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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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サンプル:時の果てまで


※WEB用に改行しておりますが実際は詰めております。


メフィストは気配を探った。小さな青い光が見える。
この気配は間違いない。燐のものだ。魔神の気配は消失している。

メフィストは笑う。ああ、ついにやったのですね。

手を叩いて喜びたいくらいだったが、燐の無事を確かめるのが先だった。
うっすらとした青い炎につつまれた燐が、地面に倒れ込んでいた。
体からは多くの血が流れていたが、致命傷は負っていない。生きている。
メフィストは燐の体を抱き起こした。

とうとうやりましたね、奥村君。
燐の仲間達もすぐに来ることだろう。
メフィストはそう思っていた。だけど、そうはならなかった。
燐の仲間はすぐに来たことは本当だ。
けれど、傷ついた燐に手を差し伸べる者は一人もいない。
弟の雪男もそうだった。人は皆、燐の姿を見てこう言った。

「魔神が生きている、一体どういうことなんだ!?」

そして燐の側にいるメフィストに、裏切ったのかと人は問いつめた。
一体どういうことなのだろう。メフィストは混乱した。
腕の中にいる存在は、確かに奥村燐だ。
魔神に乗っ取られたりしたようなそんな気配は一つもない。

「奥村先生、あなた達は一体何を言っているのですか」

雪男の瞳は憎悪で満ちていた。
彼の視線の先には最愛の兄の姿はなく、
代わりに魔神を心配そうに抱き起こすメフィストの姿があるだけだった。

先ほどまで戦っていたのは、魔神と燐の二人だけ。残ったのは魔神だと人には認識されている。
燐は、魔神に殺されたのだと。雪男の瞳にはそうとしか映らない。

「フェレス卿、貴方は結局悪魔だったんですね。
魔神と共謀して兄さんを殺すなんて!僕はお前を許さない!!」

雪男は銃を放つ。メフィストはそれをマントで弾いた。
腕の中の燐はまだ目を覚ましていない。この状況を彼に見せるわけにはいかない。
逃げなければ。けれど銃弾を浴び続けているせいで、時を止める隙がない。どうするか。
考えていると、雪男の腕に飛びつく黒い影があった。
燐の使い魔のクロだった。

『ゆきおやめろ!なんでりんをこうげきするんだよ!
せっかくさたんをたおしたのに、これじゃあんまりだ!』

雪男はクロが何故自分の行動の邪魔をするのかがわからない。
けれどクロを銃で撃つわけにもいかず、混乱しているようだ。

メフィストは悟った。腕の中の燐は確かに自分が今まで見てきた奥村燐その人だ。
けれど、その姿を認識できるのは悪魔だけになってしまった。
人は奥村燐の姿が、燐が殺した魔神に見えているのだと。
メフィストは唇を噛みしめる。

「父上…なんてことをッ」

これが神殺しの報いだと言うのだろうか。
燐を殺されたと思いこんでいる雪男達は皆次々に二人に武器を向けてきた。
クロはそれを必死に止めている。

なんて残酷なことだろうか。
守りたかった者たちに、今度は燐が追われてしまう。

この光景を、彼に見せたくはなかった。
メフィストはスリーカウントを唱える。
もう騎士團に戻ることはないだろう。
数百年いたけれど、悪魔である自分はその場所になんの未練も残ってなどいない。
けれど、燐は。
呪文が唱え終わる前に、腕の中から声が聞こえてきた。

「嘘だろ」

燐の視線の先には雪男がいた。
雪男はこちらに銃口を向けている。殺意の籠もった瞳だ。
見ないでください。メフィストは燐の視界を遮った。
メフィストが燐を連れ出す前に、燐は無意識のうちに仲間のいる方へと手をのばしていた。
メフィストはその手を取って逃げた。燐を、死なせたくなかったからだ。

***

「私だけでは、あなたの心を埋めることはできないのですか」

人に魔神として認識されるようになった燐は最初どうしてだと怒った。
メフィストに沢山当たった。メフィストもそれを甘んじて受け入れた。
彼の心がそれで守られるのであれば、痛みなど感じない。
メフィストにつけた傷を見て、燐はまた傷ついた。

そのまま燐は泣いた。泣いて泣いて泣いて、動かなくなった。
まるで眠っているように、燐は動くことをやめた。
メフィストはその傍らに寄り添った。心の隙間を埋めるように。

騎士團は、魔神の存在を探している。
人の世界で身を隠すのも限界に近い。メフィストは燐に囁いた。

「私と、虚無界へ行きませんか」

虚無界ならば人が立ち入ることのできない領域だ。
魔神を倒した今、虚無界の新たな神となれるのは青い炎を継いだ燐
ただ一人。燐にとって安全な世界は、虚無界以外に存在しない。
彼は、物質界を守るために自分の居場所を失ってしまった。

もういいではないかとメフィストは言う。
これ以上人に関わるのはやめましょう。貴方が安全に暮らせる世界がある。そこで私と生きてください。
メフィストは必死に燐へ訴えた。燐はしばらく黙ったままだった。
けれどやがて諦めたのか、メフィストの提案を受け入れて頷いた。

「けど虚無界に行く前にやっておきたいことがある。
最後に一目雪男に会いたい」

メフィストは燐が傷つくだけだと止めたが、
たった一人の弟に何も言わずに去ることだけはできないと譲らない。
メフィストは燐の未練が少しでもない方がいいだろうと、最終的には燐の言葉を受け入れた。

雪男が一人になったところで、燐は雪男の前に姿を現すことにした。
燐には青い炎がある。例え銃弾を受けたとしても、致命傷にはならない。
けれどメフィストは燐を失うかもしれないという不安が拭い切れなかった。
燐はメフィストを安心させるために、倶利伽羅を手渡した。

「お前が持っててくれ」

倶利伽羅には燐の心臓が入っている。
心臓さえあれば、悪魔は生き残ることができる。
メフィストはそうしてようやく、燐を送り出すことができた。
遠いけれど、すぐに駆けつけることができる距離にメフィストはいる。
これが終われば、彼は私を選んでくれる。


メフィストはそう信じていた。そして、それは嘘ではなかったはずだった。



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