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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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花の命は短くて



あ、まずい。
と思ってとっさに隠れた。
扉から、人が入ってくる。


「おや?誰かいたような・・・」
メフィストは自分の執務室に入り、扉を閉めた。
どうも、自分の机の前に置かれている応接用の机の前に、
誰かがいたような気がしたのだが。
メフィストは急いで、その机の前に置かれているものに手を伸ばす。
これを誰かに見られては大変だ。
それを自分の懐にしまおうとして気づく。
位置が、変わっている。
メフィストは、ソファの後ろに向けて声をかける。

「出てきなさい、いるんでしょう?」
「・・・にゃはーバレたか」

ソファの影からにょっきりと顔を出したのは、シュラだった。
人の部屋に勝手に入っておきながら、彼女は悪びれる様子もなく
どかっとそのソファに座る。

「悪い悪い、用があったんだけど留守だったもんで」
「・・・だからって勝手に入るのは淑女としてどうかと」
「いいじゃんよー、それは置いといてー。っていうかお前。それなんだよ?」

シュラが指し示した物。メフィストはまずい、といった表情を隠さない。
机の上に広げられているのは、冊子に閉じられたなにか。
シュラは、一冊を既に手にとっている。
目にも留まらぬ早業だ。メフィストが止めるまもなくシュラはそれを開く。

「・・・誰この金髪少女」
「ちょ!勝手に見ないでくださいよ!!」
「お前いい年してこんな女の子に手を出そうとしてるのか・・・!?
犯罪者!悪魔!!」
「私が悪魔なことくらい知ってるでしょう!誰がいつ手を出すといいました!?
違いますよ!失礼な!」

メフィストがシュラから冊子を奪い返す。
なぜこんな少女の写真をメフィストは持っているのだろうか。
いい年したおっさんが持ってていいものでもないだろうに。

ピロリーン。

愉快な電子音が部屋に響く。
シュラは、携帯で写真をとっていた。
携帯電話には、少女の写る写真を持ったメフィストの姿が。
メフィストは携帯に向けてピンクの傘を向けようとした。
シュラは、携帯を天空に向けて突き上げ、決定ボタンに親指を乗せている。

「動くな、証拠は頂いた。ヴァチカンから日本支部まで、
あることないこと吹き込まれたくなければ話しな」

上一級祓魔師の反射神経ならば、メフィストの魔術が発動するより早く
決定ボタンを押すだろう。

「・・・くっ、貴女年々藤本に似てきましたね」
「ほめ言葉だな」

メフィストは机を挟んで向かいのイスに腰掛けた。
机には、美少女の写真入りの冊子。
お互いに座ってそれを見つめる。
シュラは、携帯を手放さない。
メフィストは、重い口を開いた。

「・・・そもそもこれは少女ではありません」
「なに?合成なわけ?お前の好きな二次元?引くわー」
「・・・二次元の崇高な趣味を理解して貰わなくて結構。
これは、貴女もよく知る人物です」
「はぁ?こんな美少女知らねーよ」

こんな美人、一度見たら忘れられない。
シュラは、優秀な祓魔師なだけあって記憶力もいい。
自分の記憶に間違いがあるとは思えなかった。

「・・・アーサーです」
「は?」
「だから、この少女・・・と言っては語弊がありますが。
この写真は、貴女の上司。アーサー=オーギュスト=エンジェルです」
「は・・・はあああああああああ!!???」
シュラはもう一度写真を見た。

さらさらの金髪、澄んだ瞳。
極めつけの優しい微笑み。
あ、でも服は相変わらず全身白い。
この少女・・・いや美少年が数年後には
あの残念なイケメンに変わるのかと思うと、実に時の流れは無情である。
しかし、アーサーは今といい昔といい顔だけは一級だな。
と上司に対して大変失礼なことをシュラは思った。

「で、なんでお前があいつの写真持ってるんだ?まさか・・・」

シュラの携帯を持つ指がかち、かち。と揺れている。

くそ、この女。顔がにやついている。
おもしろいことを見つけたという表情だ。
悔しい、こんな上から目線でいい顔するのはメフィストの特権のはずなのに。
メフィストは、こうなったらこいつも巻き込んでやろうと腹を括った。

「これは、ヴァチカンのお偉いさんの持ち物ですよ」
「え?」
「貴女も聞いたことありませんか。なんといいますか、こう。
上層部に少年を愛するおじさんがいるという事実を」

シュラは、こいつ以外にもそんな少年趣味の変態いるんだなぁと感心した。
世の中には、まぁそういう趣味の人がいることも知っている。
しかし貴族的な位置の者ほどそういった禁忌の愛に目覚めてしまうのだろうか。
自分の上司が、そういう目で見られていたことを知って
なんともいえない気分になった。

「昔のアーサーは、それはもうすごかったらしいんですよ」
「美形っぷりが?」
「そうです、振りまく可憐な仕草に洗練されたマナー。
純粋培養とはよくいったものですよね。
お偉いさんは、その頃のアーサーが忘れられないそうなんですよ。
今や彼はそこらの悪魔なんか目じゃないくらいの豪傑ですしね。
時の流れとは恐ろしい、と涙を流している方もいました」
「ああああああ」

知りたくなかったなぁああとシュラは思った。
次ヴァチカンに戻ったとき、どんな顔して上の者と会えばいいのだろう。
お前か?お前なのか?
と犯人探しをしてしまいそうで怖い。
その時、自分は笑わずにいられるだろうか。恐ろしい。

「こんなに写真があるなんて、あいつほんとに顔だけが取り柄・・・」

シュラが机にあった冊子の一冊を手にとって、中を見た。
そして、おもいっきり冊子を閉じた。
今、非常にまずいものを見てしまった。
自分の目を疑うものを。

「おい・・・これ」
「・・・ええ、彼らの次のターゲットです」

そこには、アーサーの写真に混じって、奥村燐の写真があった。
なぜここに燐の写真が。
あいつはアーサーと違って純粋培養ではないし、不良だし。
ヴァチカンが憎む魔神の落胤なのに。

「顔か」
「そして、魔神の落胤という部分も禁忌好きの心をくすぐるらしくて・・・」
「あの二人の共通点って、本当に・・・あれか、頭が残念だと顔がよくなるのか?」

「しかも、燐君の場合悪魔ですから、
おそらく今後成長は緩やかなものになるでしょう。彼らの理想なんですよ」
「永遠の15歳?」
「少なくともお偉いさんが生きている間はね」

あれか、これはヴァチカンのくだらないタイプの密命か。
メフィストはヴァチカンのお偉いさんの美しいものを愛でる趣味を満たすために、
写真の斡旋を頼まれているのだ。
シュラは、本題を聞いた。

「で、いくらだ?」

メフィストは、シュラに向けて指を立てた。
その金額にシュラは驚愕する。
なんてことだ、あの馬鹿弟子。
こんなに金になるなんて。
さすがヴァチカンの金持ちは規格外だ。

「じゃあ、私の携帯の写真も混ぜるか?解像度いいぞ」
「お、貴女もいける口ですね。こうなれば一蓮托生です、儲けは山分けで」
「お前も悪よのう」
「いえいえお代官様ほどでは。それに、秘蔵の写真は渡しませんしね。
ここにあるのはそれこそランク外写真ばかりでして・・・」

大人二人の悪い話がまとまろうとしたところで。
しゃらん、という刀を抜く音がシュラの背後から聞こえた。
しかも、青い光が見える気がする。
シュラの向かいに座るメフィストは、もろにその姿を見てしまった。
青い炎を纏い、こちらに向けて倶利伽羅を振りおろそうとするその姿。

「おーまーえーらああああ!!!!!」
「ぎゃあああ!燐君どうしてここに!!」
「にゃああ!!燐、違うんだこれは!!」

実のところ、燐はシュラがくる前からメフィストの部屋に用があってきていた。
シュラが入ってきたことで、思わず隠れ、
更にシュラがメフィストが来たから隠れた。
燐がいるとは知らない二人は、やりたい放題だった。
交わされようとしていた自分を売る会話という名の商談。許せるはずもない。

「てめぇら写真だせ!!全部燃やしてやる!!」

メフィストの部屋が、青い炎に包まれた。
もちろん、写真は一切合切燃やされて、
画像データすら残すことも許されなかったという。

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