青祓のネタ庫
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「奥村、よけろ!」
勝呂が大声で叫んだ。
避けれたら避けてたよ。
今回の任務は、悪魔の注意を引くことだった。
だけど、運が悪いことにたちの悪い相手に当たってしまったらしい。
敵は、巨大な植物型悪魔「クレイジーアップル」
地の王アマイモンの眷属で、その名の通り林檎の果実に憑く。
おとぎ話で白雪姫が食べたとされる林檎であるという伝承もあり、
しえみに取り憑いた山魅よりは上位種にあたる。
その姿は異様であった。
変化する前は美味しそうな林檎にしか見えない。
しかし、目の前にいる悪魔にそんな無害な様子は何一つなかった。
人の顔が巨大な林檎の果実から生えており、下は巨大な蔦が触手のように蠢いている。
生理的な嫌悪感が浮かぶ、醜悪な姿だ。
しなる蔦が迫る。
勝呂の忠告もむなしく、燐が反応するより先に、身体を捕らえられた。
「うわっ!」
そのまま上に持ち上げられる。悪魔の顎が開く、食べる気だ。
びっしり生えた歯が見える。咀嚼されたら痛そうだ。
抜け出そうにも身体は蔦で固定され、動かない。
締め付けられ、意識が遠のいていく。
「ぐ…、う…」
「兄さん!」
弟の声が聞こえたが、喉が絞まってて応えられない。
パアンと音が聞こえた後、呼吸が楽になった。
身体を支える蔦がなくなり、身体が落下する。
頭上から大量の青い液体が落ちてくるのが見えた。
外は赤いのに、果汁は青いのか。
改めて感じた生理的な気持ち悪さとともに、意識を手放した。
「う・・・」
目覚めると、見慣れた天上が視界に入った。
任務で行った植物園で、植物型の悪魔にやられたのは覚えている。
そうなると気絶したまま運ばれたのか。
燐は起き上がるとチッと舌打ちした。時計をみれば午後5時を示していた。
任務は確か午前10時からだった。自分は随分と長いこと起きなかったらしい。
これからでも塾の時間には間に合いそうだ。
幸い起き上がった身体に痛みはなかった。
Tシャツとジャージといういつものパジャマ姿から着替えようとしたが、そこで気づく。
そういえば、任務の時は学生服ではなかったか。
任務で汚れた服のまま部屋に入れなかった奴と考えるとわかる、雪男が着替えさせたのだろう。
部屋を見回しても学生服はなかった。机の上にはケータイと塾の鍵があったので、
格好に問題はあるが別にこのまま塾に行ってもいいだろう。
ポケットにケータイを詰め込んで、塾へと向かう扉をあけた。
「おいーす」
いつものメンバーが椅子に座っているが、様子がおかしい。
皆一様に燐を見つめている。しかも、表情には驚愕といった感情が伺えた。
「なんだよ?」
「お前…奥村か?」
勝呂がおそるおそるといった様子で問いかける。意味がわからない。
自分はどこから見たって奥村燐だろうに。
「なんだよ、とうとうボケたのか?」
「アンタ、鏡見てみなさいよ!」
神木がポケットから取り出した鏡を燐に向けた。
「え…」
目に留まったのは青。瞳の色ではない、髪だ。
鏡の中の自分の髪が、真っ青に染まっている。
「な、なんじゃこりゃあああああ!!?」
燐の絶叫が教室内にこだました。
「コレは今日任務で行った悪魔から受けた魔障ですね。悪魔を殺した時に出たあの青い液体を被ったからでしょう」
雪男は燐の髪をひと房掴み、冷静にいった。
「一応兄さんが気絶した後に液体を身体から流しておいたんだけど、その時にはまだ髪は黒かったし、
時間差で症状が出たんだろうね」
クラスメイトにまじまじと頭部を見られるのは初めてだ。
燐は円の中心にいることに居心地の悪さを感じていた。
「でも、本当に綺麗に染まったねぇ」
しえみが燐の髪を見て言うが、それにクラスメイトも頷いた。
つむじの辺りは深い藍色になっており、毛先に向かうほどグラデーションかかった青色に変化していた。
魔障とはいえこうも見事に染まった髪は見たことがない。
美容師が見れば、どうやって染めたのかと問い詰めてきそうなほど見事な色だ。
「こうしてみるとほんま外人さんみたいやなぁ奥村君、目の色も青やし、髪も青色になったもんなぁ」
「そういえば、奥村君達って黒髪に青い瞳なんですねぇ。思えば珍しい組み合わせですね」
「でも、こうしてみると先生と兄弟に見えへんなぁ」
口々に感想を言う周囲は気楽なものだ。
朴が襲われたときに受けた屍からの魔障よりは軽症だが、いきなり起きたら髪の色が
変わってたとか気分のいいものではない。
もういいだろうかと燐が席を立とうとした時、タイミングよく雪男が手を叩いて注目を誘った。
「はい、そろそろ授業始めますよ」
「おい雪男、俺のことはほったらかしなのかよ」
「兄さんの健康には今のところ問題なさそうだし、とりあえずその髪は後回しだね」
雪男にバッサリと斬られて、少々へこんだ。
燐は悪魔だ。だから魔障に関しては心配することはない、それを雪男は知っている。
しかし、今日は悪魔に襲われて気絶するし、髪は青くなるしで散々だ。
不貞腐れたようにテキストを開くと、ふいに視線を感じた。
目を向ければ、雪男はすぐに視線を外して黒板に文字を書いていく。
なんだろう、すごく不機嫌そうだ。
他の者には察知できないだろうが、雪男からそんなオーラが感じられた。
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