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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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転校生を紹介する。と教師が教卓の上から言った。
周囲の生徒が少しだけざわつく。誰だろう。女の子かな。
クラスメイトは、地区が変わらないせいで小学校からのスライドとしかいえない面子しかいない。
中学でも、子猫丸や、志摩とも相変わらず同じクラスになった。
勝呂は、転校生とは珍しいな、と素直に思う。
京都は、どちらかといえば閉鎖的な都市だ。
歴史がある分、隣人とのつながりが深い。
こども同士の繋がりが家同士の繋がりの延長であることが多い。
勝呂、志摩、子猫丸の三人も例に漏れずそのパターンだ。
小学校からの同期は似たり寄ったりだろう。ここは、そういう土地柄だ。
だからこそ、勝呂の周囲では「祟り寺の子」という不名誉な呼び方がまだ根強く残っている。
そういうクラスの中に、転校生。勝呂は純粋にその転校生に興味が沸いた。
「外から来た人間」というのに憧れていたというのも理由のひとつかもしれない。

「坊、坊、女の子やったらどうしよ。俺恋に落ちてまうわ」
「志摩さん、昨日は3組の吉永さんと恋に落ちたんじゃなかったんですか」
「今日初めての恋かもしれん」
「毎日恋に落ちとるんか。せわしないやっちゃな」

相変わらず色ボケしている幼なじみは放っておいて、視線を前に向ける。
ドアは、少しだけ間をおいて開かれる。
黒の学ランが隙間から見えた。
それだけで「男かいなー」と志摩がつまらなさそうに言う。
少年は普通の足取りで教卓の上に立った。クラスのざわつきが止んだ。
赤い布でつつまれた竹刀袋だろうか。
それを肩から下げている姿は一風変わっていた。
剣道部にでも入るのだろうか。

それよりも一同が驚いたのは、少年の目が青かったことだ。
よく見れば、中心の瞳孔だけ鮮やかな赤色をしている。
ハーフ?という声がどこかから聞こえた。
ハーフにせよクォーターにせよ、偉く目立つ風貌の奴だ。
少年は、黒板に名前を書いた。
クラスのざわつきなど、対して気にしていないような様子だった。
先生は自己紹介を、と少年に促した。

「奥村燐、東京からきました。よろしく」

あー、東京モンか。と何故か納得したような声が挙がる。
興味を持つ声から、すかしやがってという声まで、クラスの反応は様々だ。
勝呂は、東京からはるばるなんで京都まで?という疑問が浮かぶ。
まぁなんにしても、関わることはないだろうと思っていた。
勝呂は奥村燐に関して、初対面で気に入らない点が一つあった。
別にそれは目が青いとか竹刀袋が目立っているとかいう些細なことではない。

目が、気に入らなかった。

他者を入り込ませないような、
奥村燐の瞳の奥に一瞬だけ感じた、薄暗い影。
理由はわからないが、それが気に入らなかった。

「男の子なのは残念やけど、美人は美人なんかな」
「志摩さん・・・節操って言葉知ってます?」

志摩が言った非常に残念な言葉に、呆れてものが言えなかった。
それが、奥村燐との最初の出会いだった。

後日、噂で聞いた話。転校生は、さっそくだがその目立つ風貌と生意気な態度で
上級生から呼び出されたらしい。

しかも、上級生全員をその場で伸して、病院送りにするという荒事付きだ。
奥村燐は、謎の転校生の他に不良だ悪魔とだいう噂が立つまで、時間はかからなかった。
東京から転校してきたのは、その素行に問題があったのではないか。
噂は独りでに歩き出し、最初は物珍しさから話しかけていたクラスメイトも
徐々に奥村燐のことを遠巻きにみるようになった。
風貌は不良だが、中身は優等生の勝呂はその噂を聞いて、
やはりいけ好かない奴だという印象を強める。
なにより、授業中寝るわ、サボるはを繰り返す奥村燐を真面目な勝呂は許せなかった。
奥村燐に対する勝呂の第一印象は、そんな具合に「最悪」からスタートしたのだった。

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