットがぺろりと食べられてしまう系のあれだ。
逃げようとするが、メフィストが上にのし掛かっているので動けない。
ネクタイを緩める手を外そうと手を伸ばすが、
力が入らないのですがりついているかのようだ。
メフィストは気分よく燐の上着をはだけさせた。
燐は気分が悪いのかうーうー唸っている。
「悪魔なら一瞬で治るんですけど、貴方半分人間ですもんね。
少しだけ手伝って差し上げますよ」
メフィストのひやりとした手が燐の腹を撫でる。
魔法陣が燐の身体に展開された。ざわりとした感覚。
燐は腕を張って、メフィストの身体がこれ以上近づかないようにしようとした。
「いや、だ!やめろ!」
「お兄さまが手伝ってやろうというのに、聞き分けのない弟だな」
そう言いながらメフィストの顔は嬉しそうだ。
メフィストの手が燐の腹を撫でる。
燐の腹には魔法陣があり、その上をメフィストの手が撫でている状態だ。
メフィストが手を動かすたびに、燐の中がざわついた。
「う、ああッ!やめッ!!」
「良い声だ、もっと鳴きなさい奥村君」
「いや、だ!ああ!」
内臓が、メフィストの手が動くたびにかき回されている。
魔法陣は治癒に使われるものだが、空間を司るメフィストが使えば、
腹を切り開かずとも手術を行える。
内臓は修復されるだけでなく、その位置も重要だ。
燐の場合内臓の位置がまだ不完全だったのだろう。
メフィストはそれを正しい位置に治しているのだ。
だが、いくら治すためとはいえ自分の意志とは関係なく
内臓をかき回されていることに変わりはない。
ひとしきり撫でられると、燐はごほりと咳をした。
口から血が出る。血がメフィストの寝具を汚す。
咳を何度か繰り返すと、燐の呼吸は落ち着いてきた。
「これで大丈夫でしょう。
治療だというのにはしたない声をあげて。いけない子ですね」
「こ・・・んの。クソピエロ!!」
燐は腕を振り上げてメフィストの顔面を殴ろうとした。
その腕も簡単にメフィストの手に止められる。
「感謝はされど、刃向かわれる謂われはありませんけど」
燐はメフィストの言葉に反応しなかった。
そう、身体が硬直している。メフィストが時間を止めたのだ。
燐の倶利伽羅を奪ったときも同じことをした。
この空間で動けるのはメフィストだけだ。
「ですが、治してあげたのですから相応の対価を貰いましょうかね」
メフィストの唇が燐の口からこぼれた血をなぞり、そのまま唇を奪った。
口の中に広がる濃厚な血の香り。魔神の直系たる甘美な味だ。
メフィストは我を忘れて燐の唇をむさぼった。燐は動くことはない。
そのままメフィストは手を燐の下半身に向けて伸ばした。
ここはベッドの上だ。やることといえばひとつしかない。
手が燐のズボンをはぎ取ろうと動くと。時の止まった世界に動きが生じた。
燐の身体から青い炎が吹き出して、メフィストの腕を焼いた。
つながっていた唇も、炎に焼かれる。
メフィストは舌打ちをして燐の身体から離れた。
途端に、炎は静かに収まっていった。
「これだから青い炎は・・・時を越えて反応するなどやっかいな」
そこに燐の意識はない。おそらく本能的なものが青い炎を動かしているのだ。
メフィストはことあるごとに燐を狙って仕掛けたが、
いつも青い炎に邪魔されて本懐を遂げられない。
今日は唇を奪えただけましな方か。
本来なら、燐の中をかき回すのはメフィストの手ではなく、もっと―――
いや、これ以上炎に焼かれてはたまらない。メフィストは指を鳴らして時を動かした。
燐はのし掛かるメフィストに向かって、反対側の腕で殴りかかった。
油断していたメフィストはもろに顔面で受けてしまい、ベッドの上に転がった。
燐は匍匐前進でベッドの上という危険地帯から抜け出すと、急いでドアの前に立った。
身体はもう大丈夫だった。
「この変態ピエロ!!!」
燐は顔を青ざめさせたり赤くさせたりしながら、部屋から飛び出していった。
おやおや、押し倒されただけであんなに動揺して可愛らしい。
時を止めて、もっとすごいことをしていたと言ったらどうなるだろうか。
メフィストは口角を上げて笑った。
「成長するがいい、末の弟よ。
成長し、挫折し、笑い、泣いて、苦しんで、もがいて、楽しんで、
動揺して、あがいて―――そして私の元へ堕ちて来い」
それまではこのままでいてやろう。
保留にしているだけで、止めることはない。
この遊びは、止めることなどできはしないのだ。
メフィストの顔は悦楽に歪んだ。
「本当に、私を飽きさせない末の弟は愛おしい」
寝具に着いた燐の血を指先で掬い上げると、べろりと舐めとった。
悪魔の愉悦は、終わらない。
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