青祓のネタ庫
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目を覚ませば、満天の星空が天井に広がっていた。
肌寒い。そう思いながら目を覚ます。
いや、超寒い。俺は布団を蹴り飛ばして寝てしまったのだろうか。
燐は、むくりと起き上がった。
そして、布団の在り処を探すために床の方を見た。
そこにはまた星空が広がっている。
いや、上下ともに星空?おかしいな。
俺は夢でも見ているのだろうか。
よくよく見てみれば、下に広がる星は家々から漏れる光のようだった。
すごい、こんなに地面が遠く見える。
「お目覚めのようですね?」
「うわわ!」
地面から、物凄く離れたところにいることに気づいた燐は、思わず声がした方に縋ってしまった。
こんな場所から落ちたら、いくら悪魔でも死んでしまう。
本能的に感じた恐怖に身がすくむ。震えたことがわかったのか。
燐の腰に腕が廻る感触が。ぎゅうっと抱き寄せられる。
「意外と積極的ですね奥村君」
声の主が誰か理解した燐は、べりっとその腕を引き剥がした。
メフィストは、残念だ。と言葉とは裏腹に感情の察せられない声で燐に言う。
燐は、メフィスと距離を取るために後ずさった。
二人は、メフィストの出したピンクのソファにいるようだ。
端と端。限界まで離れても、ソファの長さ以上に離れることができない。
下には、星空と間違うほどに離れた地上の風景。
燐は、ソファの背をしっかりと持つ。まだ、死にたくは無い。
メフィストの気まぐれでソファを動かされれば振り落とされかねない。
眠気などすっかりと消えてしまった。
メフィストは、指を鳴らして紅茶のセットを呼び出した。
紅茶をカップに注ぎ、そのまま燐に差し出す。
カップはふよふよと中身を零さないように、空中を漂っている。
「飲むといいですよ、体が温まります」
「いらねーよ!お前の出すものは信用できん!」
メフィストは、燐のことを驚愕のまなざしで見つめる。
「貴方、警戒心なんてあったんですか。知りませんでした」
「馬鹿にすんな。俺だってそれくらい・・・」
「はい、あーんして」
思わず開いた燐の口に、紅茶が投入される。
あ、美味しい。そう思ったら喉が自然と紅茶を飲み込んでいた。
燐は、口元を押さえて蹲る。騙された。
でも、実に美味しかった。
「ちょっとは体が温まったでしょう」
「・・・まぁな」
燐は、ソファに座りなおす。上も下も、闇と星で埋め尽くされている。
隣には、怪しげな男が一人。
確か、自分は寮のベッドで寝ていたはずだ。
朝から雪男もシュラも、勿論塾の友達の姿も見えなくて、
携帯で連絡しても不在ばかり。燐はそれが寂しかった。
いつもなら、誰かしら連絡が取れるのに。
しかし、それも仕方がないか。とも思う。
勝呂達にとっては家族の命日で。祓魔師にとっては屈辱の出来事。
不貞腐れた燐は、寮のベッドで寝て。気がつけばこの空の上にいる。
「なんで俺はここにいるんだよ」
「いえね、貴方を監禁するという話があったんですよ」
「は?」
メフィストは、驚く燐を放置して淡々と話を進めた。
「本当は、クリスマスにしようかという話もあったんですが。
ヴァチカンも忙しかったのでお流れになったのです。でも、ここ数日で流れが変わりまして。
青い夜に関わるものを排除しようという形になったんですよ。
本日27日に奥村燐を監禁せよという話になりました。だから貴方はここにいます」
「俺、監禁されてんの?」
「ええ、空中の檻の中にね。ここから落ちたらいくら貴方でも死ぬでしょう」
「それ、皆は・・・」
「多分、今頃下は大騒ぎなんじゃないですか?貴方が消え、監禁するという話だけが歩き出している」
雪男や、皆にとっては寝耳に水だろう。寮にいるはずの自分は消え、どこにいるかもわからない。
携帯も、寮に置いたままだ。
燐は、眉間に皺を寄せた雪男の顔を思い出す。心配させているかもしれない。
戻らないと。燐は、身を起こした。
上空何百メートルだろう。ここから飛び降りたら。想像して寒気がした。
メフィストは下を見る燐が気に入らなかったのか、指を鳴らした。
燐の視界が煙に包まれる。気がつけば、メフィストの膝の上に跨っていた。
メフィストと視線が絡む。メフィストは、燐のネクタイを引っ張って顔を近づける。
「逃げるのですか」
「戻るだけだ」
燐はメフィストから距離を取ろうとする。そんな燐の態度がメフィストは気に入らない。
メフィストは燐の肩を後ろに押した。このままだと燐は背中から空中に真っ逆さまだ。
夜の風が冷たい。
「命令が聞けないんですか」
「なんか、お前の言うことは信用できねーんだよな」
燐は、メフィストの話の不自然さに気づいている。いきなりそういう話になることも
燐の身の上を考えればないわけでもない。
だが、今回の話は実に内容が曖昧だ。
監禁する話になれば、それこそ京都の時みたく
強力な使い魔に燐を監禁させればいいのに、メフィストはそうしない。
燐の体はいまやネクタイ一本で支えられている。メフィストがネクタイを放せば。
「地面に真っ赤な花が咲きますね」
メフィストは言葉を続ける。
「選んでください」
落ちるか、もしくは監禁されるか。
実に理不尽な二択だ。
燐は答える。
「帰るに決まってるだろ」
メフィストは笑いながらネクタイを手放した。
燐は真っ逆さまに落ちていった。
ぼふん、という音がして、燐は布団の上に落ちた。
柔らかい。この感触は地面に激突した感触ではない。
混乱していると、頭上から声が聞こえてきた。
「兄さん!?どこ行ってたんだよ!」
「え?あれ?俺・・・空から落ちたんだけど」
「寝ぼけてるの?ほら、行こう」
「え?どこに」
「僕らの誕生日のパーティだよ。塾の皆が開いてくれるって話だったでしょ。
ほら、服着替えて!制服でいいから」
燐は雪男にされるがままに着替えされられ、祓魔塾の教室に入った。
そこには兄弟を出迎える塾のみんなが。そしてメフィストがいた。
「誕生日おめでとう!!」
口々に祝われて、燐はほっと安心した。
メフィストも燐のことなど我関せずといった態度だ。
あれは夢だったのだろう。あの空は寒かった。
こんなにあたたかいところに入れる自分は幸せだ。
ケーキを食べて、皆で笑いあう。
燐の背後から、声が聞こえてきた。
「あれだけ引っ張ってもほどけないなんて、ネクタイ結ぶのお上手ですね」
メフィストは燐のネクタイにそっとキスを贈る。
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