青祓のネタ庫
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≪ 僕は教え子に痛いと言われる度に興奮を隠せない | | HOME | | その後人工呼吸で一命を取り留めました ≫ |
燐は一日十時間以上寝るロングスリーパーだ。
人間は個人差はあるものの、長時間寝るタイプと短時間の睡眠で事足りるタイプの二種類がある。
小さな頃から燐はよく寝ていた。中学の時はさぼっていたので他にすることがなかったから寝ていた。
とにかく寝ていた。その寝汚さを雪男に咎められることが多々あったが、
それでも寝る時間だけは個人の自由だ。
睡眠時間が短ければ日中の活動にも支障が出てしまう。
だから燐は任務で遅い雪男を待つことなく寝るようにしている。
もちろん、食事の用意だけはして寝ているあたりは弟の仕事を気遣っているのだろう。
雪男は燐とは正反対で、ショートスリーパーだ。
四時間の睡眠で事足りるということは燐よりも六時間も多く動くことができるということ。
雪男が優秀と呼ばれるのも、その時間を勉強や努力に当てることができるからかもしれない。
双子でも個人差があるものだけはどうしても埋めようがない。
それでも燐にとっては納得がいかないことがひとつある。
「寝る子は育つって言うのにな・・・」
今日学園で身体測定があった。燐の身長は中学の時と変わらず、体重も変化はない。
燐は落胆した。一年近くたっているならもう少し伸びてくれてもよかっただろうに。
周囲を見れば、他の男子は一センチ伸びただの、
五センチも変わっただの自身の成長を喜ぶ声が聞こえてきた。
うらやましい。別に自分の身長が平均以下だとは思ってもいないが、
雪男より身長が低いという事実が許せない。
クラスは別だが、身体測定は同学年の生徒は同じ時に行われる。
少し見渡せば、すぐに見つかった。周囲の生徒よりも頭が一つ分飛び出ている。
むかつく。雪男を見て燐は瞬時にそう思った。見つけやすいけれど、
自分より大きい弟の存在は燐のコンプレックスを刺激する。
燐は雪男の背後にそうっと忍び寄って、持っていた測定表を奪い取った。
雪男が咎める前に、その身長と体重を確かめる。
「ちょっと兄さん何やってんだよ」
「いいじゃん減るもんじゃないし・・・ってお前なんだこれ!!
去年より伸びてるじゃん!!なんでだよ!」
「なんでって、成長期だから?」
「俺も成長期なのに!ちくしょー!」
燐の言葉に雪男は一瞬だけ表情を変えた。
しかしすぐに取り繕って首を傾げる動作をする。
「兄さん変わってなかったの?」
「うん、伸びてなかった」
「体重は?」
「変わってねぇけど」
「そう、まぁ健康ではあるんだし心配することないんじゃない?」
「そうじゃねぇ!お前が成長していることがむかつくんだ!その伸びた身長俺によこせ!」
「できるわけないだろ、馬鹿言わないでよ」
騒ぐ二人に周囲がまた兄弟喧嘩が始まった、と生暖かい視線を向けてきたことに雪男は気づいた。
雪男は騒ぐ兄を連れて、人気のない場所へと誘導する。
小声で問いかける。
「一応、兄さんは個別での測定って聞いてたけど。そうなってた?」
「うん。みんなとは別で受けたけど」
燐には人には見せれない悪魔の尻尾がついている。
普通の血液検査をしたとしても、燐は人間ではないので異常があってもわからないだろう。
メフィストの息がかかった者に検査を受けることになっていた。
雪男は後で僕も兄さんの検査結果見るからね。と燐に告げた。
「え、なんで?」
「だって兄さんは前例がない体質でしょ。少しの変化が何に影響するかわからないじゃないか」
「大丈夫だって、心配性だなぁ。禿げるぞ」
「誰のせいだと思ってるんだよ・・・」
雪男はため息をついて、燐の測定表を取り上げた。
後は検査員に渡すだけなので構わないが、伸びてない身長の数字を見られるのはなんとなく嫌だった。
「プライバシーの侵害だ!」
「兄さんも僕の見ただろ。それに兄さんのヘモグロビンの数値も尿酸値も
全部知ってるから身体測定の結果なんて今更すぎるよ」
「なんかお前に丸裸にされてるみたいですんごい寒気がしたんだけど」
「僕が兄さんの監視役だってこと忘れてるでしょ」
監視役はその対象物に関しての情報を頭に入れておかなければならないだろうが、それにしたってあんまりだ。
雪男は燐の頭を撫でると、代わりに出しとくよ。と測定表を持っていった。
燐は撫でられた頭を触って叫ぶ。
「頭撫でんじゃねー!兄ちゃんだぞ!」
「僕より身長低いけどね」
燐は弟の雪男に子供扱いされたことにかなり腹が立った。
だから、雪男が真剣な表情で燐の測定表を見ていたことには気づかなかった。
***
夜。というか明け方。だろうか。燐は一度寝ると滅多なことでは起きない。
それでも目が覚めそうな瞬間というのは何度かある。
薄暗い部屋の中で、うつらうつらしている状態で、燐は何かの気配を感じた。
クロは夜に遊びに出かけてからまだ帰ってきていない。
もしかしたら燐のベッドに進入してきたのかもしれないと考えていた。
気配は寝ている燐のそばで感じる。何かの体温が体を触っていることがわかった。
腹から徐々に上がってきているなにか。燐はそれでも寝ていた。
起きるのが面倒だったし、なによりも夢かもしれないと思っていたからだ。
何かは燐の胸に触れる。そのまま燐の胸を触っていた。その体温が退くことはない。
身じろぎしようとすると、唇の方に暖かいものが触れた。なんだろう。
目を覚まそうとしても、眠気の方が強い。そのまま体を触られる夢を見たのだと思っていた。
声が聞こえた。何と言っているのかは聞き取れなかった。
そのまま燐の意識は闇に落ちていった。
「なぁ、志摩って男兄弟の胸触ったことある?」
隣でうどんを食べていた志摩が鼻から麺を吹き出した。
そのまま噎せて呼吸が落ち着くまではしばらくかかりそうだった。
燐は志摩の背中をさすりながら、落ち着くまで待っていた。
志摩は顔を赤くして燐に問いかける。
「なんで俺が金兄達の胸触らなアカンの」
「いや、そういうことってあるのかなぁと」
「うーん、女兄弟にやったらありえなくもないけど」
「え、お前姉ちゃんにおっぱい触らせてとか言ったことあんの」
「・・・」
「おい、そこは否定するところじゃないのかよ!」
「思春期の好奇心と甘えの延長やと思ってもらえたらありがたいけど、
まぁ触った瞬間に半殺しにされたわ。懐かしいわぁ」
「やわらかかった?」
「まぁ女兄弟の胸で興奮することは万が一にもありえんかったけど、
胸という名の部位はやわらかかったなぁ」
「そうか・・・」
燐は女性の胸というものを触ったことがない。母親は既に亡くなっているし、育ての親も男である。
女性という者に対してのあこがれは昔から持っていた。
やわらかい女性という存在に抱かれた経験がないからかもしれない。
だからか知らないが、燐は巨乳が好きである。大好きである。
いつかは女の子の体に触ってその感触を確かめてみたいという願望は常に持っていた。
「奥村君は女の子の胸触ったことある?」
「ねぇよ」
「霧隠先生のは?前挟まれてたやん!!」
「いや、あれは別だろ。ノーカンだ!」
「そんなもん?俺やったら霧隠先生の胸に挟まれたら天国やけどなぁ。
奥村先生なんかはモテはるから女の子の胸くらい触ってそうな気するけど、どうなんかな?」
「・・・だよなぁ」
燐が悩んでいたのはズバリそこであった。
あの晩に、寝ている燐の胸を触っていたのは雪男だ。最初は夢かと思ったけれど、聞こえてきた声で確信した。
寝ている自分を、雪男が触っている。わからないのは、その動機である。
雪男くらいモテていれば女の子の胸くらい触る機会はありそうだ。
どうして男である自分の胸を夜中に触っているのだろう。
あまりにも不可解な弟の行動に燐は理由が思い当たらなくていっそ恐怖を抱いていた。
弟が間違った道に走っていたらどうしよう。燐は頭をかかえる。
でも弟のことを考えるとあの夜のことを誰かに相談することもはばかられた。
だからこうして志摩に探りを入れていたというわけだ。
燐はいったん落ち着こうとお茶を口に入れた。
「そういえば、男のおっぱいって雄っぱいって言うねんて。知ってた?」
今度は燐がお茶を鼻から吹き出した。
***
雄っぱい。というフレーズが頭から離れなくて、その夜燐はなかなか寝付けなかった。
弟が雄っぱいに目覚めていたらどうしよう。
しえみのダンスパーティの誘いも断ったという話しも聞いた。
ああ、なんということでしょう。弟は道を踏み外そうとしているのかもしれないのです。
燐はぐるぐると悩みながらも、体は睡眠を欲していたのか浅い眠りを繰り返していた。
部屋の扉が開く音が遠くで聞こえてきた。雪男が任務から帰ってきたのだろう。
起きようかとも思ったけれど、浅い眠りの波は居心地が良くて動く気になれない。
そのまま寝ていると、やはり気配が近づいてきた。ベッドの脇に座ったことがわかる。
しばらく、雪男は動かなかった。燐が寝ていることを確かめているのかもしれない。
雪男はそのまま、燐の体にかかっている薄い布団をそっとはだけさせた。
そして、燐の腹の方に手を入れる。
「・・・ん」
腹の方を触られて思わず声が出た。それでも寝言だと思ったのか、雪男は手を止めなかった。
腹の方から手をシャツの下に進入させる。そのまま上に入れられて、手は胸の上で止まった。
雪男の手が、燐の胸の上にある。人の体温が胸にあるということは、思った以上にくすぐったかった。
寝返りを打とうと思った。その前に、唇の上にまた体温がかかる。手の体温と同じあたたかさだ。
雪男は燐の胸と、唇に手を当てている。そして、つぶやいた。
「よかった。息、してる」
あの夜に聞き取れなかった言葉を聞いた。
燐は思わず目を開けそうになった。だって、そんな。
心臓の鼓動が動揺で乱れそうだ。それでも我慢して燐は寝ていた。
雪男は燐の寝ている様子に安心したのか、部屋を出ていった。
お風呂にでも行ったのかもしれない。
燐は薄く目を開けた。目に映るのは見慣れた木の天井だ。
雪男は、毎晩燐が生きていることを確かめていたのだ。
呼吸に変化はないだろうか。心臓はちゃんと動いているだろうか。
悪魔である燐は人と違うルールで生きている。
そして青い炎を宿した者は魔神以外に存在したことはない。
どんなイレギュラーが起きて、何が燐の体に悪いのか、いいのかも全てわかっているわけではないのだ。
雪男はその不安を感じていたのかもしれない。
燐の伸びなかった身長や、体重のことも気にしていた。
たぶん、自分よりもずっとずっと心配していたのだ。
燐は雪男よりも六時間も多く睡眠を取っている。
六時間分、寝ている燐を見ているのだ。昔から起きない燐を見て雪男は小言を言っていた。
寝ている燐を、起きない燐を見て、何を考えていたのか。それがわからない燐ではなかった。
このまま起きなかったらどうしよう。弟の不安を兄は感じた。
だから、安心させてやらないといけない。
時間を見れば、まだ起きるまで余裕があった。
「仕方ねぇな。今日から、早起きしてやるよ」
雪男のように四時間の睡眠で満足できる体ではないので、それは勘弁してもらうとして。
それでも早起きしてやろう。そして、起きている自分を見せてやるのだ。
生きているという姿を見せて安心させてやる。
雪男が風呂から戻ってきたようだ。足音がして、部屋の扉が開いた。
燐は今起きた、という風に雪男に話しかける。
「戻ったのか」
「うん、起こしてごめんね」
「いいよ・・・それより、明日。っていうか今日だな。どっか行こうぜ」
「珍しいね。休みだし予定もないけど。兄さん、出かけるなら早起きになるけどいいの?」
「うん、いいんだ」
「起きれる?」
「起きるよ」
起きるよ。燐の言葉に雪男は安心したようにつぶやいた。
「そっか、じゃあまた朝に」
「おやすみ」
「うん、おやすみ」
朝に起きる約束をして。
二人の鼓動を包み込み、夜は更けていく。
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