青祓のネタ庫
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「ほら見ろ、アレが北斗七星だ。ひしゃくの形してるだろ?」
「本当だ」
「え、どこだよ」
三人で空を見上げる。屋根の上から見る星空は、地上から見るよりずっと近く感じる。
神父が燐と視線を合わせて、星空を指した。
ようやく燐も北斗七星を見つける。
「おまえら、俺がいない時は屋根の上には登るなよ。危ないから」
「うん」
「えー、いいじゃん別に」
「怪我したらどうすんだ」
神父は燐の頭をなでる。夜はまだ寒い。
雪男は体が弱いので神父の足の間に挟まって、上から毛布をかけられている。燐は、二人から少しはなれたところに座っていた。
「べつに、怪我しても俺、治るし。いい」
「おい、燐それは聞き捨てならねーぞ」
燐の耳を引っ張って、傍に引き寄せる。
そんな風に言う子に育てた覚えはないぞ、と諭した。
「お前が怪我すると俺が心配なんだよ。寒いだろ、こっちこい」
「・・・だって」
燐はチラッと神父の胸元を見て、また離れようとした。
その動作だけで察しがつく。
こいつ、俺の肋骨折ったこと気にしてるのか
幼稚園で暴れた燐を抑えたときに、怪我をした部分だ。
もう治っているし、神父自身は全く気にしていない。
だが、燐は違ったらしい。ほんの少しだが、人と距離を置くようになったのはそのためか。
神父は離れようとする燐の服を掴んで、思いっきり抱き寄せた。
「なにすんだよ!」
「俺は寒いんだ。お前も俺を暖める湯たんぽになれ」
「兄さんも入りなよ」
神父の足の間に放り込まれた。毛布の中から出ようとするが、雪男に頼まれたら断りにくい。
燐の身体は外にいたせいですっかり冷え込んでいた。
「兄さんの体冷たいよ。もっとこっち寄って。温めてあげる」
「寒いだろ、いいよ」
「はいはい、いいから空見てみろー」
二人並んで、神父に上から抱きこまれる。
体温のおかげで、冷たかった燐の身体も温かくなってきた。
「北斗七星は教えたよな、あとはアレだ。」
指を夜空に指した。指の先が示す方向にはWを形作る星がある。
「あれがカシオペヤ座だ。この2つを覚えてたら迷子になっても家に帰れるからな」
「どういうこと?」
首をかしげる雪男。燐はまだ見つけられないらしい。
「カシオペヤ座と北斗七星の間に北極星があるんだ。わかるか、一番明るい星だ」
「あれかなー」
「俺わかった。アレだな!」
燐にもみつけやすかったらしく、得意げだ。
神父は二人の頭を撫でて、呟く。
「俺達が住んでいる南十字男子修道院は、名前の通り南にあるんだ。北極星は北を示す星。昔から、道に迷った旅人が目印にした星なんだよ」
「じゃあ、アレと反対方向に帰ればいいんだね」
「え、どういうことだ」
「北の反対は南だよ兄さん」
「北極星に背を向けれて帰ればいいんだ。燐はそう覚えてろ」
「わかった」
「北斗七星から北極星を辿るには、北斗七星が作るひしゃく部分の先端の2星。その長さを5倍した先だからな」
「そうなんだ、覚えとくよ」
「何言ってんのかわからん」
「大丈夫だよ。もしもの時は雪男が教えてくれるさ」
「うん、僕が教えてあげるよ」
「なんだよそれ」
三人で星空を見上げることも、時がたてばできなくなるだろう。
だけど、これだけは二人に覚えていて欲しかった。
「道に迷ったら空を見ろ。空が帰り道を教えてくれるから」
そして、ここに帰ってきてくれ。
兄弟は神父が思う深い部分まではまだわからないだろう。
だけど今はそれでもよかった。
三人で並んで見上げた星空は綺麗で。
とても温かかった。
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