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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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戻る為の決意

アマイモンとやり合って気づいたことだが、あいつはいつも俺を倒した後
同じ方向に帰っていく。そこには住処があるのかもしれないが、なぜだかそれは「違う」と直感が告げていた。
アマイモンは出会った当初から物質界に馴染んでいた様子だった。
と、すれば以前から頻繁に物質界に行っていたのだろう。
虚無界に堕ちてからもアマイモンは唐突に現れたかと思えば、ふとその姿を消して何日も来ないこともあった。物質界に行く道が、その先にあるのかもしれない。


燐は近づいてきた悪魔を焔でなぎ払って、森の先を見た。

「・・・森の中に入っていったなアイツ」

学園に向かっていた悪魔は、ほとんど殺しつくした。
いつからか数が減り、いまや向かってくるのは虚無界に元からいたやつらばかりだ。

なぜその違いがわかるかというと、強さが違うからだ。
学園、つまり物質界から来た悪魔と虚無界の悪魔のレベルは全く違う。
そんな違いがわかるようになったのは成長したということなのだろうが、なんだか複雑だ。
焔はどんどん手に、剣に馴染んでくる。まるでこれが本来の姿なのだというように。



いや、違う。そうなりたいわけじゃない。



「しっかりしろ、俺は、帰らないといけないんだ」
剣を握りなおして森の奥へ入る。
根城にしている修道院からは随分離れた場所だ。
ここにも悪魔は住んでいるようだが、燐の気配を察してか襲ってくるものはあまりいなかった。悪魔は上のレベルの相手にはそうそう手を出さない。燐自身が強くなった証拠でもあった。
茂みの間から出ると、木や森が避けているかのようにぽっかりと空いた空き地があった。
腰を低くして様子を伺う。悪魔の気配はなかった。
円状に空いた空き地の中央には、ひずみ、というべき裂け目があった。
言うならば、空中が破れている。裂け目からは紫色の空間が覗いていた。
異様としか言いようがない。
周囲にアマイモンの気配はない。
燐はひずみに近づいていく。懐かしい感覚がした。
虚無界とは違う、物質界の空気ともいうべき匂いがする。
久々に、肌がざわつく。心が逸る。

「ここから、帰れるかもしれない」
「させませんよー」



背後から、身体を捕まえられた。
しまった。気が緩んだせいで。気配に気づけなかったなんて。
背後から伸びた腕、鋭く尖った爪が喉元に食い込んでくる。少しだけ血が出た。何度も聞いた声が、耳元で囁く。

「君、まだ諦めてなかったんですね。往生際の悪い」
「うっせぇ。」

アマイモンは、燐を拘束しながら囁いた。拘束といっても、後ろから抱きしめている形だ。
だが、腕はしっかりと燐の急所を押さえているため、燐は身動きが取れない。唯一動く口でアマイモンに反撃する。


「諦めの悪さだけは誰にも負けねぇ。人間はしぶといんだよ」
「君は悪魔でしょう。虚無界に堕ちて平気な人間などいない」
「じゃあ俺がその最初の一人ってのはどうだよ」


話している間に隙ができないかを伺ったのだが、相手も手ごわい。
爪を強くたてられる。少量の流れ出た血を背後から舐め取られた。
身を捩って逃げようとするが、引き寄せられる。
舌が喉元を這いまわって気持ちが悪い。
「君が物質界に戻りたいのは、そこに帰る場所があるからですよね」
「・・・何がいいたい」


「君が帰る場所を無くせば、帰るなんていう概念はなくなるんじゃないですか?」


ぴくりと燐の体が反応する。こいつは何を言っている。
帰る場所をなくす。意味することなんていくらでも浮かんだ。
「そもそも学園を攻撃したのだって君の帰る場所をなくせばいいと思ったからやったんですよね。
その前に君がこっちに来たからできなかっただけで。今なら簡単なんじゃないかな」
「おい、てめぇ・・・」


「いくらでもいるなぁ。あの赤い髪の女に、グリーンマンを連れたピンクの女。坊主の3人組に、巫女の女。ああ、そうだ。君の弟なんか」


「あいつらに手ぇ出すな!!」


燐の怒りに呼応して焔が噴出す。アマイモンは素早く距離を置いた。
離れてもよく見える。青い焔を纏って、怒りに燃える姿。
人間などとよくも言う。
まるで悪魔じゃないか。
「それでよく人間だと言えますね」
「黙れ」
「まぁ、君が悪魔なことは変わらないですし、邪魔ものは排除するに限る」
「黙れ!!」
アマイモンはひずみの前に立った。
目的ができた。物質界に行こう。邪魔者を排除しなければ。
いつものように次元の境目をこじ開ければいい、そう思っていたが。

辺りの空気が変わる。

燐も気配の違いに気づく。まるで物質界からこちらへ何かが来るようだ。
ひずみが空気に反応する。
突然、ひずみを中心にいくつもの魔方陣が展開して、門を形作っていった。メフィストが使用している術式だ。


「兄上・・・の術ですか。物質界から虚無界への扉を開けるとは・・・」
アマイモンの言葉に燐は戦慄した。
まさか。物質界からこちらにアプローチがあるなんて思っても見なかった。
帰れるかもしれない。その思いは燐を強く惹きつける。
だが今はまずい。
アマイモンが物質界に行けば、皆が殺されてしまう。
考えあぐねているうちに、門が完成に近づいていく。
アマイモンはその扉を見た後、燐の方に振り返った。


「自分で開ける手間が省けました。兄上には感謝しないといけませんね。
 よく言うでしょう、ゴミはゴミ箱にって。コレを期にしがらみなんか捨てればいいんですよ」


門が完成してしまった。簡易版ゲヘナゲート。
まだ扉はは閉ざされている。

ゴンッ

アマイモンは扉を叩く。少しだけ空いた。
その隙間から懐かしい物質界の空気が入ってきた。

ゴンッ

アマイモンはもう一度扉を叩く。

もう開きそうだ。
帰り道が、開く。
待ち望んでいた、ずっと探していた。
目の前にある。
だけど。
燐は覚悟を決め、焔を纏った。
剣を構えて門に向かって走る。
このままこいつを行かせれば、皆死んでしまう。

ゴンッ

扉が開いた。

(兄さん、僕と一緒に帰ろう)

雪男の声が聞こえた気がした。
近くにいるんだろうか。懐かしい声だ。
泣きそうになるほどに。

(ああ、帰りたいな)

みんなのいる場所に帰りたい。


燐は剣を振り下ろした。
門が、焔に包まれる。

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