青祓のネタ庫
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門から、物凄い勢いで青い焔が出てきた。
サタンの焔。いや、違う。この焔は。
「避けろ!雪男!!」
シュラが叫んだ。
門から噴出する瘴気と青い焔。
その勢いに飲まれて、雪男の身体は吹き飛ばされる。
飛ばされた中でもハッキリ見えた。
門が、青い焔に焼き尽くされて消えていく様を。
(そんな、嘘だろう)
間をおいて、地面に叩きつけられる。
一瞬息が詰まった。咳き込んで、一呼吸置く。
辺りを見回せば、森の中だった。
シュラやメフィストと引き離されてしまったらしい。
空き地から随分飛ばされてしまった。
戻らないと。
起き上がろうとすると、目の前に人が立っていた。
黒い服、尖った髪型。兄を連れ去った張本人。
「いきなり大当たりー」
「アマイモン・・・!」
反射的に銃を取ろうとするが、その手を素早く踏みつけられた。
手から鈍い音がした。
「君がいると、奥村燐がこちらにこないんですよね。邪魔なんですよ」
「は、よく言うよ。邪魔なのはそっちだ。兄さんを連れ去っておいて」
手の痛みは激しいが、そんなのに構っていられない。
憎い相手を目の前にして、黙っていられるか。雪男は憎しみを宿らせた瞳で睨みつける。
「来たのは奥村燐の方ですよ」
「そうするように仕向けたのはお前らだろう」
「決めたのは奥村燐でしょう。君達が弱いから、彼はこちらに来た。違いますか?」
燐は皆を守るために虚無界に堕ちた。
その原因は自分達が弱かったからだ。
でも、それでも。
「兄さんを諦めるのに、弱さを言い訳にしてたまるか。
僕は何年、何十年かかっても、きっと取り返してやる。諦めてたまるか!」
雪男のセリフにイラついたのか、アマイモンは雪男の手を再度踏みつけた。痛い。
激痛と言ってもいいだろう。
だが、目だけは逸らさない。
「君、やっぱり邪魔です」
「奇遇だな、僕もだよ」
アマイモンが、手を振り下ろす。
殺されるだろうか。兄に会えないまま。
そんなのは嫌だ。
ここでは死ねない。ここで死ねば、兄は本当にこちらに帰ってこなくなるかもしれない。
だが、雪男の身体を刺し貫こうとする手は止まらない。
反射的に目を瞑ってしまう。
死ぬ寸前の光景が暗闇とは、なんとも滑稽だ。
せめて、最期の瞬間までアマイモンから目を逸らさずにいたかった。
死ねば本当の暗闇が待っている。
ドスッという肉が引き裂かれる音。
身体を刺しぬく腕。
血飛沫が辺りに撒き散らされる。
頬に温かい血が飛んできた。
ここでは死ねない。死んでたまるか。
いや、違う。
なんで僕は生きているんだ?
雪男は目を開ける。
「はは、君は本当に面白いです」
「・・・うる、せぇ・・・・・・」
雪男とアマイモンの間に立ち塞がる姿。
それはずっと望んでいた、探していた姿だった。
「にい、さん」
でも、こんなのおかしい。こんなのは違う。
兄の体が、アマイモンによって貫かれている。
そうなるのは僕だったはずなのに。
アマイモンが腕を引き抜こうとする。
それを、兄は左腕で止めた。
右手一本で倶利伽羅の切っ先をアマイモンに向ける。
アマイモンを逃がさないために、腕を掴んだのか。
動いたせいか血が、先ほどとは比べ物にならないくらい兄の体から溢れ出てきた。大量の血が地面に落ち、倒れている雪男の顔に滴り落ちる。
熱かった。
焼けるようなこの熱さは、兄の命が流れ出ているからだ。
燐はぽつりと呟いた。
「てめぇは俺を怒らせた」
倶利伽羅の切っ先がアマイモンの身体に突き刺さる。
同時に、青い焔が湧き上がった。
地の底から湧き上がる、怒りの焔だ。
大切なものを殺そうとした者への怒りが、燐を駆り立てる。
アマイモンと、そして燐の身体を青い焔が包み込む。
燐は一度だけ後ろを振り返った。雪男が呆然とした表情で見ている。
孤独な世界でも生きてこれたのは、雪男の声が聞こえたからだ。
門が開いて、物質界へ戻れると思ったとき嬉しかったんだ。
また皆に会えると思ったから。
でも、アマイモンはその皆を殺そうとした。
本当なら虚無界で門が出現した時に、門を壊せばよかったんだ。
そうすれば止められたかもしれない。
アマイモンを虚無界で引き付けて、また一人で戦えばこんなことにはならなかった。
できなかった。
帰れると思ったら、できなかったんだ。
焔で門を壊したけど、同時に門をくぐってしまった。
そのせいでアマイモンがこちらにきてしまった。
これはきっと俺のエゴへの代償なんだろう。
でも、雪男は生きている。
皆も生きている。
よかった。
あとは、俺がこいつを殺せばいい。
焔の勢いが増すほど、燐の体から血が溢れ出てきた。
こんなに失血したまま戦うのは虚無界にいたころでもなかった。
それでも、この行為を止めようとは思わなかった。
悪魔の回復能力があるとはいえ、それも万能ではない。
悪魔は人間よりも死ににくいというだけで、不死というわけではないのだ。
「馬鹿ですね、このままだと君も死にますよ」
「上等だ。てめぇは俺と地獄に堕ちろ」
「はは、そういうの嫌いじゃないですよ」
青い焔に包まれて、雪男の顔も見えなくなった。
雪男、ごめん。
最期まで俺はダメな兄貴だった。
お前を、ひとりにしちまうな。
雪男の目の前で、青い焔は燃え続けた。
アマイモンと、燐の身体を包んだまま。
いつまでも燃え続けていた。
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