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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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3Dカスタム少年

人間、腹がすこうとも守らなければならない一線というものがある。
腹が減ったからと言って万引きしたり、人のものを取るのはいけないことだ。
腹が減ったからと言って、決して相手に遜ってはいけない。
武士は喰わねど高楊枝。と、いう人もいる。
しかし、腹が減っては戦はできないのである。

教室内は静まり返っていた。
教室には、勝呂達と燐しかいない。女性陣がまだ来ていないことが救いかもしれない。
異常事態だ。しかし、当の本人は顔面を硬直させて至って普通ですという顔をしている。
一番最初に声をかけたヤツは勇者だ。誰か突っ込んでくれ。
教室の空気を読んだのか、勝呂が勇気ある一歩を踏み出した。
「奥村ァ!!!」
「なんだ」
「そのふざけた格好はどうした!?今はハロウィンちゃうねんぞ!」
燐の姿は、いつもの学生服ではない。
頭には大きな白いリボン、股下すぐで切れたハーフパンツ。上は黄色と黒の線が入ったセーラー服。
頭にはヘッドフォン。
(ヴォー●ロイド、しかもあれって双子の…)
インターネットが趣味の子猫丸は教室内で唯一、燐の異様なコスプレの元ネタを知っていた。
知る人ぞ知る。というかチョイスがマニアック。ある意味女装ともいえる。
「俺は至って普通です。制服じゃないだけです」
「学校来るんなら制服着ろや!」
「制服の代わりに着てるんです」
「奥村先生の方はこのことしっとるんか!?卒倒するぞ!!」
「お、俺だって、好きでこんな格好してるわけじゃねぇ!!!!」
燐が椅子から立ち上がると、ぐうーと言う腹の音が教室に響いた。
それにつられるように、燐はその場にへたり込んでしまう。
「どうしたんですか鏡●り…おっと、奥村君!」
「子猫さんあれなんのコスプレかしっとるんですか?」
「奥村、大丈夫か?」
勝呂達が駆け寄ると、燐は腹を抑えていた。
「腹、減った…でも、これで飯が食えるんなら俺は耐える」
「奥村、なにがあったんや」
勝呂達もただ事ではないと察したらしい。
志摩は自分の昼飯用に持ってきたコンビニおにぎりを燐に渡す。
「コレ食べ、そんなんじゃ話もできへんやろ?」
「うう、すまん、助かる…」
燐はおにぎりを受け取るとものすごい勢いで齧りついた。
頬袋の食料を溜めるハムスターのようだ。
おにぎりを食べて落ち着いた燐は、自分がこうなった経緯を話し始めた。

 

「ではコレ着て塾に行ってください」
メフィストは燐の目の前にヴォー●ロイド、鏡●リンの衣装を投げた。
ハーフパンツは股下すぐで切れていて、太腿丸見えだ。
しかも、このセーラー服、どう考えても腹がチラリとしてしまう。
なんだこの服。
「着れるか馬鹿!!!」
「おや、ハーフパンツの丈が気に入りませんでした?
確かにコレ男の子が着た場合、普通のトランクスじゃ見えちゃいますしねぇ」
「ちょ、ちょっと待てよ!これ女用なのか?」
「そうとも言う」
「アホかお前!!!」
燐は顔を真っ青にして訴えた。こんな格好をして塾に行けと?しかも女装?
しえみに見られたら、教室の窓から飛び降りるくらいの自信はある。
「じゃ、今月のお小遣いはなしということで☆」
「嘘だろ!証券乱用だぞそれ」
「それをいうなら職権乱用ですね」
「俺のこと玩具かなにかと思ってんだろ!」
「よくわかってるじゃないですか」
と、やり取りしたのが一昨日のこと。毎月ギリギリの生活を送っているため当然貯蓄などない。
メフィストと口論した夜から、ご飯が食べられなくなった。
雪男に頼ろうと思ったのに、丁度その夜から任務でいないというメモが机に残された。
メフィストの策略はぬかりない。
燐は頼る相手もなく、水を飲んで飢えをしのいだ。
だが、15歳の食べ盛りがそんな状況に耐えられるはずはない。
空腹は思考能力を奪っていく。糖が脳に廻らなければ判断能力も低下する。

空腹のまま朝を迎えた燐の頭にはコスプレをするか、飢えるかの選択肢しかなかった。

「コスプレしたら、お小遣い一万円にしてあげますよ☆」

このひと言で、燐は身を売ることに決めた。


「笑うがいいさ、俺は一杯の飯欲しさに悪魔に自分の身体を売ったんだ…」
目じりに涙を浮かべる燐、勝呂達は何もいえなかった。
心底燐に同情していたからだ。

(理事長、変人やと思っとったけど、外道でもあったんやな)

「奥村、まずは奥村先生に電話せぇ。話はそれからや」
「ご飯、今日くらいおごったるよ奥村君」
「奥村君、服着替えて食堂いきましょ」
クラスメイトの優しさが身にしみた。
燐は勝呂に手を引いてもらい、立った。持つべきものは人間が出来たクラスメイトだ。

「ありがとう、お前ら!」

その時、教室のドアが開いた。
しえみと、神木が教室の入り口にいる、燐を凝視していた。
神木は、燐の姿を見て言った。

「キモッ」

燐はその日、泣きながら教室の窓から飛び降りた。
女性陣の引いた視線が忘れられない。燐はメフィストに一生消えないトラウマを植えつけられた。


因みにメフィストはことの次第を知った雪男に粛清されたという。

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