青祓のネタ庫
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クロが示したのは、悪魔が住む森の深淵だ。
悪魔と言っても森の入り口付近は下級しかいないのでまだいい。
問題は奥だ。森が深くなるに連れて中級、上級と悪魔の階級が違ってくる。
上級とかち合うのはできれば避けたい。
こちらのメンバーは雪男、メフィスト、シュラの3人だ。
シュラならば上級にも対処ができるが、メフィストを守りながら戦うとなると不利だ。
人型の時ならどうとでもなるが、今のメフィストは犬なのだから。
「まったく、足手まといがいると苦労する」
「協力しているのにその言い草は心外です」
「すみません。でもフェレス卿がいなければ成立しない作戦なんです」
「ふん、強引に連れてきておきながらよく言いますね先生。奥村君のこととなると貴方は思い切った行動取りすぎです」
「だって家族の事ですから」
雪男は悪びれた様子もなく言った。普段ならあまり強引なことは好まないが、兄の命がかかっているのだ。燐が消えた後、嘘みたいに学園の悪魔も去っていった。
シュラの聞いた言葉を信じれば、それらはすべて燐が引き受けている。
学園が平穏を保っていられるのも、燐が悪魔を殺しているからだ。
孤独な世界で怪我をして、死にそうになりながら。
燐を放って、その平和を享受することもできるだろう。
だが、そんなこと到底できなかった。
シュラを先頭に置いて、その傍に道案内のクロ。クロの背後に犬メフィストを抱えた雪男が着くというパーティだ。森の性質上、中央に行くに連れて悪魔の階級が上がってくる。そのため一番実力のあるシュラを先頭に着かせた。
本来なら殿にもう一人欲しいところだが、そうも言ってられない。
この作戦は完全に正十字騎士団の方針とは異なるため、この森に来たことだって極秘だ。助けはこない。それを踏まえたうえで戦わなければならない。クロが尻尾を立てて反応を示した。近くに悪魔の気配がするらしい。
「隠れろ、茂みのなかに入って頭を低く」
シュラの命令どおり、すぐ茂みに入る。頭上から悪魔の雄たけびが聞こえた。しばらくすると、その声も遠くに離れて言った。
茂みから出て、頭上を見上げた。星が出始めている。本来なら悪魔の活動時間である夜に森に入るべきではないが、仕方が無い。魔の気配が濃くなっている。
「やれやれ、たどり着くまで大変だ。汗で胸が蒸れる」
「・・・たどり着いてからも大変そうですけどね」
シュラの言いようはあえて無視する。
そんな中、雪男の腕に抱えられたメフィストが、ぽつりと呟いた。
「まずいです。急ぎましょう」
「何かあったんですか?」
普段のおちゃらけた様子とは違い、メフィストは焦っているようだ。
「先ほどの悪魔は森の伝令役です。森に伝えていました。『門が反応している。近づくな』」
「!?」
門とは、アマイモンが使った虚無界に行くための手段のことだろう。
虚無界と物質界の境目が曖昧な場所。
この森の中にある虚無界へのひずみ、もしくは穴は、悪魔達には門と呼ばれるのか。
「でも、『門』に近づくなっていうのはどういうことなんです?」
「簡単ですよ、『門』から出てくる虚無界の悪魔なんて上級以上がほとんどです。大概上級は暇つぶしに同族殺しもしますから、かちあって死にたくなければいくなってことですよ」
「・・・チャンスですね」
雪男は前を見据えた。門が反応しているならこちらからこじ開けることも可能かもしれない。
しかも、厄介だった森の上級悪魔は門から離れてくれる。
「お前も無鉄砲だよなぁ雪男、燐そっくりだ」
「兄さんはもっと過激ですよ」
「え、引き返さないんですか!行くんですか!?」
嫌がるメフィストを抱えて、走る。
頭上から、遠くの空から悪魔達の声が聞こえた。
が、皆雪男達が向かっている方向とは逆方向に行っているようだ。
門は近い。
走るスピードを上げる。
程なくしてクロが声を上げた。そこでいったん止まる。
茂みの向こうには、木や森が避けているかのようにぽっかりと空いた空き地があった。腰を低くして様子を伺う。悪魔の気配はなかった。
円状に空いた空き地の中央には、ひずみ、というべき裂け目があった。
言うならば、空中が破れている。裂け目からは紫色の空間が覗いていた。
異様としか言いようがない。
「あそこが『門』だろうな。俺が周囲を警戒してるからお前らは行け」
「はい、お願いしますシュラさん」
辺りの様子を伺いながら茂みから出る。
ひずみの前に、メフィストを置いた。後ろに雪男が着く。
シュラはいつ悪魔が出てもいいように剣を構えている。
「ここまで時空が歪んでいれば、恐らく術を使うだけでいけますね」
「お願いしますフェレス卿」
雪男も銃を構える。
ここが正念場だ。
「上級悪魔が出現しても私は責任取りませんよ」
「構いません、責任を持って僕が殺してみせます」
「おい一人で気張るなよ雪男、私もやってやるさ。獅朗もきっとアイツが帰ってくることを望んでるだろうからな」
「さぁ、何がでるかは運次第」
メフィストは術式を展開した。
この前使ったのは杯と聖水、血を使った。今回は既に門を開く原型があるので術式のみの展開だ。
ひずみの中心に魔方陣が展開される。
幾重にも重なった円が形を作っていく。
その形は、正に『門』だった。
サタンが物質界に出現するときに使う、ゲヘナゲートの簡易版といったところだろうか。
門の扉が出現したところで。
ゴンッ
閉ざされた扉の中から音がした。
まるで向こうからこじ開けようとするかのような、音。
三人は身構えた。
ゴンッ
2回目の音で、門が少し開いた。
一気に魔の気配が強くなる。
ゴンッ
門が、開いた。
瘴気が中からあふれ出してくる。
門の向こうから、何かが来る気配がした。
雪男はその何かに銃を構える。
上級悪魔なら、世に出る前に殺さなければならない。
本来なら、虚無界への道を開くなどあってはならないことだ。
今回の作戦は、物質界へ悪魔を招くことと同義。
ここから出た悪魔が、他の人間を手にかければそれは雪男の責任といえる。
雪男の理性は、今回の作戦を否定する。
だが、本能は、それをやれと訴えた。
危険を冒してでも、取り返したいものがあった。
(兄さん、僕と一緒に帰ろう)
雪男は引き金を引いた。
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