青祓のネタ庫
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本当ならこんなところ来たくなかったというのが燐の本音だ。
けれど任務、つまり仕事ならば仕方がないというもの。
燐は上からの命令に背いてしまえば即処刑とはいかないまでも、
面倒な監視や始末書を書かされてしまう立場だった。
それをよく自覚しているからこそ燐はおとなしく言うことを聞いているのだ。
けれど、その努力を無に帰そうとする男が燐の目の前にいる。
燐の頭をぐりぐりと押している男は、
顔だけは眩しいくらいのイケメン、アーサー=オーギュスト=エンジェルだった。
「全く、リーダー的存在である俺の言うことが聞けないとは躾のなっていない悪魔だ」
「誰だって悪魔の大群の中に突っ込めなんて命令聞けるわけねぇだろ!」
「同じ悪魔なのだから構わないのではないか?」
「何で俺の反応がおかしいみたいな反応してんだよ!
あんな腐った悪魔の中に入るのはいーやーだー!」
「お前、腐の眷属に好かれているだろう。不意を突いて燃やせば大丈夫だ」
「だから嫌だって言ってんだろ!」
若君若君と群がってくる腐の悪魔達を燐は怒りの一撃で燃やした。
けれどしつこい行為が売りの腐の眷属は
まるで突進する王蟲のように燐のいる場所に沸いて出てきた。
アーサーの言うことにも一理ある。
燐のいる所に悪魔が現れるのだから燐と一緒にいるアーサーの身が危険に陥るからだ。
だからといっていっそ突撃しろは作戦としては余りに単純である。
燐は青い炎を使って、目の前にいる悪魔を次から次へと燃やした。
青い炎を纏いながらも突進してくる悪魔はかなりのホラーだ。
燐が本気を出せばあれくらいの悪魔、一瞬で蒸発させられるだろうに。
手古摺る燐の姿を見て、アーサーは問いかけた。
「お前、体調でも悪いのか。何故腰を庇うような仕草をしている」
「俺だってわかんねぇよ。最近よく寝れてねぇのか。
朝起きたら全身が痛いんだ。これでもマシな方だっての」
「体調管理もできないのか。これだから悪魔は」
「悪魔は関係ねぇだろ、それに俺は至って健全な生活しかしてねぇ!」
「どうだかな」
アーサーは燐の背後でカリバーンを抜いた。
眩い光を纏い、アーサーは自身の髪にそっとカリバーンの刃を当てる。
格好も様になっている。これだからイケメンは、と燐は心の中で悪態をつく。
それでも、そのカッコよさは認めざるを得ない。
「カリバーン、我に力を」
アーサー、喜んで。貴方の体の一部はどんな場所でも私の舌を満足させる。
魔剣の歓喜の声と共に、刃が悪魔に降り注ぐ。
燐の青い炎とはまた違った美しさだった。
腐の眷属は全てアーサーの攻撃で焼き尽くされた。蒸発したと言ってもいい。
彼らを殺すにはそれくらいの容赦の無さが必要だ。
「これくらいのこともできないのか、屑め」
「うるせぇ!あれくらい俺もできる!」
「ならばしろ、そして体調が悪いのならそもそも任務など来るな。
必要なのは力であって、その力が発揮できない存在など邪魔だ。
今日は俺とお前だけだからよかったようなものの、他の祓魔師がいたのならばどうする。
人に迷惑をかけるな悪魔め」
「……ッ!」
アーサーの言うことはもっともだった。
言い方はきついし、燐への当たりも強いが間違ったことは言っていない。
例えば燐と一緒にいた仲間が、もしアーサーのように強くなければ。
手騎士や詠唱騎士のような、サポートが必要な仲間であれば。
燐は彼らを守るために、その身を擲ってでも盾にならなければならない。
アーサーの言うことを理解しているだけに燐も黙った。
どうしてだろう。最近燐の体はおかしい。
一時メフィストに相談したこともあったが改善の兆しは見られなかった。
朝起きたら体がだるく、熱っぽさが抜けない。
けれど熱があるわけでもないので、休むようなこともできない。
燐は思い通りにならない自分の体が歯がゆかった。
それにより、任務に支障が出ていることもまた許せなかった。
怒っているのは、アーサーに対してではない。思い通りにならない自分の体にだ。
アーサーは燐の頭をぎゅっぎゅっと押した。
最近、アーサーと一緒に任務に就くことが多いのだけれど必ずと言っていい程
アーサーは燐の頭を押してくる。
「なんだよ」
「いや、ただでさえ小さいお前の身長をもっと縮めてやろうと思っているだけだ」
「嫌がらせかよ!!」
燐はアーサーの腕を振り払った。こいつ、どこまでも俺を馬鹿にしやがって。
燐は怒ってアーサーを殴ろうとした。
けれどその拳をするりと避けて、アーサーは笑いながら去っていく。
まだアーサーに敵うまでの実力は燐にはない。
覚えてろ、と燐はまるで雑魚キャラのようなセリフを吐いた。
むかつく男だ。
気障だし、言うことはきついし、性格は最悪。
悪魔である燐に対して容赦はないし、顔を見ると自動的に殴りたくなる。
けれど、アーサーとのやり取りが燐は不思議と嫌いではなかった。
ずきりと体の奥底が痛む。
燐は眉をしかめると、腰を摩りながら帰路についた。
帰ったら事務作業が残っているがどうにも椅子に座って作業をやるには辛い体調だ。
そして、言いにくいけれどそういう場所が痛んでいるのも事実だった。
燐はこっそりと携帯で痔の病院でも探そうかと考えるくらいには、
燐の身体は軋んでいる。
当然、原因が弟の毎晩に渡る行為の結果だとは燐は夢にも思わない。
勿論上司であるアーサーにも想像がつかなかった。
「しかし、最近の奥村燐は妙だな」
燐と別れたアーサーは、次の任務の地に向かうために森を駆けていた。
燐には帰還命令が出ていたが、アーサーにはあともう一件狩らねばならない相手がいる。
聖騎士とは忙しい職業だ。
呼ばれれば世界各国何処にでも馳せ参じなければならない。
アーサーはこの仕事のことが好きだが、たまに疲れてしまうことも事実だ。
燐もアーサーに負けず劣らず、任務を割り当てられている。
広範囲の悪魔の除去などにあの青い炎は最適だからだ。
だからと言って、疲労が溜まるような任務のこなし方をしているわけではないようだ。
燐自身にもわからない、燐の不調。
アーサーは首を傾げた。目の前に標的の悪魔がいる。
アーサーはまた髪を一房カリバーンに捧げて、その力を引き出した。
一閃。
煌めく光が悪魔を切り裂く。
アーサーはその光の中に降り立った。祓魔師の制服が鮮やかに翻る。
見るものがいたのなら、彼をその名の通り天使と呼んだだろう。
アーサーはカリバーンの刀身を優しく白い布で拭った。
今日は彼女を酷使しすぎてしまっている。早く戻って手入れでもしてやろうか。
そう思っていると、カリバーンがアーサーに答えた。
『あの魔神様の子のことだけど、アーサーが気にすることじゃないと思うわん』
カリバーンはそっけなく言う。
彼女が愛しているのはアーサーだけなのでその他の事はあまり気にしない性質を持っていた。
悪魔とは得てしてそういう存在である。
「なんだ、何か知っているのかカリバーン?」
『そりゃ、あれだけ匂いを発していれば大抵の悪魔は気づいているんじゃないかしら』
カリバーンの告げた言葉に、アーサーは絶句した。
***
「貴様、毎夜毎夜弟と酒池肉林の性夜を繰り広げるとは何事だ!!!!」
アーサーは日本支部の燐のデスクに乗り込んだ。
カリバーンから告げられた真実は、清廉潔白に生きてきたアーサーにとって
まさに文字通り頭を殴られたような衝撃を受けた。
奥村燐は、弟である奥村雪男と性的な関係を持っている。
そう告げたのは魔剣カリバーンだった。悪魔の憑りついた剣。
悪魔の嗅覚は鋭い。燐の体から香る雪男の濃い匂いからしてまず間違いないと
カリバーンはアーサーに説明をした。
燐は突然のアーサーの登場に目が点になった。
任務のせいで、デスクワークが疎かになっていたので、
事務所に残って仕事をしていただけだった。腰が痛いので椅子には
ドーナツ型の座布団を敷いている。
当然、戻ってきたのは任務を終えた深夜なので同僚はとっくに帰っている。
アーサーの発言を他の人に聞かれなかったことは一種の救いだ。
「は?お前とうとう頭までおかしくなったのか?」
「言い逃れはできんぞ奥村燐!
カリバーンは俺に嘘などつかん!弟と禁断の関係を持つなど言語道断だ!
男同士で毎晩性行に耽れば、身体の調子がおかしくなって当然だろう。
それで任務に支障が出るなど、お前の頭が手遅れだ!」
『そうよそうよ!誤魔化そうったって無駄なんだからね!』
カリバーンもアーサーの援護に回った。
燐は徐々にアーサーとカリバーンの言っている意味がわかってきて怒りに身が震える。
燐にとって全く身に覚えのない話だ。
それに、雪男が絡んでいるなどどこの男と魔剣は言っている。
燐のことはいい。口さがない言葉で罵られようと我慢できる。
けれど、雪男のことを馬鹿にするような発言を許すわけにはいかない。
燐は青い炎を纏い、激昂した。
「俺が雪男とそんなことするわけあるか!!!
雪男のことまで馬鹿にするなんて絶対に許さねぇからな!!!」
『それだけ男の匂いを纏わせておきながらよく言うわよこの淫売悪魔!!
しらを切ると言うのなら言ってあげましょうか?
貴方昨日も一昨日もその前も弟とまぐわっていたでしょう!
身体にガタがくるのも当たり前よ!激しすぎてこっちが眩暈を起こしそうなプレイしておきながら!』
「だからしらねェって言ってんだろ、その刀身へし折るぞ!!」
「……おい、ちょっと待て。なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ」
激論を交わす燐とカリバーンを、アーサーは諌めた。
カリバーンが嘘を言わないことを、アーサーは契約上知っている。
彼女はそういう存在だ。
また、悪魔というのは人の弱みに付け込んで甘言を囁くため、
そういう負の行為、といったものに敏感である。
カリバーンの言うことは、恐らく事実だろう。
けれどその事実を突き付けても、燐は誤魔化すどころか逆に怒ってきた。
そういった行為は身に覚えがないとまで言っている。
普通、人は後ろめたいことがあると動揺し混乱し、なんとか隠そうとするはずだ。
怒る、という反応をしない者がいないとは言わないが。
それにしても、この反応はおかしい気がする。
カリバーンも燐の言葉が本心から言っているとわかり、動揺しているようだった。
『ちょっと、あの。貴方本当に何も知らないの?』
「だから何がだよ」
『え、だってその。部外者の私でも一目瞭然なのに…
実の弟に毎晩犯されているって、犯されてる本人がわかってないの…?』
燐は首を傾げるばかりだ。
彼は真実、嘘を言っていない。
アーサーは顔を青ざめさせた。
脳裏には利発そうな顔をした奥村雪男の顔が浮かんでくる。
彼はあんなに人のよさそうな顔をしておきながら、裏で何食わぬ顔で実の兄に手を出して。
込み出る嘔吐感を、アーサーは抑えた。
悪魔である燐も絡んでいるとばかり思っていたが、加害者は人間で被害者は悪魔の方だった。
「…おい、犯罪の匂いがしてきたぞカリバーン」
『ええ、アーサー。これ列記とした犯罪だわ。それも極悪非道な性犯罪だわ』
なに言ってんの。と燐はアーサーを問い詰めた。
アーサーは考える。
性犯罪の加害者と被害者は他の犯罪に比べて極めてデリケートな関係にある。
奥村燐は弟と共に暮らしていることで被害に合っているようだ。
ならば、まずは彼らを引き離すことが先決である。
上司の特権を乱用するべき場面であることは明白だ。
「よし、お前は今日から俺の使い魔にすることにしよう。今決めた」
「え?」
「というわけで、ヴァチカンに報告に行く。着いて来い」
「え?ええ?」
「行くぞ」
ひょいと燐を肩に担ぐと、アーサーは鍵を扉に差した。
動揺する燐には後で契約の首輪でも着けておこう。
訳のわかっていない燐は暴れてアーサーから逃れようとするが、
正義は我にありのアーサーは燐を逃す気などなかった。
程なくして日本支部に、燐の転籍が告げられる。
燐はヴァチカン所属になり、日本への帰還は当分なくなってしまった。
最初は抵抗していた燐も、アーサーとカリバーンの言うことを聞くうちに
雪男の行動に不審を持つようになった。
そして、二人の言った通り雪男と離れたことにより、
燐の体調がみるみる内に回復していったのは言うまでもなかった。
***
ヴァチカンのある一角に、犯罪者を尋問するための部屋がある。
その部屋は窓もなく、机が一つに椅子が二つあるだけだ。
椅子に座るのは今現在燐を保護するアーサー=オーギュスト=エンジェルと、
かつて燐を保護していた奥村雪男の二人だけ。
「兄さんを拉致するなんて、酷い人ですね」
雪男はさらりとそう言った。なんとも思ってなさそうだけれど気配でわかる。
雪男はアーサーを殺したくてしょうがないらしい。
「俺よりもお前の方が余程酷いことをしていると思うがな…」
「まあ自覚はしています。けれど改める気はないですね」
アーサーが雪男を問い詰めると、雪男はあっさり自白した。
ええ、兄さんのことを犯しているのは僕です。それがなにか。
ぞっとする言葉である。よくそこまで開き直れるものだ。
燐は現在体調が戻ったことを喜んでいるが、時折遠くを見ていることがある。
きっと弟のことを考えているのだろう。
雪男はちらりと壁の方を見た。そこに向かって微笑む。
「兄さんそこにいるんでしょう。こっち来なよ」
「よくわかるな」
「まぁ双子なもので」
言った通り、しばらくしてから扉が開いた。
壁はマジックミラーの様になっており、中の様子を覗くことができた。
雪男が呼びかけた壁の向こうには燐がいたのだ。
中に入って、燐はそっとアーサーの後ろに立った。
燐は動揺してがっちがちに固まっている。
まさか、自分が弟に犯されていたなんて夢にも思わなかっただろう。
「ゆゆゆ雪、男…お前本当に俺に…その」
「うん、手出してたよ。毎日毎晩365日欠かさずに」
「う、うそだあああああああああああ!!!!」
燐はわんわん泣き出した。当然だろう。
信じていた弟に裏切られ、その裏切りが嫌いだった上司に暴かれてしまうなんて。
アーサーは雪男に告げる。
「お前は自分の行動を改める気はないんだな」
「はい、欠片もありません。そして兄さんを逃がすつもりもありません」
雪男は仕込んでいた銃を、アーサーはカリバーンを構える。
お互いの獲物を構える二人に、燐は動揺した。
雪男のことは大切な弟だ。弟を傷つける輩を許すわけにはいかない。
けれどアーサーは燐の為を思ってこの場を設けてくれたのだ。
燐はどっちつかずな自分の気持ちに、どうすればいいのかわからなくなった。
「兄さん帰ろう、ここにいたら実験動物みたいに扱われる。
僕らの家に帰ろうよ」
雪男の言葉に燐は惹かれる。家族である弟の元に帰りたいと思う心もある。
けれど。そんな揺れる天秤のような燐の心に、アーサーが言葉を放つ。
「お前は俺の使い魔だ。
俺のものになるというのなら、お前は物みたく扱ってやろう」
「そんなことを言って、兄さんが喜ぶとでも?」
「わかっていないな…貴様らは親に、教師に習わなかったのか?
物は大切にしろという言葉を」
実の所燐のファーストキスはアーサーに奪われている。
その時にも言われた言葉だ。
アーサーは、不器用だけれど本当は優しい。
アーサーのものであるカリバーンは手入れもきちんと行き届き、
アーサーの一部が欲しいと強請ればきちんと与えられている。
彼は口は悪いが、今燐を助けようとしてくれていることがわかる。
「俺は、ものを大切にする男だ。お前のことも大切に扱ってやる」
だから俺と来い。
アーサーは言いきった。男前に言いきった。
燐の瞳から目を逸らさず、
きらりと光る王子のような微笑みで止めを刺される。。
彼はイケメンだ。性格は残念だけど顔だけは一級品と言ってもいい。
その顔が、燐だけに微笑んている。
心の天秤ががくんと傾いた。
「ごめん雪男、俺たちしばらく距離を置いた方がいいと思う」
告白よりも先に身体を手に入れた弟は
物事には順序というものがあることを理解した方がいいだろう。
残念そうな顔をする雪男の表情を見て、俺の弟ってイケメンだなと燐は思う。
ああ俺と離れて雪男が痩せたりしませんように。そう願って、燐は雪男と別れた。
別れ際に、いけないときは何時でも帰ってきてねと言われた。
俺の弟は、イケメンだけど下種だった。その事実に燐は打ちひしがれる。
ぽろりと流れ出る涙を、アーサーは見逃さない。
「泣くな、俺がいるだろう」
アーサーの言葉に、燐は落ちた。
例え武器に向ける言葉でもその言葉は優しく燐の心に積もる。
人は辛い時にやさしくされると見事に堕ちてしまうらしい。
天国のジジイ。ごめんなさい。奥村燐はいけない子です。
俺は、イケメンで優しい男のものになりました。
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