青祓のネタ庫
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「僕は・・・間違ってなかったよね?」
雪男は修道院の横に設置された共同墓地にいた。
墓石の十字架の前で、雪男は呟く。
花屋で買った花束をそっと墓地の前に置く。
墓地は少し汚れていた。
それを丁寧に拭って、水で洗い流す。
結果的に兄は人間としての死を迎えた。
それは、「人間」としての死である。「悪魔」としても当てはまる「奥村燐」自身の死には直結しない。
青い焔に包まれた後、奥村燐は目覚めた。
しかし、身体の中に焔を取り込んだことで悪魔としての力は更に増してしまったのだ。戻ってきた代償ともいうように、焔は人間としての奥村燐を焼き尽くした。
虚無界での相次ぐ戦いで焔に馴染みすぎていたという原因もある。
息を吹き返した燐は、もう倶利伽羅だけでは焔を押さえることはできなかった。
「だからね、神父さん。僕も兄さんの背負ってるものを背負おうと思ったんだ」
遠くから雪男、と呼ぶ声が聞こえた。
「兄さん」
雪男は呼びかける。燐は歩いて、墓地の前に立った。
その姿は以前となんら変わらないように見える。
燐は雪男がしたように花束をそっと墓地の前に置いた。
かがんだ時に、銀の鎖に通された青いロザリオが首元から覗いた。
「兄さん、ロザリオには変わりない?」
「今のところないな。でも、こんなロザリオどっから手に入れたんだ?」
「覚えてないの?それ、神父さんが僕らに誕生日プレゼントにってくれたやつじゃないか」
その証拠に、ロザリオの裏側には「Polaris-1227.24time」と文字が彫ってある。
12月27日24時に見た北極星。
星空、北極星、ロザリオ。神父から贈られたものが今の兄弟を生かす糧になっている。
雪男は半ばあきれた声を出した。それに対し燐は首を傾げる。
「そうだっけ?・・・ああ、そうか半分こしたからだよ。俺が鎖で、お前がロザリオの方持ってたからだ」
「本当にそう?忘れてただけじゃない?」
「うっせーぞ眼鏡!」
「はいはい、あんまり怒らないでよ。焔が出るよ」
「・・・・・・悪い」
燐は顔を逸らした。焔が出れば、それは雪男の負担に繋がる。
燐にはそれがたまらなく嫌だった。
雪男は燐の逸らした顔を自分の方に向きなおさせる。
「兄さん、僕はひとかけらも後悔してないよ。
後悔しているといえば、兄さんを失うかもしれなかったことだけ」
焔を押さえるために、倶利伽羅だけではなく聖具―――ロザリオを用いた封印を使用した。
そして、その封印の要を果たしているのが雪男だ。
メフィストがこの封印に一役買っている。
焔を押さえるためのブレーキ役に雪男の身体に流れる血を使ったのだ。
雪男と燐は兄弟だ。身体には同じくサタンの血が流れている。
古来から呪術、封印を用いる際に血液は使用されてきた。
巫女や神官などの力持つものの血はそれだけで強力な力を持つ。
サタンの血縁ともなれば、その血がもつ力は他と比べ物にならないくらい強い。
燐の身体に必要以上の焔が宿れば、聖具――ロザリオがそれを阻止する。
それ以上の焔がくれば、今度は雪男の血をもって阻止する。
二重三重にも施された封印。そうでなければ人間としての形を保っていられない。
燐が人間として生きていくために。
雪男はそれを選択し、結果燐は人間として生きている。
サタンの血を引く双子だからこそ、できる役割。
「お前は、それでいいのか?」
「いいんだよ。兄さん。一人で背負えないなら、二人で背負えばいいんだ」
そして、周りを頼ればいい。
二人を呼ぶ声が聞こえた。あの声はシュラの声だ。その姿は遠目からでもわかる。
しえみもいる、続けて勝呂、志摩、子猫丸、神木。
足元の方にはクロがいるのが見えた。
こちらに向かっているようだ。
燐は手を振って皆に応えた。
「なぁ雪男」
「なに」
「こういったら、怒られるかもしんねーけど」
「大丈夫だよ兄さん。誰も、怒ったりしないよ」
これからも不安は止まないだろう。いつ焔が暴走してしまうかもわからない。
突然、人間じゃなくなるかもしれない。
でも、それでも。
「俺、すっげーしあわせだ」
「それでいいんだよ」
もう孤独じゃない。
もう一人じゃない。
道が分かれたなら、遠回りして会いに行こう。
離れ離れになったら迎えにいくよ。
迷子になったら空を見て、星を探そう。
そして、北極星に背を向けて、またここに帰ってくるんだ。
二人で一緒に。
墓地に一陣の風が吹いた。
しあわせになれよ、と父の声が聞こえた気がした。
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