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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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奥村燐の経験回数を答えてください


うーん、うーん。
旧男子寮のトイレからうなり声が聞こえてくる。
新寮の住人からはお化け屋敷と噂される建物なので、
幽霊が住んでいてもおかしくはないだろう。

けれど本当はこの建物に住んでいる青い悪魔のせいで、
下級の幽霊は怖がって近寄ることもできない。
その青い悪魔こと奥村燐はトイレの個室に入りながらうんうん唸っていた。
うなり声はしばらく続いたが、やがて個室のドアが開き
中からこの世の物とは思えない程憔悴しきった燐が出てきた。
燐は手洗い場で手を洗うと、そのままがっくりと肩を落とした。

「こんなこと・・・誰にも言えねぇよ」

この年で不能になってしまっただなんて。

手洗い場に設置された棚には、燐が部屋から持ってきたエロ本が置いてある。
先ほどから燐が唸っていた原因はこれである。

燐の分身は、全くといっていいほど立たなくなってしまったのだった。

過労や精神的な疾患からそういったことが起こることもあるが、
燐はそういったストレスはため込まない性質である。
もしや悪魔に覚醒したことが原因だろうかと思ったけれど、
そもそも悪魔は人を堕落させることを目的にしている生き物だ。
悪魔に覚醒したことで、息子が元気になることはあれど、元気を無くすことなどないだろう。

原因が全くわからない。
けれどこんな自身の尊厳に関わるようなことなど誰にも相談できるわけがない。
こんなことだから、雪男に女の子と手を繋いだこともないのかと馬鹿にされてしまうのだ。
燐は女の子と手を繋いだこともなければ、つき合ったことすらない。
肉体関係を一度も持たないまま息子は逝き絶えてしまった。
何がいけなかったのだろう。
ぐすん、と燐はこぼれ出た涙を自分の袖口で拭った。


燐は欠片も気づいていないが、
この現象は燐の分身が不能になったわけでも機能不全に陥ったわけでもない。
燐自身は何一つ悪くなどないが、原因に気づくこともまた不可能であった。

なぜなら燐の不調の元凶は連日連夜に渡る雪男による犯行の賜だったからだ。

燐は気づいていないが、分身である息子は雪男とともに連日ハッスルしていたのである。
雪男は知略に長けた犯人だったので、
燐が起きた時にそうと思わせるような痕跡は一切残していない。
シーツだって別の部屋にストックを残し、使用したものについては数回分を貯めた後、
裏口から取りに来てくれるクリーニング屋に頼んでいる。
もちろん、お届けはそっと裏口に置くだけという優れたサービスを兼ね備えている。
この業者ならば燐が大量のシーツを受け取ることもない。
万が一を考えて、祓魔に使う荷物を定期的に洗えるよう依頼していると言っているので
燐は不審な荷物があったとしても中身を見ずにそのまま放置している状態だ。

けれど弊害というのは付き物で。

燐が起きている際に事を起こそうと思ってもそれは無理な話である。
夜に起きている息子が昼間寝ていても責めることはできないだろう。
毎晩起きていれば疲れるのも当たり前だ。
むしろ元気な部類だというのに、燐は自身に不能というレッテルしか見いだせない。
燐は考えた。
どうすれば元気になるのだろうかと。
考えて、考えて。考えた末に。

メフィストに聞いてみることにした。


***


メフィストは末の弟からいきなりの不能宣言を受けて硬直していた。
元気が取り柄の末の弟はこの世の終わりのような顔をしている。
当然だろう。若くして男としての機能を失ったと考えれば思い詰めたとしてもしょうがない。
けれど、そんなことカミングアウトされた兄の気持ちも考えてみてほしい。

「えーと、じゃあまずは目の前で実践してみてください?」

証拠を見せろと言ってしまったメフィストの口を責めないで欲しい。
ただ純粋に本当にそうなのか確かめたかったのだ。

下心が一ミリもなかったとはいえないが、
言った瞬間メフィストの全身は青い炎でこんがりと焼かれてしまっていた。
もちろん悪魔なので平気だけれど、できねーから言ってんだろ!とブチギレられる側の気持ちも
ちょっとは考えて欲しい。私にどうしろというんですか。
メフィストが指を鳴らして全身を整える。
本来なら焼け焦げた服を弁償して欲しいくらいだが、
燐がこうなってしまった原因について、メフィストも思い当たる節がない。

とりあえず落ち着きなさいと燐をソファに座らせた。

指をもう一回鳴らして目の前に紅茶とお菓子を出現させると
燐もひとまず落ち着きを取り戻した。

「思い当たることはないんですか?」
「ストレスとかってことだろ?それない」
「ですよねぇ・・・ならあり得ないですけど貴方半分は人間ですし病気とか?」
「なるようなこともしてねーよ!」
「貴方自分で童貞発言とか言ってて虚しくなりません?」
「言うな、自覚してる」
「うーん、となれば。直接燐君の身体に聞いてみましょうか」
「え」

燐が後ずさる。まさか童貞の前に目の前の悪魔に処女を奪われてしまうのかと警戒した。
メフィストは心配しなくても取って食べたりしませんよ、と言って燐の隣に座った。

「貴方の記憶を遡って見るだけです、
自覚がないだけで他人が見たら一目瞭然ってこともあるんですよ」
「えーでもお前に記憶見られるとか嫌なんだけど」
「私は別に貴方が不能でも一向に構いませんけどね」

騎士團も魔神の息子が不能だと知れば、
子孫が残らないと喜ぶでしょうよと言えば燐は黙った。悩んでいるらしい。

燐にわかるようにメフィストはわざとらしく両手を上げる。
自分はあくまで燐の意志に基づいて手を貸すというだけであって、
嫌ならば手は出さない。というジェスチャーだった。

一歩引けば、一歩踏み出すのが人の性というもので。
燐はメフィストの提案を飲み込んだ。


「わかった、見てくれ」


メフィストは燐に目を閉じるように言う。
燐の額に人差し指を当てて、メフィストも目を閉じた。
これは言うならば悪魔同士のテレパシーみたいなものだ。
共感覚を利用して、相手の中を覗き見る。
本来なら誘惑や傀儡の対象である人相手に使うものだけど、
お互いの了承を得た悪魔同士ならば交信は可能だ。

また変なものでも拾い食いしたんでしょうかねぇ。
メフィストは特に何も思わず燐の記憶を覗き見た。


泣いた。
一瞬で泣いた。


燐は目を閉じているのでわからないだろうが、
メフィストの顔色はいつにも増して悪くなっている。
メフィストの瞼から滂沱のごとく流れる涙が二人の座るソファを濡らす。
燐の額に当てている指先も無意識だけど震えていた。


何これ怖い。

こんな性犯罪が私のお膝元で行われていたなんて。
赤の他人ならおもしろおかしく見るだけだったかもしれない。
けれど対象は大事に大事に自身の羽の下で育ててきた末の弟である。
歪んだ愛情も含まれるけど、悪魔なりに大切にしてきたつもりだったメフィストの弟は。

あろうことかその弟に既に頭からばりばりと食べられてしまっていただなんて。


「お・・・おぉう、おふ・・・」


言葉にならなかった。
燐の身体は玄人だけど、心はとんだ素人だ。

二次元の男性向けエロ同人みたいな子が実際にいるなんて。
メフィストの心は傷つきながらも熱く高鳴った。

記憶の中の燐は雪男の教育の賜物か、信じられないくらいエロかった。
数を数えて見たけど、信じられない回数だ。
経験人数は一人だが、経験回数が風俗嬢と肩を並べるレベルである。
どうしてこんな回数やられておきながら貴方気づかないんですか。
馬鹿だと思ってたんですけど、馬鹿以下だったんですか。

けしからん、実にけしからん。

メフィストはしばらくして、指をそっと離した。
燐は終わったのかと思って目を開く。
そこにはまじめな顔をしたメフィストがいた。
まさか、原因がわかったのだろうか。
燐はどうしたんだよ、とメフィストを問いただす。
燐君、とメフィストも真剣に返した。


「原因としては疲れですね、夜によく眠っていればじきによくなると思いますよ」


つまりメフィストは匙を投げたのであった。
記憶の中の燐は悪魔的でとても魅力的であった。
大切に育てた燐が穢されたショックは大きいが、止める筋合いもない。
つまるところ心境としてはいいぞ、もっとやれ。である。
メフィストは悪魔だ。
おもしろいことを放置してなにが悪い。

燐は疲れかー、といまいち納得していないようだったが、一抹の的確なアドバイスも忘れない。


「あんまり気になるようなら、奥村先生に聞いてみたらいいんじゃないですか」


メフィストがそう言うと、燐は顔を真っ赤にして誰が言うか、と怒りだした。
メフィストは雪男の性格の悪さにぞっとした。
燐は自分が弟にそんなことされてるだなんて欠片も思っていない。

被害者にバレる時は、まだ当分先のようである。恐ろしい。
けれど、その間とても美味しいものが見れるだろう。
脳裏に浮かんだアダルトな光景は私のおかずにふさわしい。

その晩からメフィストの偵察用の使い魔が
旧男子寮の前をぐるぐると旋回するようになったらしい。

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