青祓のネタ庫
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あなたのお悩み解決します。
悪魔で困ったことがあれば是非ご連絡ください。
パソコン画面にそう打ち込むと、後はクリックして
アップロードするだけだ。
程なくして、パソコンの画面にあるサイトが映し出される。
そこには悪魔高校生探偵という文字がでかでかと乗っていた。
タイトルの横には著作権フリーのかわいらしい女子高生の画像を貼るのを忘れない。
「できました若君!」
「できましたじゃねぇよ!どこのエロサイトだッ!!」
祓魔師として活動できる場がないかとアスタロトに相談した所、
それならばWEBが一番であると紹介を受けたのが事の発端だった。
結局アスタロトはあの後一歩も譲らず、とうとう燐が根負けする形で同居が始まった。
燐が担当するのはこの家の家事全般である。
アスタロトが取り憑いている男は金持ちの子息なだけあって金には困っていないようだ。
一応父親の会社の役員として仕事はないが、たまに出勤してはいるようでアスタロトもそれに合わせて外出をしている。
残った燐は町中の些細な悪魔絡みの事件を見つけては解決してみたものの、
誰かに依頼されたわけではないので報酬はゼロ。たまに助けた人がくれるお菓子くらいが収入だ。
これではいけない、と燐は思った。
はじめはアルバイトでもしようかとも考えたが、身元がバレることは燐の立場上よくないだろう。
履歴書を偽ると、犯罪を犯していることになる。
祓魔の世界ならば、ある程度のグレーゾーンは許されるとはいえ、ここは一般社会。
節度はわきまえなければならない。
だからこそ、正式に祓魔の依頼人を募る必要があった。
相談相手のアスタロトは仕事から帰ってくるなりパソコンをいじり、あっと言う間にサイトを立ち上げた。
いかにもいかがわしい作りにしたのは、仕様である。
「そもそも、名前をもろに『りん』にするんじゃねーよ!
なに考えてんだ!女子高生がやってるって勘違いするじゃねぇか!」
「最初の内はエロサイトの広告やそれ関係の依頼でしょうけど、大丈夫ですよ」
アスタロトは自信満々だった。すべてわざとやっていることであると燐に説明する。
こんな、男受けするようなサイトにすることで何のメリットがあるというのだろうか。
燐は素直に疑問を口にした。アスタロトはそれに答える。
「まず、祓魔のこと。つまりは我々悪魔関係のことですが、
人に知られたくないというのが人の心情です。人は見えないものに理解はない。
その依頼人だけが見える悪魔の存在を理解できる人はまず、一般社会にはいないでしょう。
だからこそ、誰にも知られないように調べようとします。
そこでWEBという不特定多数の検索に引っかかるようにしたのです。
また、悪魔がらみのものは闇と関わりが深い。検索ワードもその類のものが多いので、
こういったいかがわしい仕様にしたほうが、よりサイトが引っかかりやすくなるでしょう。
女性画像をトップに載せたのは、男性の気安さを誘発すると共に、女性にある程度の気持ちのゆるみを生みます」
「どういうことだ?」
「考えてもみてください。見ず知らずの女性が、見ず知らずの男性に助けてください。
なんてよっぽどのことが無い限り言いませんよ。女性は同じ女性の方が安心するんですよ」
「俺男だぞ」
「大丈夫です。依頼を受けるのは「悪魔高校生探偵りん」という架空のキャラクターですからね。
若君はさしずめ執行人といったところでしょうか。誤魔化しはどうとでも利きますよ。
それに、若君ならば外見年齢が十五歳のままですから、
仮に依頼主の女性を助けに行ったとしても怪しまれることもありません」
悲しいかな。それは燐が男性としてみられることがないと断言しているようなものだ。
確かに未だに補導されそうになっている身としては反論ができない。
「じゃあなんで俺の名前だけは載せたんだよ。これ、騎士團側にばれたらどうすんだよ」
アスタロトはそれも大丈夫です。と答える。
「騎士團といっても所詮は人の組織です。膨大なWEBの情報の中から、
いかがわしいサイトをくぐり抜けてここにたどり着ける者はわずかでしょう。
その時は閉鎖すればいいだけの話ですしね。それに、偽名はなるべく使わないほうがいい。
依頼人と直接会った時に名前を呼ばれてすぐに反応できた方が信頼も増します。
嘘を通すには、ほんのひとさじの本当を混ぜることで、人間は簡単に騙されるんですよ」
その言葉を聞いて、燐は冷や汗をかいた。流石は悪魔だ。人の闇の傍に寄り添い、
生きてきた年月は燐とは比べものにならないくらい長い。
アスタロトの言うことは間違ってはいない。方法としてはあまり納得はできないけれど。
それは裏の世界を生きていくには必要な知識だった。
メールボックスには次々とメールが届いた。その中の大半は如何わしいサイトへの誘導メールだったけれど、
それはアスタロトが専用のシステムで除去していく。残ったメールはほんのわずかだった。
しかし、その中に一つ気になる内容があった。
「これ、ここの近くだな。それも学校絡みか」
「思春期の子供は感受性が強いですからね。惹かれて何かが現れていてもおかしくはない」
メールの内容は、学校に現れる幽霊を退治して欲しい。というものだった。
依頼主は怯えているらしく、文章自体もたどたどしい。
恐らくはこの学校に通っている生徒だろう。
悪魔が見えてはいないようなのでまだ魔障は負っていないだろうが、
本当に悪魔が絡んでいた場合は解決を急がなければならない。
魔障は人の一生を狂わせる。ある日突然悪魔が見えるようになっても、自分以外の人間には見えないとなれば
どれだけその人の心を傷つけるかはわからない。
周囲に理解のある大人がいればいいが、祓魔師の職業もあまり深いところまで知られていないのが現状だ。
一人でも多くの人を、悪魔から救わなければならない。
魔障を受ける人が減れば、祓魔と関係を持つ人が減れば。
あの学園、騎士團に所属する人も、きっと少なくなるはずだ。
燐の記憶の中の声が答えた。
僕は、生まれた時から悪魔が見えた。
兄さんから魔障を受けたからだよ。
燐はその声を振り払った。
悪魔から受ける被害を少しでも減らしたい。
燐が願うのは、ただそれだけだ。
アスタロトが燐に声をかける。依頼を受けるかどうかを聞いているようだ。
メールのピックアップまではするが、最終的な判断は燐に任せるらしい。
「どうしますか、正直嘘をつく人間がいるのも本当です。
受けるか、蹴るかは若君の判断にお任せします」
燐はメールの内容をチェックした。
すると、メールの一番下にこう書かれてあった。
たすけてください。
燐は頷いた。助けてくれ、それだけで燐が動く理由には十分だ。
「返事してくれ、俺が出る」
「わかりました」
アスタロトは返信メールにこう書いた。
依頼料:一件につき百万円
送信ボタンを押そうとしたところで、燐が止めた。
ぎりぎりのところだった。折角受けようとした依頼が流れるところだ。
「お前依頼一件につき百万とかどういう感覚してんだ!
どう考えても納得しねぇだろ!!誰も払えねぇよ!」
「一件につき百万とか安くないですか?若君が向かわれるという時点で
金などには代えられないくらいの価値があるのですけれど、人間はそれを理解していません。
最低賃金です。これでも譲歩してますよ」
「最低賃金百万とか馬鹿言ってんじゃねぇ!払える金額じゃねぇと人も寄りつかないだろ!」
「でも安すぎるのも問題です」
お互いに散々言い合って、なんとか落ち着いた値段を送信した。
この依頼主は学生のようなので、どうにか払える金額として一万円を提示した。
勿論これは場合によっては上がることを伝えた。やっかいな相手だった場合は労力がかかるからだ。
依頼主によっては上の金額を提示するのもありかもしれない。
最低限の金額も決まり、燐はアスタロトにお礼を伝えた。
「ありがとな、いろいろと」
「いいえ当然のことをしたまでです。私は若君の僕ですから」
アスタロトに出会わなければ、燐はまだあの寒空の下にいただろう。
それでも、人に憑りついているということを考えれば燐はやはり全面的に甘えるわけにはいかなかった。
人には、人の人生がある。悪魔にそれを邪魔されるなどあってはならないことだ。
アスタロトの憑依が解ければ、燐がここにいることもないだろう。
この人と燐は何も関係がないのだから。
燐は一抹の罪悪感を抱えながらパソコンの画面を見た。
あとは依頼主が決めるだろう。返信を待つだけだ。
アスタロトは燐の表情を見て、徐に懐から一万円札を取り出した。
燐は首を傾げる。
「なんだよ」
「返信までは時間がありますし。最初の依頼は、私からでどうでしょう?」
燐は俺にして欲しいことでもあるのか、と問いかけた。
「悪魔高校生探偵『りん』の初めてを頂くこと自体既に興奮の対象なのですが、
口汚い言葉で私のことを罵っていただくお仕事をお願いします。それが何よりのご褒美―――」
最後まで言い終える前に燐がアスタロトを蹴り飛ばした。
もちろん壁にぶつけるようなヘマはしない。
修理費がかからないように、その場で一回転するように鮮やかに蹴り飛ばしたのだった。
「アダルトな依頼はお断りだ」
十分ご褒美と取れる冷たい視線を送りながら、燐はやっぱり早くひとり立ちしようと決意するのだった。
***
パソコンを弄っていると、ふと気になるサイトを見つけた。
膨大なページを見ていたのでいい加減目が疲れていたのだけれど、妙に気になる。
自分の第六感を信じてクリックしてみると、そこには可愛らしい女子高生が表示されたページが。
内容を見てみると、どうやら自分のやっている仕事と被るところがあるようだ。
インターネットなので、本当に依頼を受けているかどうかはわからない。
こういった釣りページを作って、依頼主の住所や番号を聞き出して売るような業者もあるくらいだ。
何故知っているのかというと、実際そういう業者に自分の住所を盗まれたことがあるからだった。
それ以降、何度も何度もアダルトグッズのチラシやダイレクトメールが届くようになってポストが
実に卑猥なことになった経験がある。当時付き合っていた女の子にもそれが原因で振られてしまった。
屈辱の経験である。
「にしても、かわいらしい子やなぁりんちゃん」
連絡とってみようかなぁ。
そう呟いて志摩は画面の向こう側の女の子(フリー素材)をそっと指で突いた。
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