青祓のネタ庫
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≪ 聖騎士の夢3 | | HOME | | 聖騎士の夢 ≫ |
夢を見た。まだ、燐と雪男が来る前の夢。
逃げる悪魔を必死で追いかけている。
手には銃、首には十字架もあるし、殺そうと思えばこの距離からでも殺せる。
だが、なぜだかそんな気分ではなかった。
追いついてから
捕まえて
自分の手で殺さないと。
殺した後はタバコを吸おう。
酷使した体に染みていく、あの感覚がたまらない。
目の前の悪魔が倒れた、こけたのか。間抜けな奴だ。
そのまま押さえつけて、胸に銃を押し当てる。撃ち抜いた。
一発
二発
悪魔は動かなくなっていった。
虫の息だ。
やった。俺はまた殺した。
胸ポケットに入れていたタバコを取り出す。
火があったか。
思った所で、目の前に火が灯った。
青い炎だ。
そして気づいた。自分が押さえつけている悪魔。
違う、悪魔じゃない。
こどもだ。まだ小さなこども。
そのこどもから鬼火のように青い炎が灯っている。
嘘だろう。手からタバコが落ちていく。
子供の顔が見えた。
「り、ん・・・」
血まみれで、口から血を流しながら必死に何かを言っていた。
体がどんどん冷たくなっていく。
燐、燐
必死で小さな体に呼びかけた。
抱きかかえようとして気づいた。銃を握っていた。
燐はそれを見て、動かない体で必死に俺から逃げようとする。
這っていくたびに、地面に紅い血がついた。
燐、動くな。
動かないでくれ。
手当てをしようとするのに、こどもは俺に怯えて動く、胸から血が溢れていく。
死ぬな、燐、死ぬな!
滑稽だ。自分で傷つけておきながら。
燐がうつろな目でこちらをみた。
ころさないで
たすけて
とうさん
目の前が青い炎で包まれた。
燐の体が青い炎のむこうに消えていく。
とうさん
俺のことなのか
それとも
しつこいチャイムの音に藤本は目を覚ました。
約束していたメフィストだろうか。それにしても煩い。
ようやく寝れたというのに、と起きて時計を見ればメフィストとの約束の時間はとうに過ぎていた。
完全に寝過ごした。
癖で胸ポケットを探ってしまう。十数年続けた習慣はなかなか抜けないらしい。
タバコはやめたというのに。
代わりに、はぁ、とため息をついた。
夢を見た。最低最悪の夢だ。
ずっと悪魔を殺すことだけが生きがいだった。
戦っては殺し、戦っては殺し。
タバコの消費数も半端ではなかった。
嗜好品というよりストレス解消の為に吸っていた。
タバコをやめたのには理由があった、こどもの為だ。
チャイムはまだ鳴っている。
「今行くよ」
はずしていた眼鏡をかけて、立ち上がる。久しぶりに寝れた。
体も軽いし、頭もすっきりしている。だが気分は最悪だ。
玄関に向かう途中横目で子供部屋を見れば、雪男が起きてこちらを見ていた。
燐はまだ寝ているのだろう。あいつはいつも睡眠時間が長い。
疲れも取れたことだし、これが済めば遊んでやろう。
あの夢を見たせいで、寝ている燐を見るのが怖かったのかもしれない。
意図的に視線を玄関に向けた。
ここは現実だ。夢じゃない。
チャイムの音が煩い。
約束の時間は過ぎていたが、アイツは約束を守らない男だ。
丁度今ここについたのだろう。
サンダルを履いて、扉を開けた。
予想していた男ではなかった。
「ちわー、郵便です。判子をお願いします」
「サインでもいいか?」
「はい」
「どうも、お疲れさん」
手紙を受け取って、子供部屋に行く。
メフィストがくるのはもう少し後だろうか。
「燐、雪男起きてるか?」
「とうさん」
ベットを見ると、雪男しかいなかった。
「にいさんどこにいるの?」
ベットの柵はあがっている。なぜいない。
「・・・燐?」
藤本の顔から血の気が引いていく。手から、手紙がぽとりと落ちていった。
「燐、燐どこだ!!?」
叫びながら、次々とドアを開けた。
台所、トイレ、寝室、風呂場・・・どこにも燐の姿はない。
隠れているのかと思い、押入れや納戸も見たがダメだった。
燐は修道院から姿を消した。
記憶を辿ると、子供部屋から出る時にベットの柵を上げていかなかったように思う。
自分の失態だ。いくら眠かったからとはいえこんなミスをするとは。
だが、燐が自分で玄関から出たとは考えにくい。なぜならドアノブに背が届かないからだ。
仮に椅子などを用いて届いたとしてもに、玄関の扉は子供一人の力では重いし開けにくい。
重い扉を開けてまで出るとはあまり考えられない。
恐らく自分の姿を探して廊下に出た、ここまでは燐が起こした行動だろう。
しかし、玄関から外へはどう考えても第三者が関わっているとしか思えない。
「歴とした誘拐だぞ・・・」
修道院の者達もミサを早々に切り上げ、燐の捜索にあたっている。
燐は魔神の落胤だ。このことを知る人物は数少ないが、こんなことが騎士団にでも漏れたら
処刑だなと他人事のように藤本は思った。
いや、自分なんかのことより、燐を、あの双子を守ることの方が何十倍も大切だ。
外に出て、もし悪魔にでも見つけられてしまったら。
なくしてなるものか。
俺の息子だ。
冷静さを失っていた自分を叱咤するように藤本は両手で顔を叩いた。
夢を思い出す。
自分の手で燐を殺す夢。
現実には決してしない。
燐を誘拐する人物といっても限りがある。
一番可能性が高いのは悪魔だろうか。二番手は人間、カテゴリは変態か誘拐犯。
考えて、あえて変態の部分は考えないようにした。
誰だって自分の子供が変態の手に堕ちたと想像したくはない。
現に想像の域であるのに藤本はその犯人を対魔用のバズーカーで打ち抜くところまでいったのか
人差し指か小刻みに動いていた。何度も引き金を引いている。
悪魔の場合はどうか。
修道院には十字架がある。十字架の下は神の守りに守られ、加護を受けるのだ。
しかし修道院に来る人物は限られるし、神父たちの居住区まで来る悪魔となるとよほどのこと。
藤本は携帯電話を取り出し、ある人物に連絡を取った。
今日修道院で会う約束もしていた男だ。
「もしもし、メフィストか」
怪しげな男の声が、応えた。
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