青祓のネタ庫
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*若干やらしい表現有*
上着は脱がされ、燐はシャツとズボン姿になった。
目の前にいる四十代の男は、勝呂の姿で上から下までなめまわすような視線で燐を見つめている。
心なしか、鼻息も荒い。
燐の心は恐怖心でいっぱいだった。
勝呂の姿をしているのに、そうではない者に嬲られるのか。
しかも相手は四十代の男。最悪だ。最悪の気分だ。
男は燐の気持ちに気づいたのか、また燐のしっぽをぎゅうと握った。
勝呂は毎日鍛えているだけあって握力が強い。
しっぽを力強く絞られれば、燐は悲鳴を上げるしかなかった。
「うぁ・・・い・・・てぇッ・・・」
「いいよ、その表情。ずっと見てたんだ。
君がこのメッフィーランドに来た時から、君のことが気になっていた。
あのときは上級悪魔やら監察官がいて近寄れなかったけど、ずっとずっとこうしたかった。
この体の持ち主に近づいたのも、全部君に近づきたかったからなんだ。
君は僕の愛していた人にとても似ているよ。壊したいくらい似ているよ。
この体の持ち主である彼はとても勘が鋭くて、
しっかりしてたからなかなか取り憑くこともできなかったんだけどね。
君が近くにいるときは君に取り憑いていたのだけれど、君はまったく気づかないし。
だから、ちょっと策を練ってみたんだ」
ゴーストの様に近づき、フェアリーのようにいたずらを仕掛けて。
勘のいい勝呂は見られていること、
そして自分の口にしたささやかな願いが叶ったことで、大分気分を害していた。
気持ちが悪いだろう。悪魔の仕業だとわかるのに、姿がないのだ。
見つけられない相手ほど怖いものはない。
男は、勝呂の心の隙間にそっと寄り添っていた。
だから、勝呂は男を見つけられなかった。
自分の心は、鏡を見ても自分では見えないのだ。
男は燐の肩に手をかけ、燐を床に押し倒した。
燐の足の間に体をねじ込ませて、開かせる。
これからされることを予感させるように、腰をゆるやかに撫でることも忘れなかった。
「ズボン、自分で脱げるよね?」
勝呂の声で、男は燐に命じた。
燐は信じられないといった目でのし掛かる男を見上げるが、男は譲らなかった。
勝呂が人質に取られているのだ。
燐は震える自分の手をなんとか持ち上げて、ベルトを外した。
カチャカチャと響く金属音がやけに生々しい。
男はじれたのか、ジッパーを勢いよく下ろされてしまった。
びくりと止まる燐の手を、ズボンに導く。
「自分で、降ろせよ」
頬にかかる男の湿った呼吸。
燐はゆっくりとズボンから足を抜いていった。
白い足が外気に晒される。男は燐の足に手をやると、靴下の布地を噛んだ。
そのまま首を動かせば、靴下は燐の足からぬけ落ちていく。
勝呂が、獣のように燐の体から布地を奪っていくようだ。
燐は別人だと思っていても、勝呂のそんな姿を見たくなくて目を閉じた。
「目を開けろ」
もう片方の靴下も奪われて、二足は燐の腹の上にぽとりと落ちた。
唾液がついていたのか、銀色の糸が靴下と男の口を繋いでいた。
燐は見たくもない姿を見せられた。
自分は、シャツと下着一枚だ。
のし掛かる男は、自分がかっこいい奴ランキング上位に食い込む、初めてできた友達の姿をしている。
押し倒されたことで、今自分がどのような状況かを思い知らされる。
床も、上も下も左右も。全面鏡張りだ。
ミラーハウスに映し出される光景は、燐の視界と精神を嬲るには持ってこいの状況だった。
男の手が、ラッピングされた包みを剥ぐように燐の首元を覆うネクタイに延びる。
しゅるりと音がして、首からネクタイが外されていく。
男にすべてを暴かれるのはもはや時間の問題だった。
男の顔が、ゆっくりと燐の顔に近づいていく。
燐は全力で抵抗した。青い炎が出せたのなら、燃やしていただろう。
燐は無理矢理にでも炎を出そうとして体に力を入れるが、男はそれを制止した。
「炎出ないんだろ?その方がいいさ。この体の持ち主。勝呂君がどうなるかわからないからね」
「え・・・」
「取り憑かれている人間を、炎で燃やしたことなんてないだろう?
悪魔だけが燃えればいいけれど、
その奥にいる人間の精神までいっしょに燃えないとも限らない。
わかるだろう。今この体の主導権が誰なのか」
「そんな」
「だから、おとなしくするべきだ。ああ、お友達の勝呂君も今君のことを見てる。
見せればいいのさ。すべてを。恥ずかしがることじゃないさ」
その言葉に燐は真っ青になった。今から男にされることを。見られる。
友達にそんなみっともない姿を見られるのか。絶対にいやだ。
勝呂は全力で抵抗しろと言った。
しかし、友達を傷つけることなどできない。初めてできた友達を。
「やめろッ!!俺は男だッ!!!」
「知ってるよ、だから全部奪ってあげる」
燐は男の肩を押すが、しっぽからの刺激に力が出ない。
(そんな・・・嘘やろ・・・)
勝呂は、その光景を他人のような視点で眺めていた。
奥村が。なんでこんな目に合わないといけない。
そんなこと許せない。許さない。
脳裏には、取り憑いている男の生前の記憶がまるで点滅するライトのように浮かんでは消えていく。
記憶の中で男は、愛していたものへ思いを遂げようと、執拗に迫っていた。
見てくれないなら、なじってくれ。愛してくれないのなら、殴ってくれ。
それだけでもだめなのか。ひどい。こんなにも君を思っているのに。
君を。君を。君を思うことすらだめなのか。
認めてくれないのか。わかった。それならただ一度だけでいい。
この願いを叶えてくれたのなら君から離れるようにするよ。
近寄らないよ。だからこの言葉を―――
縋った男を男子生徒は拒絶した。そして、男の足はもつれてそのまま。
記憶の渦に飲み込まれそうな勝呂に、声が聞こえてきた。
「勝呂・・・ッ」
勝呂は、我に返った。燐の唇まであと数センチだ。
燐は嫌がっている。そんな友達を見捨てるのか勝呂竜士。
(アカン!!!!)
勝呂は全力で抵抗した。
手を燐の頭の脇に張って、顔が燐に近づかないようにした。
しかし、勝呂の体の中で暴れる悪魔はなんとかして主導権を取り返そうと必死だ。
悪魔には、未練があった。
生前できなかったことを、今この時に実行しようとしているのだ。
積年の思いもあるだろう。しかし、悪魔である男はもう死んだのだ。
死んだ人間に、これ以上振り回されてたまるか。しかも、変態だ。
友達が変態の毒牙にかかろうとしているのを、自分が止めずしてどうする。
(こんな状況で奥村を手に入れてたまるか!!!)
身体の中で暴れるそれを抑えつけて、勝呂は燐の耳元に顔を寄せた。
悪魔を抑えこんでいるせいで、身体のそこかしこに力が入りすぎている。
唇を噛みしめていたせいで、口の端から血がぽたりとおちた。
血が、燐のほほを伝って赤い線を引いて落ちる。
勝呂はごく自然な動作で、その血を舐めとった。
男がやったのだと思ったのだろう、燐は身を竦めている。
安心させるように、勝呂はつぶやく。
「奥村、堪忍な」
勝呂は、自分になぜ男が憑りついたのかがわかった。
暴れるこの悪魔は、自分の中に眠っていた衝動に似ている。
視線を、床に張られた鏡に向ける。
そこにいるのは、自分だった。
男は、自分の心の隙間に。燐が好きだという勝呂の想いに入り込んでいたのだ。
まだ、自覚すらなかったその心に。
勝呂は、顔を滑らして燐の胸元に口を付けた。
息がかかったのだろう。くすぐったそうに燐は身をよじった。
そのまま、何度も唇で燐の体を服越しに触る。
燐はそれを恐る恐る見ていたが、やがて勝呂の意図に気が付いた。
燐の服の上には、勝呂の血で描かれた梵字が刻まれている。
燐は、悪魔の言葉を思い出す。
『悪魔だけが燃えればいいけれど、
その奥にいる人間の精神までいっしょに燃えないとも限らない』
勝呂は、にやりと微笑んだ。
「来い!!!伽樓羅!!!」
勝呂の全身が赤い炎で包まれる。
燃える。燃える。燃えていく。
燐は、叫んだ。
「勝呂―――――!!!!」
ミラーハウスが、真っ赤に燃えて輝いた。
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