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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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電波に乗せた傷の歌

電話をかける。

おかけになった電話番号は電波の届かないところにあるか、
電源が入っていません
お手数ですがもう一度おかけ直し下さい
おかけになった電話番号は電波の届かないところにあるか、
電源が入っていません
お手数ですがもう一度おかけ直し下さい


メールを送る。

送信できませんでした
送信できませんでした




空高く携帯電話を上げたけれど、電波が入る気配は無い。
空の色は相変わらず真っ暗で、雲は紫色をしている。
電波が入る気配は無い。
開いていた携帯電話を閉じる。

「やっぱり、ダメか」

うず高く積まれた悪魔の死体の上で空を見上げる。
何回も繰り返したけれど、諦めることはできなかった。
せめて、ひと言だけでも物質界に届けばいいのに。
そんな思いで繰り返す、意味のない行為。
携帯電話の電池の残りも少ない。もうすぐ携帯も使えなくなる。
虚無界に来てから繰り返している、悪魔の殺害と物質界への連絡。
悪魔のほうは滞りなく殺している。
もう何匹殺したかなんかいちいち覚えていない。

「どいつもこいつも嬉しそうな顔しやがって、胸糞悪ぃ」

若君が帰還された!と悪魔達は狂ったように燐をもてはやしている。
もてはやす、といっても普通とは意味が違う。
次々に燐に襲い掛かっては殺されるという正に悪魔の宴だった。
気に食わなくても続けるのは、ひとえに学園の平和のため。

「あー、ったく服がまた汚れやがった」

悪魔の返り血で、黒かった学生服も青く染まっていた。
悪魔の血は時間がたつと青く変色するらしい。
しかも、こちらで暮らしてから気づいたことだが、悪魔の血は取れない。
死んだ後もこびり付いてくるなんてめんどくさい事この上ない奴らだ。
近くにあった悪魔の頭を蹴り飛ばして、死体の山から下りる。

根城にしている修道院に帰るか、そう思っていたら。


着信音が鳴った。


慌てて携帯電話を取り出して、名前を確認する。
非通知。
それでもよかった。電話に出た。

「コンニチワー」
「てめぇかよ・・・アマイモン」

一気にテンションが下がる。

「最近どうしてるのかと気になりまして」
「どうしたもこうしたも変わんねぇよ」
「おや、贈った悪魔たちは気に入りませんでしたか残念」
「100匹越えた辺りから悪魔の数も数えてないな」
「僕は10匹贈った時点から数えるのやめましたよ」

こいつと話してると無駄話が多すぎて電池が勿体無い。

「もういいわ・・・」

通話を切る。
同時に、持っていた剣を近くの木に突き刺した。
木から青い焔が燃え上がり、上からアマイモンが落ちてきた。

「電話で会話する必要ねぇだろ。鬱陶しい」
「君、成長しましたね。最初の頃なんか僕の存在に気づかなかったのに」
「あ、あんなことされたら誰だって警戒するわ!!」

当初、悪魔の相手だけで精一杯だった。
悪魔を殺しつくすことに疲れ果てて、こびりついた血を流すこともせず修道院のベットに倒れこんだ。
虚無界の修道院は物質界と作りが同じだ。
その日、物質界では雪男の部屋に該当する部屋。そこで眠りに着いた。

次に目が覚めたとき、上にはアマイモンが乗っかっていた。
どうやら服を脱がそうとしていたらしい。
しかし、血が染み込んだ服はなかなか脱がせない。
手こずっているうちに目が覚めた、というわけだ。
悪魔の気配は読めるようになったが、上級への対処はまだできなかった。
この時ほどあせったことはない。
雪男の部屋の中で危うく大変なことになるところだった。

「失礼ですね。親切でしてあげようと思ったのに」
「何をだよ!何を!しかもお前あの時、暴れる俺を押さえつけて服破ろうとしただろ!」
「そうでしたっけ?」
「・・・もういいわ」

剣を抜いて、アマイモンに対峙した。
もう幾度も繰り返したが、まだ物質界への帰り道を吐かせるまでは至っていない。

「今回は、てめぇの携帯の電池パックくらいは奪わねぇとな」
「え、ちょ。地味に困るんですけど」
「俺の携帯、充電切れそうなんだよ」

燐は地を駈けた。アマイモンが、応戦する。
どちらも、表情は笑っていた。






電話をかける。

おかけになった電話番号は電波の届かないところにあるか、
電源が入っていません
お手数ですがもう一度おかけ直し下さい
おかけになった電話番号は電波の届かないところにあるか、
電源が入っていません
お手数ですがもう一度おかけ直し下さい

メールを送る。

送信できませんでした
送信できませんでした




ボロボロになった腕を上げて、電波が入らないか試した。
充電は満タンだ。

「今・・・回も、だめ・・・か」

電池パックを奪えるくらいは成長したが、勝てるまではいってない。
体中血にまみれて、骨が折れて、痛みでどうにかなりそうだ。
それでもアイツは俺を殺さない。
寸前で生かしている。
息をしてみるが、こみ上げてくる血が呼吸を遮る。
一回血を吐いて、息をした。多少は楽になった。

足が折れてて立てないから、腕で這いながら修道院の中まで入った。
壊れかけた聖堂の中央に、折れた十字架がぶら下がっている。
祭壇まではいけそうにない。途中で力尽きて、そのまま動けなくなった。
痛みは我慢していればいい、いつか治る。そのいつかまで我慢すればいいだけだ。
床に顔をつけたまま、視線だけで折れた十字架を見た。

物質界にいたころは、聖堂でよく雪男とかくれんぼしたな。


他愛の無い思い出が、懐かしい。


痛みで意識が遠ざかっていく。
意識が落ちる前、携帯の画面を確認した。
着信も、メールの受信もなかった。



ふいに涙がこみ上げてきた。
こんなにも、泣きたくなるなんて。
きっと傷の痛みのせいなんだろう。

痛みは我慢していればいい、いつか治る。そのいつかまで我慢すればいいだけだ。
次に目が覚めたとき、この痛みが治っていればいいのに。


もう一度、携帯の画面を確認した。
着信も、メールの受信もなかった。



電波も、俺の声も、ここからじゃ届かない。

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