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CAPCOON7

青祓のネタ庫

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サンプル 如何にして彼を殺すか

*WEB用に改行しておりますが、実際は詰めております。


飲食店の扉を出てから、中にいる店主に声をかけた。

「ごちそうさまでした、また来ます」
「おう、またいつでも来いよ!」

そう言って、扉を閉める。ここの店はいつもおいしいご飯を作ってくれる。
表向きは居酒屋、という形を取っているが、
その実好まれているのはメニューに組み込まれている家庭料理だった。
高級料理店にはない温かい味は、疲れた生活を送るサラリーマンの癒しだ。今日も美味しかった。
時間を確認すれば、夜の九時だった。
社会人にとっては、まだまだ早い時間帯だ。
しかし、今の町は普段とは違ってしんと静まり返っている。
最近ニュースを騒がせている物騒な事件が多いからか外食する者も少ないようだ。
寂しくなった町を見て、早く事件が解決すればいいなと思う。
さて、後は帰って風呂に入って寝るだけだ。

ご飯の支度をしなくていいのは楽だ。働いているとどうしても自分で料理をするのは難しくなってしまう。
かといって外食が続けば金銭的な問題も出てくる。
今行った居酒屋は、値段も手頃でサラリーマンの間で噂になる密かな人気店だった。
値段よし、味よし、あとは席取りにさえ手こずらなければ通いつめたい所である。
残業時間にもよるが、お腹が空いているのに店に入れない時ほど悔しい時はない。
店主も初老、とまではいかないが五十代後半の気のいい親父だ。
相談ごとを若いねぇと豪快に笑ってくれるところが気に入っている。
夜道を上機嫌で歩いていると、一人の男とすれ違った。
男は全身真っ黒な服で包まれており、一般人とはまるで雰囲気が違う。
その様子に、ぴんとくるものがあった。

あ、この人祓魔師じゃないかな。

正十字学園町には、祓魔師が多く住んでいる。
この男もきっとそうだろう。祓魔師の任務は過酷だと聞いている。
自分と同じく疲れているのだろうな。
まぁ普通のサラリーマンと命がけで戦う職場の人間を同列に考えてはいけないのだろうけれど。
男の顔が、街頭に照らされた。

「あれ・・・?奥村、くん?」

思わず声が出た。男が振り返った。視線が合う。慌てて取り繕った。

「人違いでした?あの、すみません!」
「いえ、貴方は・・・」

男の声を聞いて、間違いないと確信した。
学生時代にはお世話になった。懐かしい出会いに、笑いながら声をかけた。

「覚えていらっしゃらないかもしれないですけど、お兄さんにお世話になった醐醍院っていいます!
弟の奥村雪男・・・君ですよね?」

醐醍院は脳裏に浮かんだ懐かしい級友に思いを馳せた。
悪魔が見えると怯えていた自分に、悪魔が見えなくなる目薬をくれた優しい友達。
高校を卒業してからはめっきり会わなくなってしまった。
彼は祓魔師を目指していたので、高校卒業と同時に就職してしまったらしい。
大学に進学した醐醍院とは接点が薄く、それっきりになってしまった。
彼は今どうしているのだろう。醐醍院の友人や同僚でも奥村燐と接点がある者はいなかった。
もちろん、弟である雪男も同様に。

「懐かしいな、奥村君は元気ですか?」

あれ以来悪魔が見えることはなくなった。
燐のおかげだ。彼は自分が悪魔であることを隠さなかったので、最初は怯えて失礼なことをしてしまった。
でもとてもいい子なのだと気づけば、自然と友達になりたいと思った。
彼は第一印象で結構損をしていると思う。その癖は大人になった今は直っているだろうか。
醐醍院は他愛もない挨拶のつもりで先ほどの言葉を告げた。
タイミングがあえば、また会いたいと思っていたから。

「殺されました」

返ってきた言葉に、醐醍院は耳を疑った。何の話だろう。そう思った。
でも、雪男は醐醍院をひどく冷めた目で見つめていた。動揺する醐醍院に雪男は思い知らせるように言葉を放つ。

「兄は、殺されました。だから僕はこれから兄を殺したやつを同じ目に合わせてやろうと思うんです」

醐醍院が見た雪男の瞳は、青白い街灯のせいか刺さるように冷たい。
まるで、瞳の奥が青い炎で燃えているかのように思えた。

「どういうことですか」

醐醍院が呟いた言葉はそれだけだった。

***

頭は急所の一つだ。直接衝撃が来たせいで満足に動くこともできない。口には血の味が広がる。

「上司に向かって銃を向けるとはいい度胸だ」

雪男はここに来る前にメフィストにも銃を向けたがメフィストは悪魔である。
危機的状況を楽しむ余裕もあり、常識とはずれているところがあるのでお咎めはなかった。
アーサーは違う。彼は騎士團の狗とも呼ばれる存在だ。
騎士團の思想を幼い頃から植え付けられ、純粋培養とまで呼ばれている。
例外は許されない。雪男は揺れる意識の中、つぶやいた。

「兄さんを殺したのか」

それだけは確認したかった。本当にいないの。兄さんはもういないの。
死体を確認できなかった。呼吸が止まっているところを見なかった。
じゃあ、どこかで生きているんじゃないのか。死体がないってなんだよ。
さっきまで生きてたじゃないか。僕とじゃべっていたじゃないか。
これからをどうするかって。聖騎士になる夢がもうすぐ叶うんじゃないかって。
そう思ってたのに。それが奪われたことが信じられない。
アーサーは何の感情も篭もっていない言葉で雪男に告げた。

「そうだ俺が殺した」

この部屋に血の通った人間などいないのではないか。
雪男の心が冷たく冷える。ぐらぐらと燃えるような憎しみが沸き上がってくる。
殺された。たった一人の家族を殺された。兄さんを殺された。
雪男が感じた衝動は人間として至極当たり前の感情だった。

「アーサー=オーギュスト=エンジェル。僕はお前を許さない」

燃えるような瞳でアーサーを見つめても、倒れている雪男には彼を傷つけることもできない。
アーサーは無線で連絡を取ると、すぐに扉が開いて部下が部屋の中に入ってくる。
部下も流石に血塗れの部屋の様子に一瞬入るのを躊躇したようだ。
アーサーに睨まれて正気に戻ったのか、急いで雪男の腕を掴んで拘束し立たせる。
雪男は足がふらついて支えられながら部屋から連れ出された。握りしめた燐の祓魔師のコートは手放さなかった。

あの部屋を連れ出されてから、雪男は祓魔師の詰め所の一室に軟禁されていた。
窓もなく、扉にも格子がはまっている。外には見張りの声が聞こえてくるので、逃げ出すことは不可能だろう。
上司に武器を向けた処置としては温いほうだ。それも、雪男が人間だったからだろう。
この部屋に拘束されてから数時間。雪男は真実を知ることになる。

***

「久しぶりだな。あの祭りの時以来か」
かなり昔に任務でほんのわずかだが会ったことがある。
十一年に一度の祭りの際に街を訪れた祓魔師だ。あの祭りの後兄である燐はどこか様子がおかしかった時があった
。祭りの時に何かあったのか。聞いても教えてくれなかったので、今ではもう知ることもできない。
リュウはあの祭りのテーマになっている玉兎を祓った祓魔師の一族の末裔だ。
大昔から続く一族だからだろうか。雪男は首を傾げた。

「老けませんね貴方」
「そういうお前は相当年を食ったように見えるな」

リュウは雪男が高校生だった時と何ら変わらない容姿をしている。
この人半分くらい悪魔の血入ってるんじゃないだろうか。
そう思えるくらいリュウに変わりはなかった。いや、もしかしたら雪男が変わり過ぎたのかもしれない。

「まぁせっかく来たんだ。こき使ってやろう」
「・・・」
「冗談だ。おおよそのことは聞いている。俺は騎士團に全て従うような腹はない。
好きな時までいて、好きな時に帰れ。台湾支部を預かる身になったのでな。
無理だと感じたら日本にとんぼ帰りさせるくらいの権限はあるぞ」

あのシュラという女から話は聞いている。とリュウは言った。雪男は驚いた。
そういえばシュラとリュウもあの祭りで知り合っていた。
上一級祓魔師同士気が合うこともあったのかもしれない。
リュウはそう言うと、雪男を離れに案内した。他の場所とは違い、緑に囲まれた落ち着いた建物だ。
中をみれば、最低限の生活ができる施設もあった。
雪男は部屋に入ると、辺りを見回した。どうも日本にいる時のような雰囲気を感じる。
そう、まるで燐がいたあの寮の部屋のような。なぜだろう。

「ここはお前の兄がたまに来て使っていた部屋だ」
「兄がここに来ていたんですか!?」

寝耳に水だ。全く知らなかった。そもそもリュウと燐がそんな仲だったなんて、話にも上がったことなかった。
雪男が動揺していると、リュウは更に追い打ちをかけた。

「お前の兄との関係は・・・そうだな。秘密の関係だ」
「なんなんですかそれ!」

雪男が怒るとリュウは冗談だ。と茶化した。いや、どこからどこまでが冗談なんだ。
あんた兄さんの何なんだよ。どきどきばくばく心臓が早鐘を打っている。
兄のまさかの交友関係に度肝を抜かれた。

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