青祓のネタ庫
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小さな頃、神父さんは僕と兄さんに北極星の見つけ方を教えてくれた。
北極星の位置を知っていれば、迷子になっても修道院に帰れるから。
だけど、兄さんはいつも北極星を見失ってしまう。
だから星を見つけるのは僕の役目だった。
北斗七星が作るひしゃく部分の先端の2星。
その長さを5倍した先に北極星は輝いている。
兄は覚えているだろうか。
北極星の見つけ方を。
兄は帰れるだろうか。
僕達のいるところに。
夢の中、兄が遠くに去っていく風景が見える。
兄の温かい手が、僕の元から離れていく。
いかないで
言ってみたけど、兄には聞こえなかったらしい。
体温が離れていく。
その手を掴みたかったけど、僕の身体は動かない。
じゃあな
ひと言だけ兄が言った別れの言葉。
今も耳に残る寂しそうな声。
僕は止めることができなかった。
「にいさん」
無意識のうちに、天井に手を伸ばしていた。
ベットの横に設置された椅子に、望んだ姿はなかった。
青い月が空っぽの椅子を照らしている。
起きた時から感じていた、言いようの無い喪失感。
神父さんが死んだ時と同じ感覚。
「にいさん・・・」
兄はいなくなってしまった。
その事実がどうしようもなく悲しかった。
次に目が覚めたとき、腕に包帯を巻いたシュラが椅子に座ってこちらを見ていた。
「シュラさん、無事だったんですね」
「まぁな、無様だろ」
話を聞けば、前線で腕をやられて身を潜めていたらしい。
見つけられては逃げ、見つけられては逃げの繰り返しで
傷を癒す暇も、連絡を取る手段もなくなってしまった。
そんなことを繰り返していたある日、いきなり悪魔の進行が止んだ。
悪魔達の進行方向の先に、アマイモンが現れたからだ。
「アマイモンが悪魔達に囁いていた言葉を聞いて、愕然としたよ」
我らの小さな末の弟は我らの手に落ちた。
目的は達成された。
末の弟はお前達との腕試しをお望みだ。
我らの悲願のために、虚無界に向かえ。
喜べ。我らの小さな末の弟は、我らのものだ。
悪魔達は一斉に歓喜の雄たけびを上げていた。
「若君が帰還された、って言ってやがったよ」
「やっぱり、兄さんは・・・」
「・・・すまない。雪男」
「予感がしたんです」
胸糞悪い、といった表情をシュラは隠さなかった。
結局、自分達がやったことは全て無駄になってしまったということだ。
だが、燐があちらにいかなければ間違いなくやられていただろう。
完全なる敗北。屈辱以外の何物でもない。
何よりもむかつくのが。
「あいつが、俺達になにも言わずに行っちまった事だ」
そうしなければならなかったことも。
そうせざるをえなかったことも。
そうしなければ守りたいものを守れなかったことも。
全部理解できるけど、それでも行かないで欲しかった。
「あいつ、ここが好きだったから守りたかったんだろうな」
初めて出来た仲間や友達を見捨てることができなかった。
雪男は、傷口を押さえて起き上がった。
まだ熱は下がっていないようだ。荒い息を吐きながら、搾り出すように雪男は言った。
「僕は、絶対に諦めません」
怪我人とは思えない力強い声で宣言した。
「当然だ、このままじゃ獅朗に合わせる顔がないからな」
諦めない。諦めてたまるか。人間はしぶといのだ。
今度は負けない。絶対に取り返してやる。
悪魔に思い知らせてやる。
兄さんが北極星を見失ったなら
僕が代わりに見つけてあげる。
物質界から届かなくても、虚無界まで聞こえるように。
北斗七星が作るひしゃく部分の先端の2星。
その長さを5倍した先に北極星は輝いている。
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