青祓のネタ庫
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小さな頃から人には見えないものが見えた。
それは、人に危害を加えるものから、そうでないものまで様々だ。
それらの正体が悪魔だと言うことを教えてくれたのは父だった。
父は言った。兄は10年後恐ろしいものを見ると。
自分が見ているもの以上に恐ろしい目にあう。
それを止めたくて、僕は祓魔師という道を選んだ。
(またいる…)
それがいると気づいたのは3日前だ。深夜にトイレに起きると、窓の外に気配を感じた。
それは修道院の中には入って来れない。ただ、窓の外からじっとこちらを見て、朝になると消えている。
(これの祓い方、まだ習ってないんだよね)
雪男は訓練を始めて間もないため、実践練習はまだ先だ。
父に相談すればどうにかなるかもしれないが、あいにく任務で留守にしている。
だから、こういう状態になるとじっと耐えるしかない。
悪魔は見えない相手に干渉しない奴もいる。こいつも、見えないフリをしていれば
きっといつかいなくなってくれる。それを3日前から期待していたのだが、相手もなかなかそこは譲らない。
修道院は、神の加護を受けているため、大抵の悪魔は侵入できないはずだ。
それを知ってはいるが、もしかしたらという不安は消えない。
悪魔からの視線を受けて寝れるほど、雪男の神経は図太くなかった。
「でも、いい加減寝たいなぁ…」
布団の中から窓を見ると、今日も変わらずそこにいた。
黒いもやだ。目や鼻といったものはないので、コールタールの集合体なのかもしれない。
窓と反対方向に目をやれば、そこには寝こける兄の姿があった。
10年後、兄さんは恐ろしいものを見る
雪男が眠れない理由はそこにあった。父が任務でいない今、同室である自分が守らなければいけない。
自分ひとりが危害を加えられるならまだしも、兄が怪我するのは耐えられなかった。
(早く神父さん帰ってこないかな)
雪男はまたひとつ寝返りをうった。この悪魔のせいでとんだ寝不足だ。
すると、静かな寝室に足音が聞こえた。
(まさか、あいつが入ってきたのか?)
ぞくっとした悪寒が背筋を走る。もうしそうなったら、兄だけは守らなければ。
雪男は背後を振り返った。
「ゆきお」
「にいさん」
兄がいた。向かいのベットからこちらまで来たらしい。
トイレにでも起きたのだろうか。
「お前、またねれてないんだろ?」
「…うん」
「怖いものでもみたのか?」
そこに、窓の外にいるよ。とはいえなかった。
兄は気遣ってくれたらしい。それが嬉しかった。
「俺がいっしょにねてやるよ」
「ちょ、にいさん!」
窓側の方に兄が入ってきた。あいつがみている。
なにかあったらどうしよう。
兄が、窓を見る。
「失せろ」
そいつは今までの3日間が嘘のように消えていった。
「な、な…何かしたの?にいさん」
「いや、なんかいたのか?」
兄は悪魔に気づいていなかった。
「お前が窓のほうみてたから、怖いもんがいるんなら追っ払ってやろうとおもったんだよ」
兄は優しい。でも、僕は不安が消えなかった。
兄の力は年々強くなると父は言っていた。
その力で追い払ったのか。
それとも、兄のことがバレたのか。
鼓動が不安で早くなる。
あいつが、消える瞬間に笑ったような気がしたからだ。
兄を連れて行くつもりだったのか?
わからない。だが。
雪男は、燐の身体にぎゅうっと抱きついた。
「どうした?」
「こわいんだ、このままでいて、にいさん」
「おう、わかった」
連れて行かせるもんか。
雪男は早く、祓魔師に成りたかった。
こうしていないと、捕まえていないと、兄がどこかへ行ってしまいそうな気がして。
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