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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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青の守人

【WEB用に改行していますが実際は詰めています】


その日は、嫌な風が吹いていた。

季節に似合わない何処か生ぬるい風が、王宮の中を侵食している。
雪男は窓の外を見た。雨は降っていないが、厚い雲が青い空を覆っている。
嫌な予感がした。雪男は一旦書類にサインをしていた手を止め、羽ペンを机の上に置く。
父が死んだ日も嫌な風が吹いていた。今日の戦場はどこだっただろうか。
そんな手こずるような状況は最近はなかったはずだ。武官を呼んで近況を尋ねてみよう。
自分を安心させるため、雪男は執務室を出ようとする。
扉に手をかけると、背後から声をかけられた。

「正十字国の王の警備はとてもザラなんですね」

部屋の中は一人だったはずなのに、いつの間にか緑色の髪をした男が執務室の椅子に座っていた。
目の下には隈がくっきりと出ており、気配が暗い。一瞬で分かった。悪魔だ。
それも上級の。この国の結界は上級悪魔は侵入できないようにできている。
それを掻い潜ってくるとは、相当な実力者であることが伺えた。
雪男は振り返った。

「僕自身が必要ないと言っているからね。
王の警備にあてるくらいなら、民を守れと言っている。何の用だ地の王アマイモン」
「わぁ、よくわかりますね会ったことあります?」
「虚無国の殺戮貴族は有名だろう。お前には随分民も殺された」
「なら僕を殺します?その前に僕は君を殺しますけど」
「できるものならやってみろ」

雪男と向き合う悪魔はにやりと笑った。

「君、意外と強いんですねわかります。
賢帝の取り柄は頭だけかと思っていたけれど」

悪魔は懐に手をいれる。
何かを出される前に先手を打つべきか。
雪男は即座に反応して服の裏に忍ばせていた銃を発砲した。
祓魔の武器として用いられる聖銀の銃だ。
当たればいかに上級といえども深手は免れない。悪魔の姿は一瞬で消えた。
雪男はなおも警戒を怠らない。部屋の中には笑い声が響く。

「これは、宣戦布告だ正十字の王。
お前は強いが所詮は人間だ。僕はもっと楽しい戦いをする男を知っている」

ひらりと赤色の布が頭上から落ちてきた。雪男はそれを手に取る。
一見何の変哲もない布のようだった、けれどその布には見覚えがあった。
兄である燐が、額に巻いていた布と同じではないか。

「待てッ!彼に何をした!」
「連れていくだけです、彼が本来いるべきところへね。
君も本当は知っているくせに」

声は遠ざかって行った。
雪男は部屋の中に発砲するがその弾は当たることなく銃声だけがむなしく響くだけだった。
騒ぎを聞きつけて、武官たちが部屋に近づいてくる音が聞こえて来る。
その前に、部下の一人が血相を変えて部屋の中に転がり込んできた。

「大変です!前線の部隊が全滅との報告、防衛ラインが突破されました!」

最悪の連絡だった。防衛ラインを急いで組み直さなければならない。
頭の中は兄に何かが起こったのかという動揺と、
王として冷静にならなければならない感情との板挟みだ。
動揺を悟られないように、雪男は兵に情報を求めた。

「前線で何が起きたんだ!」
「それが・・・」
「おっとその問いには私からお答えしましょう☆」

怒鳴る雪男の前に、メイド服姿のメフィストが降り立った。
指を鳴らしてスリーカウントを唱えると、雪男とメフィストの間に鏡が出現する。
鏡が現れると同時に、周囲にいた兵士がその動きを止めていた。
時を止めたのか、そうするとこれから先の出来事は知られてはまずいこと。
そう、国の根幹を揺るがすことが起きてしまったのだ。

雪男は鏡を見つめる。全身を映すその鏡は透明で怖いほど美しかった。
鏡には、ある映像が映し出されている。泥の中、倒れる人と悪魔。
飛び散る血と怒号。これは前線の様子だ。
使い魔の視界をジャックしたものですとメフィストは説明を付け足すが雪男はそれどころではなかった。

兄の姿がどこにもない。どこだ。どん、と衝撃が聞こえてきた。
ものすごい土煙があたりを包み込んでいる。
地面には光の刃が突き刺さっていた。その周囲にはたくさんの人間の死体が転がっている。
死が戦場を支配していた。
兄さんは、いつもこんな場所で戦っているのだ。
光の刃が続けざまに空から降ってきた。
兵士の体を貫く前に、刃が青い炎で切り裂かれる。

『逃げろ!!』

そこには血塗れになりながら必死に味方を逃がそうとする燐の姿があった。
光はなおも降り続き、燐の手の届かない人々を次々に蹂躙していった。
目の前で死に続ける人の姿に燐の顔はどんどん青くなっていった。
燐の体を覆っていた甲冑も光の刃に砕かれていく。
それでもなお、燐は立ち向かっていった。
使い魔の視界からでは敵の姿は見えないが、燐には見えているようだ。
その瞳は憎悪が満ちている。

『よくも俺の国の兵士をッ!』

倶梨伽羅に青い炎を灯し、それを振りかぶることで炎の刃を作り出す。
その炎は光の壁で相殺されて、何度やってもその先へは届かない。
戦場で立っているのはもはや燐しかいなかった。

『面白いことを言いますね、その者たちとお前は全く違うものだというのに』

燐以外の声が響く。これが敵の声か。燐は忌々しげに光の放たれる方へと叫んだ。

『何が言いたい!』
『真実を見つめることも時として必要なのですよ』

燐の背後に影が差す。
殴られて地面に引き倒され、燐の背に伸し掛かる黒い影。
影は、燐の背にそっと触れた。燐はもがいて逃げようとするが、抜け出せなかった。
影は、隠されていた燐の黒い尾を取り出した。

『やめろ!触るな!!』
『ふふ、悪魔の証を見せつけられることがそんなにも屈辱ですか?』
『俺は人間だ!お前らの仲間なんかじゃない!』

燐の耳にかかっていた髪を影がかきあげる。
そこには尖った耳があった。黒い尾に、尖った耳。
それは人ではない悪魔であることの特徴だ。
いくら燐が人間でありたいと願っても、身体は悪魔の特徴を表している。
持って生まれたものは変えることができない。影は燐にささやいた。

『いいえ貴方は悪魔です。この青い炎が何よりの証拠。
知っていますか。青い炎は我らの父たる魔神の炎。
それを持つ貴方がいるべき場所は、ここではない』

影が燐の尾を縛った。燐は悲鳴を上げる。
悪魔の尾は弱点の一つだ。そこを押さえられてしまえば抵抗することができない。

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