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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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Polaris-1227.24time

何度も何度も叫んだけれど、青い焔は何も言わぬまま燃え続けた。
どうしてだよ。
なんで自分はこんなに無力なんだ。

「にいさん・・・・・・」

焔が消えた時、アマイモンの姿はどこにもなかった。
青い焔に焼かれて燃え尽きたのかもしれない。
燐の身体だけが、焼け跡に倒れていた。
青い焔は燐の身体を焼いたりはしない。
しかし、焔を使ったことで残り少ない命を縮めたのは確かだろう。
雪男はふらつく身体を起こして燐の傍に近寄った。
まだ、血が出ている。燐はピクリとも動かない。
急いで、止血をする。


傷口を見て、雪男は言葉を失った。
助かるとか、そういうレベルの話ではない。
死が、迫っている。
兄を連れて行こうとしている。



このまま死ぬなんて、そんなこと許せるはずはなかった。
倒れている燐の身体を背負う。
アマイモンにやられた傷が痛むが、そんなことに構っていられない。
この状態の燐を動かすのは危険かもしれない。
だが傷の状態を見れば、一人じゃどうすることもできない。
シュラは医工騎士の資格も持っている。それにメフィストもいる。

「兄さん、死んじゃダメだ・・・」
助けないと。このまま死ぬなんて許さない。



燐を背負って歩き出す。
空を見上げると、星が輝いていた。
メフィスト達の元に戻るのに方角を確かめる必要があった。


北極星を探す。
あの空き地は北極星とは反対方向にあったはずだ。
雪男は北極星に背を向けて歩き出した。


「ゆ、きお・・・」
「しゃべらないで兄さん」
一歩一歩と進むうちにどんどん兄の体が重くなっていった。
人間は、死とともに体の力がなくなっていく。
生きている人間を抱えるのと、死んでいる人間を抱える違いとは重さにある。
生きている人間は自身で身体を支えている。
死んでいる人間は自身で身体を支えていない。そのため、重さに違いが出てくるのだ。
死が近づくとともに重さが増しているのは、死ぬ人間が自分の重さを支えきれなくなるからだ。

「大丈夫だよ、絶対に助けるから」
「・・・ごめん」
「なんで謝るの、僕が聞きたいのはそんな言葉じゃない!」

燐の血が、雪男の背中を伝う感覚がわかった。
止血はしたけど、血が止まらない。命を留める血が流れ出て、雪男に付着していく。



突然、携帯電話の着信音が聞こえた。
雪男の携帯の音ではない。燐は、動かない手を動かして、携帯電話を取り出した。


題名:兄さんへ

ちゃんとご飯食べてる?兄さんがいないから
勝呂君やしえみさんも心配しています。
兄さんが帰ってこれそうになかったら僕が迎えに行くから
迷子にならないようにそこにいて。
必ず迎えに行くよ。
だから――――




「お前、メールとか・・・電話とか・・・いっぱいしてくれてたん、だな」
「当たり前だろ、僕だけじゃない。しえみさんだって、勝呂君だって、皆・・・ずっと・・・」
局で止められていたメールが次々に燐の携帯電話に届いた。
物質界に帰ってきたことで、電波が繋がったのだ。
燐の携帯電話は鳴り止まなかった。
勝呂、神木、志摩、子猫丸、しえみ、シュラからもきている。そして、雪男が一番多い。
電波は届かなくても、皆ちゃんと伝えていた。

「おれは、ひとりじゃ・・・なかったんだな」
「当たり前じゃないか!」



画面を見て、燐は嬉しそうに笑った。
俺は支えられていたんだ。孤独な世界でも、周りに皆がいなくても。
おれは、ひとりなんかじゃない。
それが、どうしようもなく嬉しかった。



「雪男・・・ごめん」
「聞きたくない」
「おれ、最期まで・・・ダメな兄貴だった・・・」
「黙ってて」
「お前を、ひとりに・・・しちまう・・・」
「謝るくらいなら、しないでよ」
「ゴメン・・・頑張ったん、だけど・・・な」
「兄さんは、馬鹿だよ、一人で頑張って・・・本当に馬鹿だ!」




カシャン




返事の代わりに携帯電話が、燐の腕から落ちた。
雪男は歩みを止めた。

背中から聞こえていた鼓動が止まっている。
身体が重い。
そして、あんなに熱く感じていた血が、今は冷たい。

雪男は空を見上げた。
三人で見上げた星空を思わす、満点の星空だ。


「最期まで聞いてよ・・・・」


忘れもしない。
あの日、神父が教えてくれたカシオペヤ座と北斗七星の間。
Polaris-1227.24time
12月27日。僕らの誕生日だった日、24時にみた北極星。
三人で見た星空。
星は変わらず輝きを放っているのに。
あの頃の温かさは、皆雪男の手から離れていく。


「だから、兄さんの背負っていたものを、僕にも分けて欲しかった。
 一人で頑張るんじゃなくて、背負わせて欲しかった・・・」

「そう、思ってたんだ・・・」

雪男は落ちた携帯電話を拾って画面を見た。



題名:兄さんへ

ちゃんとご飯食べてる?兄さんがいないから
勝呂君やしえみさんも心配しています。
兄さんが帰ってこれそうになかったら僕が迎えに行くから
迷子にならないようにそこにいて。
必ず迎えに行くよ。
だから――――

生きて。


画面に、涙が伝った。
生きていて欲しかった。

ただそれだけでよかったのに。

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