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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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若旦那の使い魔 前

ふと靴箱の中を見れば、手紙が入っていた。
勝呂はまたか。と気を重くする。
先日も女子生徒から告白を受けたのだが、丁重にお断りしたら大泣きされてしまった。
自分の何がまずかったのかと勝呂は自己嫌悪に陥る。
今自分は色恋にかかわずらっている場合ではない。
年に一度の祓魔師認定試験が近づいているのだ。

ここで勉強しておかなければいつ勉強するというのだろうか。
自分には魔神を倒すという野望がある。
一歩でも多く、少しでも早く。
祓魔師になって経験を積まなければ。
だから女の子の一世一代の告白も申し訳ないが断るしかない。
でも、女の子を泣かせたという事実に落ち込むのは普通の男子高校生の反応だ。
勝呂は大人っぽいといってもまだ十五歳。動揺するのも無理はない。
重い気分で手紙を開けた。中身を見て驚いた。

「竜士様 

学園生活は如何お過ごしでしょうか。折り入ってお話したいことがございます。
どうぞ理事長室にて詳しいお話をお伺い頂きますようお願いいたします。
元気しとるか?  勝呂達磨」

美しい字で綴られた手紙の相手は、父だった。

「アホか!!なんで息子のげた箱にいれとんねん!」

悩んだ自分が馬鹿みたいではないか。
志摩に見られたらもてる男は考えることがちゃいますなぁとか言ってからかわれるに決まっている。
燐に見つかれば、勝呂ってかっけーな。とかまた訳のわからない憧れを抱かれてしまう。
勝呂は手紙を乱暴にポケットにしまうと、教室に向かった。今は高校の時間だ。
放課後にでも向かうことにしよう。本当に緊急の用事なら、携帯に連絡が来るはずだ。
勝呂はこんな所でもまじめな高校生だった。

***

ノックをして、返事を受けてから扉を開ける。
理事長室は相変わらずファンシーな仕様だった。
いい年した大人。というか悪魔がするようなことだろうか。
思っていても口にはしない。勝呂はメフィストに父からの手紙の件を話した。

「ええ伺っております。京都出張所からの依頼という形で処理させて頂こうかと。
息子である貴方をご指名のようです」
「それで、どんな内容なんでしょうか」
「どうやら貴方のお家に関係あることで、京都での会合に参加して欲しいとのことです」

普通なら達磨自身が行くべきなのだが、今回の会合は勝手が違うらしい。
なんでも京都に席を置く悪魔の使役者が集まる会とのことだ。
勝呂家は数百年の長きに渡って上級悪魔のカルラを使役してきた。
これまではカルラとの契約上、契約悪魔の存在を公にすることはできなかった。
実際に達磨が使役しているところを見なければ息子である勝呂自身も信じてはいなかっただろう。

落ちぶれた貧乏寺の坊主が上級悪魔を使役していた事実は、不浄王との戦いで公にされた。

京都では勝呂家以外にも歴史ある祓魔の家系が五万とある。
宗教的意味を持つ京都ではお互いの顔合わせと、持っている力を見せ合う会合が行われてきた。
それによってお互いの衝突を避けようという意味合いがあったのだ。
力持つものは、その力に溺れて魔の道に魅せられないとも限らない。
歴代、京都では呪殺による血が流れなかったことはない。
現代ではそれを阻止するために、表面上顔合わせの会合という形で交流を計ってきたのだ。

「これまで嘗めていた相手が、自分達よりも上級の悪魔を使役していたという事実。
そのことに京都のやんごとなき方々のプライドはさぞかし傷ついたでしょうね」
「父ではなく、自分が行く理由はなんでしょうか」

そのようなややこしい会合は、これまで達磨が一手に引き受けて来たのだろう。
のらりくらりと父は生きてきたのだとこれまでは思っていたが、
不浄王戦でそれは間違いだと気づいた。自分はずっと守られてきた。それを自覚した。
たぶん、これまでなら勝呂に話を持っていくこともしなかったはずだ。

「簡単です。カルラの使役権はもう貴方に移っているから、
勝呂達磨氏はその会合に参加することができないのですよ」

今までなら達磨が処理していた案件がカルラを継いだことで今度は勝呂に回ってきた。

「どうします?貴方はまだ学生だ。京都出張所内での案件は正十字騎士團の管轄内での出来事。
こちらが手騎士の名代を立てて取り次ぐこともできますよ」

だから勝呂を直接通さずに騎士團に話を持ちかけたのか。と勝呂は納得した。
達磨は本心では勝呂に行って欲しくなかったのだろう。
しかし、由緒ある土地柄の為不参加という道は避けられない。

全く、あの戦いの時といい。つくづく息子に甘い親だ。
それでも、選ぶ道を残してくれた事実には感謝したい。

「いえこれは俺の家の問題です。俺が行きます」
「よろしい、任務の快諾ありがとうございます☆」

勝呂は答えを出した。カルラを継いだ時から家の面倒もなにも全部背負う気でいた。
それが来ただけだ。覚悟を決めていけばいい。
勝呂は会合の時間と場所を確認した。
これは候補生勝呂に与えられた騎士團からの任務という形で行われる。
何かあれば騎士團からの助力も得られるという形である。
勝呂は任務に備えるために部屋に戻ろうとした。
背後からメフィストに声をかけられる。

「お一人で行かせるのも何なのでね。助っ人をつけましょう☆」

メフィストは悪魔の微笑を浮かべて勝呂を見送った。


***


「って言うから誰が来るのかと思えばお前かい奥村ァ!!!」
「え、何で怒ってんの勝呂」

勝呂と燐は会合が行われるという館に向かっていた。山道は険しく、人が通るというより獣道に近い。
鍵を使って助っ人との待ち合わせ場所に向かえばそこにいたのは燐だった。
燐自身、メフィストから任務の話を受けてここに来ただけだ。
なぜ勝呂は怒っているのだろう。メフィストからは勝呂君を助けてあげなさいと言われている。
ならば自分がここに来ることは間違っていないはずである。

「なぁ疲れてるんなら背負ってやろうか?」
「余計なお世話やアホが!」

息切れしている勝呂に燐がよかれと思って声をかけた。
勝呂は余裕がないのか、怒鳴った後も黙ったままだ。
燐はしょんぼりとしたが黙って歩いた。クロを連れてくればよかったなぁと思う。
そのまま黙々と歩いていくと、開けた場所に出た。
旅館のような建物と、それを取り囲む塀。
木で出来た門の前には目元を面で隠した門番がいた。
服は京都での会合というだけあって和服だ。

「勝呂達磨の息子、勝呂竜士や。会合に参加するために来た」

門番に声をかけると、興味深そうな顔をされた。
今までこの会に参加するような立場の家ではなかった為か、侮った視線も感じられる。
通された門の先には魔法陣があった。
そのまま入れということは、害のあるものでもないだろう。
勝呂が足を踏み入れると、一瞬光に包まれた。
見れば、服装が和服になっていた。
ここまでは山道であることもあって動きやすい正十字学園の制服だったのに。
いきなり変わった服装に動揺を隠せない。
極めつけは目元につけられた面だろうか。顔が一目ではわからないようにできている。

「ここは術師の会合。顔と服装が普段のままでは身元や面が割れやすい。
いらぬ者に顔や特徴を覚えられると呪殺の対象となられても文句は言えぬ。
いくら泰平の世となろうとも、人の妬みや嫉妬は買わぬが良いぞ勝呂の坊ちゃん」

カルラを飼っておったと聞いているので、無理な話だとは思うが。と門番は鼻で笑った。
流石腹黒い者達の集まりだ。胸くそ悪い。
しかし勝呂家の代表として来ているのだからここは我慢だ。
着物の生地を見ると、いかにも高そうなものだったが落ち着いた色合いをしている。
勝呂によく似合っており、高校生とは思えない風格を醸し出している。
後ろの方で燐がこちらに入ってこようとした。
勝呂は人間だが燐は悪魔である。もしこの魔法陣が悪魔である燐に変な作用を起こしたとしたら。
勝呂は燐を止めようとしたが、門番がそれよりも先に止める。

「待て、ここから先は付き添い人も立ち入り禁止だ。
以前志摩家の者が来たが、ここで待機して貰っている。
悪いがお前は入れぬぞ」
「俺は付き添いじゃねぇ」

燐は門番に抗議していた。勝呂は燐がここまで来てくれただけでよかった。
というかそもそもなぜ燐がここまでついて来たのかがわからない。
ここは腹黒い大人が策略を巡らせる場所。
何かあってはいけないので、早く学園に帰って貰いたかった。

「俺は勝呂の若旦那の使い魔だ。使い魔なら入れるって聞いたぞ」
「成る程、貴様悪魔か」

門番が道を開けた。が、聞こえてきた言葉が信じられない。
誰がいつお前を使い魔にした。それに若旦那って何だ。
恥ずかしい。そんなこと聞いていない。
勝呂が反論する前に燐が陣の中に足を踏み入れた。
勝呂と同じく光に包まれると、制服から和服へと変わっていた。
門番と勝呂は目を開いた。
一言で言えば、豪華絢爛。と言ったらいいだろうか。
青い着物に、オレンジや赤様々な色を使った装飾が施されている。
見たことのない生地だが、それがよく似合っていた。
足下はブーツなので、完全な和装というよりモダンな雰囲気だ。

「おー、かっけー!」
「似合っとるけど派手やなぁ」

きちんと面もつけている。ここまで派手だと誰も奥村燐だとは気づかないだろう。
身元を隠すという意味では成功している。
燐も足を踏み入れてしまった。今更帰れとも言えない雰囲気だ。
しかし、若旦那といい使い魔といい二人っきりで問いたださなければならないことが山積みだ。
勝呂は行くで、と声をかけた。使い魔よろしく燐もうれしそうに後をついていく。
門番は二人の去った後を見つめていた。

「この陣は、持っている者の力に呼応して隠遁の術をかける。
勝呂の坊ちゃんはカルラを使役しているだけあって流石、あの年で見事な衣装に身を包んでいた。
しかし、使い魔の青い着物・・・」

あんな華美な装飾見たことがない。
歴代、土地神を連れて来た者でさえあんなことにはならなかった。
勝呂家はどうやってあの使い魔を手に入れたのだろう。
嫉妬や妬みは買わぬが良いと忠告しておいたが、あれではきっと無理だろう。


あの使い魔は目立ち過ぎる。
どこぞの術師に奪われねばいいがな。


そう思うが肝心の彼らはとっくの昔に座敷へと消えていった。
それをどうにかするのも当主としての腕の見せ所。
門番は見て見ぬふりをした。

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